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幻想と幻糸  作者: 春風
荒野へ飛ばされましてね
24/26

番外//喧騒トレット家

リースの姉、コール目線でお送りします

 時は遡る事、家の前から忽然と姿を消した日の晩。

彼の者は袋に突っ込まれて、幌馬車でガタガタ運行中のこと。



「……」


 私は母の焦燥の顔をあまり見たことがない。

一つは私が家の外に置いてある水瓶をひっくり返して割ってしまった時。

一つは弟のトルクが木から落ちたとき。

そして今。


 台所でうなだれる母の背中を見て、次に私の横で飛び跳ねるスライムのようなものを見る。


というか、形はスライムそのものなのだけど。


 家の近くにもたくさんスライムはいるけど、このスライムは違う。

属性ごとにスライムの色は違ってて赤は火で燃えていたりだったり、青は水で動くと地面が濡れていたりする。

横で跳ねているこのスライム、ちょっと透けててずっとゴボゴボ言ってて湯気みたいなものが出ている。

そしてとてもじゃないけど熱くて触れない。


今気づいたのだけど、地面は濡れていないのに跳ねてる?

移動する時は滑るように動いている。


これ、本当にスライム?


 見ているとスライムは母の方へ跳ねていき、肩に乗った。


「あっっ―――たかい」


いきなり熱を持ったものに乗られてびっくりした直ぐ後に乗られたものの温度を感じる母。


「なんだスライム……か?ってコール、起きてたのね。まあいきなりだもの。寝られないわよね」


 びっくりした拍子に肩から母の手のひらへところりと転がり落ちるスライム。

手のひらの上で止まったスライムはポコポコと鳴らしつつ跳ねている。


「このスライムを残してリースは消えてしまったのだけど……属性がわからないのよね。燃えていないし、後は居たところには濡れていない。硬いものでもないし更には色も無い」

「でも温かい」

「そうなのよね……とりあえず寝ましょ。また明日考えるわ」


そう話して自分の部屋に戻っていく母の背中は丸くなっていた。


手元に戻ってきたスライムはポコポコと私の肩の上で鳴らしつつはねている。

さも今の状況がわかっていないかのようだ。


そのままベッドの中に潜り込み眠った。



次の日。起きれば既に鍋にお湯があるという事態を目にする。

普段は母が魔法で火を起こし水を沸かすという一連の流れがあるのだけど、それがない。


濛々と沸き立つ鍋を前に後ろからやってきて私の横で立ち止まる母。

「なにこれ」といった感じの複雑な表情をしている。

弟はまだ寝ている。

母はこちらへ頭だけ向けて鍋の方へ向き直しまたこちらに向く。

言葉はないけれど「あなたがやったの?」と言いたげな顔。


私は首を振って否定を示す。


 火や水といった魔法はある。だけど2つは相反する属性なので同時に使おうとすると体調を崩す……らしいです。本に書いてあったからということと私自身に水系魔法の適正がないということからよくは知らない。


 二人でもくもくと湯気の立つ鍋と鍋の横にいる透明なスライムを交互に見る。


「もしかして……」

「火と水の2つの属性持ち?」


 母は気を失った。


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