砂漠街の一室、須臾
ちょっとした一コマっていう感じで読んでくれるとありがたいです。
改めて部屋を見回す。
部屋の入口の扉、扉の反対側に窓、窓を正面に右にクロゼット、左にベッド。
机と椅子、机の上に手鏡があるだけ。
ベッドには横たわるリズさん。
本名なんだか偽名なんだか知らないけど。
手鏡を手に取る。
自分の顔が映っている。疲れているような顔だ。
鏡を手前に傾けた時、首に紫色の筒がいっぱい付いた首飾りがあることに気づいた。
「なんだこれ……」
実際には首飾りなんて見えない。
だが鏡からはちゃんと首にかかっている。
何かを掴むような感触もない。
首を横に向けると赤い点がある。
触るとかさぶたではない。
いつか警告音が脳内で鳴り響く中
それを取った。そこからすぐに視界は真っ暗になった。
それはなんだったのか、わからない。
ただ、丸いシールのような感触だけを覚えている。
きつい生臭さに目を覚ます。
青魚のようなものではない。
その生臭さが「血」ではないかと疑念を持った瞬間に一気に覚醒した。
周りは真っ暗だった。
とにかく真っ暗で何も見えない。
本来はまだ日は傾いておらず部屋はまだ火も要らないくらい明るい筈なのに真っ暗なのだ。
一寸先は闇を体現しているかのように何も見えない。
手を伸ばしてゆっくり歩いて壁を探す。
ひたすら歩いた。足が棒になるんじゃないかと思うくらい歩いたけれど一向に手に振れるものがない。
しばらく歩くと暗がりが薄くなっているのに気づいた。
そのまま歩くと、ふと声が聞こえた。
小さく、鼓動の音にかき消されそうな程に儚い声だ。
「……きて……」
知ってるのに知らない声だ。名前が出てこない。
でも女性の声だ、ということはわかる。
「……おきて……」
囁く声が脳裏に木霊する。
それがひたすら囁かれる。
うるさく感じるまでにひたすら。
ここは夢の中?じゃあ、起きてほしいのは何故か?体に危険が?
囁かれる女性の声はいきなり男性の声に変わり、「正解だ」と一言。
そのすぐあとの瞬きで眼の前は部屋の中と切り替わっていた。
日はまだ傾いておらず、窓の外は眩しいくらいに照りつけている。
あの声は誰だったのだろうか。
どっちの声も聞き覚えのある声だ。
忘れてはならないような気がしている。
探さなきゃ、声の主を。
思い出さなきゃ、前世の記憶を。




