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α空間の狂ってない彼女  作者: 6月32日
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彼女の上でくるくる回るもの

浅井シズカ。


 彼女にずっと憧れていた。高校1年生の春。


 ボクは間違いなく恋をしていた。


 昼休み、弁当を一人で寂しく食べながら、右斜め前の席に座って文庫本を読んでいる彼女をじっと見つめていた。

「核爆弾と竹槍200万……」

 確かにそう聞こえた。


 “ふふふ……”と小さいが不敵な笑い声が続く。

 彼女の様子がオカシイことに、クラスの誰も気づいていない。


「ニューヨークを突破した軍隊が、この私の部屋までえええ!……この飛んで火に入る夏の虫がああああ!!」

 と、彼女は突然雄叫びを上げて机を持ち上げると、逆さにした机の上面を両手で支えながら、ぐるんぐるんと回し始めた。


「今日は、いつもより良く回っておりまーす!」

 そんなことを大声で叫んでいる間も、手を休めず、頭上に高々と持ち上げた机を回し続けている。

 

 ぐるんぐるんぐるんぐるんぐるん


 ボクは箸をもったまま、いきおい良く回る机を眺めていることしかできなかった。

 いつのまにか学校で飼われている犬の“ドジョウ”が傍らで、震えていた。


 悪夢ではない。


 ボクの憧れの彼女はまだ机を頭上から下ろさず、先ほどよりも高速で机を回し続けている。

 学校の備品である金属と木材で造られたソレが、あり得ないフォームで回転する姿を見続けているうちに、なんだか別のものに見え始めた。


“きっとアレは彼女の上に舞い降りた未確認ナントカではないのだろうか?”

 イヤイヤ……状況に流される傾向と妄想体質のブレンドもたいがいにしないと心の健康に障る。


 隣にいる犬“ドジョウ”の怯えきった目を見てボクは正気に戻った。

 

 その時だった。

“シズカちゃあああーん”

 突然、狂犬のような目をした男が教室に雪崩れこんできた。アフロヘアに極彩色の甚平という、目立ちすぎる出で立ちをしている。存在自体が避難勧告レベルだった。

 困った情報の過剰に対する安全装置が働いて、心のシャッターが下りそうになるのを必死にこらえた。何が起こっているのか見極めようと、瞳孔の開いた眼球を観察対象に向ける。

 

 明らかに状況は悪化していた。

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