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α空間の狂ってない彼女  作者: 6月32日
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ボクは疑い、Dr.は予言する


「ジョセフィーヌの口の中は、暗くて熱かったよ。地獄が存在するなら、きっとあんなだろうねえ。それから絶望的に湿気が高い。あんなところに住むくらいなら、死んだ方がましだよ。まあ、実際死にそうだったわけだけど……。とにかく限界状況だよ。短期出張でも、あんなところはごめんだね」

 

 続いてDr.は、ジョセフィーヌの中で眠りながら見たビジョンについて語った。

「私はミミズになって、ヌルヌルとした泥の中を進んでいくんだ。なぜか視界は昔夢中になって遊んだPCー6001のゲーム画面でね、進めば進むほど編み目状の線が遠近法のように前方に集まっていくんだ。ヌルヌル、ヌルヌル、どこまでの続く粘膜で作られた迷路を泥を食いながら進むしかないんだよ。熱くてハードな労働だ。目標のないダンジョンはつらいね」

 ワニの体内でみるビジョンとして、それはとても似合っている感じがした。あまりにしみじみと語るので、聞き流すこともできなかった。


 Dr.の呪文ような話を聞きながら、ボクは病院に入ってからここにに辿り着くまでの道筋を思いだそうとしていた。

 ……無理だ。思い出せない。

 何回記憶を辿っても同じような暗い廊下の残像が交錯するだけで、位置関係が掴めない。ボクは自分の記憶に頼って行う脱出シュミレーションを断念した。

 

 最初は冗談ではまった蟻地獄から、本当に出られないことに気づいたとき、人はこんな気持ちになるのかもしれない。

 

 ドキドキが止まらない。

 

 出口が見つからない。

 

 ……閉塞感。 


 ……猜疑心。

 

 最後にDr.は大きなため息をつき、かすれた声で言った

「これからはもっと真面目に生きようと思うよ。生きて出られたらね……」

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