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α空間の狂ってない彼女  作者: 6月32日
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さよならDr.


 Dr.に対しては“おまえなんかワニの腹の中で消化されてしまえ”と少し思ったけど、ワニの口の中に頭を突っ込んで、罠にはまったゴキブリみたいにバタバタやってるのを見ると、さすがにかわいそうだった。

おしっこをちびりそうなくらい怖かったが、何もしないのもすごく後味が悪くなりそうな気がしたので、思いつく唯一の方法をやってみることにした。

 

 金網の扉から忍び込み、ワニの背後から

 アタァァァーッ!!タッタッタッタッタッタアア

 百裂拳をお見舞いした。

 これで口がカパッーて開いて、真面目な人のラジオ体操第一の時みたいに足がピーンて伸びきって固まるはず。

 ……だが、全くそんなことはなく、ワニは眠たげな目でこちらを見たままビクともせず、むしろ百列拳の刺激でDr.はさらに奥に入ってしまったようだった。

 

 さよならDr.……。

 

 何だかとどめを刺したようになったことで、冷たい目で見られていないか気になった。ボクなりに精一杯の笑みを浮かべて後ろを振り向くと、部長がどこかに電話していた。緊急の事態に、面白おかしく脚色をつけて話しているのが腹立たしかったが、どうやら演劇部のOBに助けを求めたらしい。やっていることは百列拳よりよっぽどまともだった。


 その後しばらくして、個人で運送屋をやっている上田さんというOBが、軽トラでやってきた。

 ヘッドバンキングしていたランドセルさんも含めて、全員でワニとDr.を運んだ。


 みんなで軍手をつけて、協力して一つの作業をするのは何だか楽しく思えたけど、ボクは疲れ過ぎて思考がまとまらず、みんなの手で宙に浮いているワニを見ながら“今、ボクたちが運んでいるのは、ワニ付きのDr.なのか、Dr.付きのワニなのか、……どっちなんだろう?”とずっと考えていた。


 外はもう暗かった。

 星空の下で何処に行くのかも分からず軽トラの荷台で揺られていると、“もう、このまま埋めてもいいんじゃないか”と思えてきた。

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