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α空間の狂ってない彼女  作者: 6月32日
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祝!入部


 この学校には、子ども相手にアクロバティックな不条理パフォーマンスを披露し、その精神に深刻なトラウマを残すことを主眼としているクラブが存在する。

 

 ボクは今、その部室にある仏壇の前で手を合わせている。

“シズカちゃん……”

 数珠を持つ手が震えてしまう。


「少年!」

「なんですかあ!」

 後ろを振り返るとアフロが不敵な笑いを浮かべて立っていた。

「シズカちゃんはもうしばらく入院だあ!」

 独り言を聞かれていたらしい。


 仏壇に見えていたのは、良く見ると部室に備えつけの黒い冷蔵庫だった。

 中には石みたいに固くなった雪印の古いチーズしかない。どうやら、ボクは別の物質になりかかっているカピカピの乳製品に祈りを捧げていたようだ。なんだか、すごい御利益がありそうな気がするのはボクだけだろうか?

 冷蔵庫内の暗いライトに照らされ、カビも生えずに即身成仏化した乾酪食品を眺めていると、こういうものを保存して御神体とか本尊として崇める宗教があっても良いような気がしてきた。

 

 ボクはその御神体に祈りながら、入院の日にあったことを思い出していた。

 シズカちゃんの傷自体は大したことなかったが、そのときのボクはなぜか“危ないときのAED(心臓の通電機器)!”とひらめいてしまった。そして、変な行動力を発揮して職員室に備え付けのそれを持ち出すと、最愛の人を蘇生しようと通電し、ピクピクどころかビックビックさせて、もう少しで“電気仕掛けのシズカちゃん”を作るところだった。


 さらに、その時駆けつけた救急隊の一人が異常な犬好きだったせいか、ドジョウに向かい「ご主人様が一大事だ。一緒に行こう!」とか適当なことを言って、救急車に無理矢理乗せて行ってしまった。ボクが知らないだけで、最近の救急車は人間を搬送するときに、ペットと思しき動物も拉致するようになったのだろうか?

 その真偽は定かでないが、あの犬にはもっと“ノー”と言えるしつけをしとくべきだったと反省している。


 ドジョウの行方はその後も知れない。

 

 それはともかく、ボクはその後、責任を感じてしずかちゃんの入院で開いた穴を埋めるべく、奇妙な演劇部に入部し、今ここにいる。

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