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幻想と幻糸  作者: 春風
糸と何か
9/26

何にしましょうか

 市場(ケルピット)へ行った次の日の朝。

昨日のことがあったので一日、家に居ることになった。

兄と姉は別々に友人が居るらしく遊びに行き、母は畑へ。今は家に一人。

さて、おばあさんからの技術に対する返礼品をどうするか。


      (ぽん)   (ぽん)   (ぽん)   (ぽーん)


 幾ら考えてもこの体では何も作れないし出来ない。

と手から小さく出した水晶玉で遊んでいると、これで糸作れないかと思いつく。

早速、感覚任せになるがやってみよう。

家の居間に当たる部屋の中央に座布団を敷いて座る。

目の前にフワフワと宙に浮く水晶玉が一つ。


「水晶玉」というのは見かけの名前で正しくは魔力なのか何なのかわからない。

これは自分の思い一つで動いたり固くなったりする。

水晶玉の表面から点を引っ張り出すような感じに操作すると一箇所が山のような形になった。

それをさらに引っ張り、先端を細くして伸ばす。

太さが糸くらいになったら捻る。

切れないように気をつけながら均等に捻り、伸ばす。

そうしてできた第一作目は所々太かったり細すぎて切れそうだったりして使えそうもない感じの糸が出来上がった。

また元の水晶玉に戻す。まるで水飴のように球状に戻っていく。

 引き出しながら捻りつつ、細く形を整えながら、糸の形にして、棒に巻き付けて、元の水晶玉に戻す。

これをひたすら続ける。

左手側にはボーリングの玉くらいの大きさの水晶玉が浮いていて、両手で先程の工程を通している。

逆の右側には刺さっている棒に縒られた糸が巻かれていく。

"巻かれていく"とは言ったものの手は塞がっているので魔力操作で巻いている。

気を抜くとすぐ巻きが(ゆる)む。

というか糸が全部魔力なので”弛む”というより落ちる。

もう塊が床に落ちるが如くドサッと。


細く長くする練習をすること幾許の時間が経つ。


「座って何をやってるのかな」

後ろから声がしたので振り向くと姉と知らない女の子が一人。


「リース、座るだけならそこに椅子があるんだから椅子に座りなさいよ……ってこの棒は……何かしら」


 姉は糸を巻いた木の棒をつまみ取った。

案の定、巻いていた糸はまるごと落ちてしまった。

姉はその糸に一瞥もくれない。

何かを巻いていたなど"何もしていないただの棒"のようにみている。


 糸が見えていない、視界に入っていないのだろうか。それとも見えないのか。


 摘んだ木の棒は開いていた窓から放り投げられた。

巻かれた形のまま落ちた糸の輪は、上を踏まれた。そして隣の部屋へ歩いていった。

知らない女の子はきまずそうな半笑いでなんとも言えない顔をして、その後ろを追いかけて、扉が閉まった。


 僕はその一部始終を無言で動かずただただ見守った。




 踏まれてくしゃくしゃになった糸を手に取る。

 この糸は見えないもので、見るためにはまた別の形に変えないといけないのか?

それとも実際にあるものに魔力を馴染ませたりするのか。


 ……魔力を物質(もの)に変換できないのだろうか。


 ゲームとかでよくある魔法の類で土系魔法は地面に穴空けたり、石掘り起こしてぶつけてみたり、土を整形させたりと実際の地面から、地面に作用させたりしていた。


これはそうじゃない。手元に何もない種無しマジックでマントから石像が出てくる類だ。

電気を直接ものに変換する試みと同じ。

電気は目には見えないがエネルギーだ。

エネルギーはエネルギーにしか変えられなかったが、ここではどうだ。

詠唱、言霊で火炎が出てくると思ってもいいところでできそうな気がしている。

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