「砂漠」としての意味合い
「とりあえずはそれとなく探してもらうのだけど」
「「だけど?」」
「まずはある場所に来て欲しい。そこへ行って何も感じなければそれはそれでいいんだ」
マスターの後ろをついていく形で宿を出て、周囲を見渡すが何も変わらない景色。
屋台でものを売る人、並ぶ人、道を行き交う人々、十人十色、様々である。
先程、人の大群が押し寄せていたとは寝耳に水というか青天の霹靂というか。
今は真逆ののどかで活気のある露店道だ。
通りを抜け、建物の隙間を縫い、たどり着いたのは反対側。
入ってきた側と同じようにぷつりと切れたような壁と櫓と番が居る。
違いといえばよくある「トンネルを抜けると雪国でした」のようなジャングル。
異質感が凄まじい。結界の類いでも張ってあったかのような様変わり。
入口側からこのあたりは砂漠だったはずと思っているとマスターの口が開く。
「驚いたことだろう。私もわりとつい最近見つけたものなんだ。だから私もそんなに知らないんだが、この轍が付いててね……」
曰く、普通に通りを抜けるだけでは砂漠へ出られるとのこと。
ある場所を経由しないとここには来られないらしい。何処かは教えて貰えなかったけれど。
「さあ、着いたよ。見てほしいものはこの中にある。と、その前に――」
マスターは話してる途中で切り上げると何かブツブツ言っている。
この世界でいう「魔法」なのだろうか?
「……よし、誰も来ていない。入ろう」
「門」と言える外見は日本にいるなら身近な鳥居の形をしている。石材製ですべて円柱でできている。触るとすべすべしていて大理石を思い出させる。ところどころ苔が生えていたり、欠けていたりと時間の経過をものがたっている。
……大理石?
何か思い出しそうで思い出せない疑問を残しつつ中へついていく。
鳥居をくぐるがまだまだ同じような草木が生い茂る風景。
地面には言われた轍。この大きさはこの世界の馬車の車輪ではない。恐らく現代社会でいう「大型車のタイヤの跡」だ。
残骸があるのなら酷い錆で全身真っ茶色になってるだろう。もしくは風化で無くなっているかもしれない。
着いていくこと数分、車が一台通れる通路を抜けた先は広々と開けた空間。上空は背の高い木の葉で心地よい木陰となっている。
中央には円を描くように盛り土があり、更に真ん中には何か刺さっている。
近づいてみると真っ茶色に染まった小さな角柱。大きさにして5cm角、高さ10cmと言ったところ。
「これがその……見てほしいものなんだ」
マスターはこちらへ向き合ってから話す。
「街に来ていたあれも、このよくわからないものも関係あるのか、ないのかさえよくわからないけれど、どうだろうか。ちなみにこれを触ろうとするととても熱くてとても冷たい不思議な感じのものが拒むというか受け付けない感じがするんだ」
マスターに手で許諾されるとゆっくりと手を伸ばす。
あと少しというところで脳内で声が聞こえた。
「触れる前に供え物を」
その声はとても懐かしく、そして生きる糧をくれた人の声。今は名前を言ってはいけない気がした。
静かに手を引き、二人に一旦戻ろうと勧める。
脳内には溢れんばかりの美味しかった食べ物と感謝の記憶。
目には悲しくないのに、止めどない涙。
「もう一度来よう、材料と鍋と皿を持って」
本格的にリース君達の物語が始まることになる。
頑張れ、リース君、リズさん。




