砂漠街
目と鼻の先ではないものの肉眼で建物がゆうに見える距離に立つ。
砂漠のオアシスのような場所は高い壁で囲まれており、防砂壁のよう。
地面からほぼ砂なのだが。
かの市場のような黄色い砂ではなく、ここの砂は橙、ないしえんじ色で濃い色となっている。
壁から飛び出るように伸びる木が幾らか見える。
その囲んだ壁が途切れる形で入口が開いている。門などない。
入口には警備兵と思わしき人が二人。
壁から10mくらい離れた場所に櫓が組まれていてその上に一人。
砂嵐によく遭うのか?
見ていると入口にいる警備兵二人が会話し、一人がこちらへ歩いてくる。
「どうしたんだ、って怪我人か?とりあえず中へ入ってくれ」
警備兵は近くへ着くなり、気を失ってぐったりしているリズさんの体を担いで一緒に入口を潜る。
一歩入ると街は外の砂のように橙色だった。
砂も建物も同じ橙。
広い街なのか横を見ても角は見えない。
高い壁で風と砂は遮られ、わりと快適だ。
ただ、橙一色なので単調だ。
壁に使われている煉瓦みたいなものの原料は恐らくそこら中にある砂だろう。
砂がどうやって煉瓦みたいに固められているのかはわからないけれど、圧力で固められているのなら相当な圧力だろう。
などと思いつつ、警備兵の後をついていく。
着いたのは1軒の家。扉に架かっている看板には「INN」と書かれている。英語圏か?
警備兵が扉を開けて入れば中は西部劇の様相そのもの。
扉より背の低い僕は「扉を押して開けて中に入る」というより
「扉を潜る」という感じなのだがそれはそれとして。
「おう、マスター。一部屋開いてるか?」
「なんだ、ギャッツじゃない――って怪我人か?今なら2階の1番奥が空いてる、俺も後で行く」
「おう、ありがとよ」
マスターと呼ばれた男は一言で言えば渋い男だ。波止場のバーにでも居そうな感じである。
マスターに軽く頭を下げた後、2階へ階段を上がり、付いて行く形で部屋へ入る。
部屋もまあ西部劇のそれで、窓、ベッド、机と椅子、小さなクロゼットが一つ。
警備兵はリズさんをベッドへ寝かせると一息つく。
「あー、なんだ。災難だったなっていうかなんていうか……聞きたいことが多すぎる。とりあえず一つづつ聞いていくぞ」
警備兵は頭装備を外し頭をバリバリ掻きながら話す。
互いの自己紹介から始まり、何処から来たのか等聞かれた。
「あー、ボウズ。災難だったな。俺からはなにか言うことが思いつかねえ。後はマスターから話を聞くといい」
警備兵は装備を被り直し、じゃあなと言いつつ扉を開けて出ていった。
出ていくとき開かれた扉からマスターが入ってきた。
マスターは背が高かった。いや、自分が幼いだけなのかもしれない。
「ふむ……何から話せばいいのやら」
マスターは顎髭をじょりじょり掻きながら考える素振りをする。
「とりあえずここは何と言う場所なんですか?」
「まずは地名か。なかなか見所のある……とか言ってる場合じゃないな。
ここには名前が無い。地名が無いんだ、砂漠街とは呼ばれているがね。呼び名があるだけでれっきとした地名は無い」
「名前が無い……ですか」
「何故なら――」
「「砂漠だから」」
その後、マスターは困ったことがあったら気軽に呼ぶといいと言って部屋を出ていった。
タイトルを先につけて書けない……。




