移動する回
RPGでいうとマップ3つ動いただけのなんとも面白みのない回
「ちょっと待って」
マスターの背中を追いかける形で入った空間から出ようとしたとき、リズさんに呼び止められる。
「一人でどんどん進んでるけど、話してもらえるよね?」
置いてきぼりにされて少し怒っている。
声の調子とつり上がった眉や眉間のシワがその証拠。
「……うん。確信が取れたらだけど」
「確信って何よ、それとそうじゃなくて、あれに触ろうとしてやめて離れて今出口?まで来ているんだけど何処に行こうっていうの?」
どうやら勘違いしていたみたいだ。
単純にいわゆる「何処へ行こうというのかね」ということみたいだ。、
「あー……お供え物?」
「「おそなえもの?」」
言い慣れないカタコトな感じがする。
場所は、空間の入口付近。真後ろの直線的上に鉄の小さな角柱が置かれた盛り土がある。
「それで何を作るの?」
リズさんは当然ながらのことを聞いてくる。
ここは砂漠だ。前世ですぐ作れるようなものもここでは作れない。それは調味料も同じこと。
醤油や酢など液状のものはほぼ無く、醤油を作るときに出てくる味噌も無い。あるのは砂状の砂糖や塩、そして胡椒や唐辛子、山椒から成る数々の香辛料。
およそ自家製コーラやカレーは作れるくらいの量。
「凝ったものは作れないから質素なものになるかなあ……」
「例えば?」
「焼いた肉」
前を歩いていたマスターがズッコケかけた。
「リースくん、流石にそれは……」
「まあ大丈夫でしょ。とりあえず宿に戻りましょ」
マスターが話し始めたのを遮ってリズさんが宿に戻ることを勧める。
マスターは首を縦に振ったが心配だといわんばかりの表情をしている。
場所は変わり、宿の厨房。
「厨房」とは言ったものの、おおよそ大人数から注文を受けた際の受け入れられる許容量は無い。
そもそもそんな人数が来ることが無いのだろうと思う。
何故なら「砂漠街」だから。
マスター曰く、多くて4、5人のパーティが迷い込んで来る程度らしい。
だいたいは近くに住んでる人が二人や三人で来る、しかも見知った人ばかりの上、注文メニューはあまり変わらない。
領主クラスの屋敷の厨房よりは多少小さいくらいの大きさと言える。
そんな厨房にて3人。一人は立って、一人は椅子に座って、一人は素早くキャベツのようなものを千切りにしている。
しばらく包丁がまな板に当たる軽い音がリズ厶よく響くのを楽しんだ。
「さて、その『オソナエモノ』なるものなのだが……」
厨房中央に備え付けられたテーブルを3人で囲み、水やジュースで話を始める。
「どういうことか教えてもらえるだろうかリースくん」
「一言でいうと亡くなった人への献花みたいなものです。実際は花だけじゃなく生前好きだった食べ物、飲み物を供えてそれを飲んだり食べたりすることで一緒に食事をしたという意味合いを取られることもあるようです」
「……要するに?」
「食べ物を捧げて、捧げたものを食べる。それだけです」
リズさんはあまり理解できていない様子。
それとは反して関心を示すマスター。
「供えるものは別になんだっていいんです、食べるんですから。」
「重要なのは心内ってところかな」
「そういうことになりますね」




