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4つの扉  作者: 小沢琉祢
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飯塚渡・桜9

なんで強引に引き寄せてしまったのだろうか。

引き寄せた体を優しく抱いた。

大丈夫。大丈夫。

何の根拠もない言葉だけれど。

「…出れた」

「そうだね」

「なあんだ…思ったよりあっけなかったなあ」

「そっか…」

「これからどうしようか?」

「うーん、とりあえずはリハビリってことで庭に出てみたらどうかなあ」

「そうだね」

「外に出るの4年ぶりだね」

「そんなに?うそー」

「本当だよ」

「…ところで、いつまで抱きしめてるつもり?」

「あ、ごめん」

体を離す。

桜は笑っていた。

若菜が鳴いている。

早く行こうよー

そう聞こえた。

「…行こっか」

「うん」

二人で階段を下りる。

若菜もするすると階段を下りていく。

庭へつながる窓を開けて外に出る。

後から、そろそろと桜がついてくる。

それを追い越して、若菜が走ってきた。

わーい外だー

はしゃいでいる。

桜は緊張している顔つきだった。

「おいでー」

気持ちいいよ!お母さん!

その声につられて桜も庭に出る。

わあっと小さな声で言うのが聞こえた。

花も何もない殺風景な庭だ。

でも彼女の小さな世界を壊す大切な場所だろう。

今度、どこか行きたいな。

数分後に桜がそう言った。

「どこかってどこがいいの?」

具体的にでなくても、たとえを挙げてもらいたくて聞いてみる。

「うーん…どこだろね。どっか遠くかなあ」

じゃあその日は私は別々で過ごすよ。

若菜が言う。

「若菜も来てよ」

猫って車酔いしやすいんだよ。汚いもの吐きだしちゃったら迷惑じゃない。

「そっかあ……じゃあ二人で行く?」

「うん、いいよ」

二人で指切りをする。

「若菜、必ず帰ってきてね」

なんとなく不安で、若菜に言った。

うん、分かった。

若菜はそう言って笑ったような気がした。

若菜とも指切りしたかったけど、指がないので駄目だった。

ぽんと若菜の手が置かれた。肉球がぷにっとしている。

約束。

そう言った。それでも帰ってこないような不安は消えなかった。


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