荒野の横穴ではじめまして
こんだけ書くのに長くかかった。
「ここはどこ?あなたの名前は?」
眼の前の女の人は座り直し、こちらを見据えて話しかけてくる。
先程の寝ぼけていた人と同じ人物なのだが。
「僕はリース、あなたの名前は? それとここが何処かは知らない」
「リース君ね、私はリズでいいわ、リズと呼んで頂戴ね。
ここが何処かわからないとなったからには、ウロウロするわけにはいかないわね」
手を顎と腰に当てて考え込む仕草をするリズさん。
周りは荒野で水源は無さそうだ。今居るところは大きな岩をくり抜いたような穴の中。
小さく生えた草がちらほら見える。他は何もない。
外へ出て見上げれば雲一つなく透き通っいて溜息が出るような青色。
馬車から抜け出したところからはさほど離れてはいないが、近いうちにここを離れないといけない。
――戻ってくるかもしれないから。
戻ろうと後ろを向くとこっちを見ているリズさん。
その顔は顔を青くして驚愕を貼り付けている。まさに開いた口が塞がらないと言ったところ。
「え……戻ってくる?」
どうやら口から出ていたみたいだ。
「ありそうじゃないですか。僕らを積んだあの馬車が何処に行くのかは知らないけど、目的地に着いていざ後ろの荷物を見ると居ないぞって色々探し回って次の日に急いで戻ってくるっていうやつ」
「それじゃあ、急いで動かなきゃだね
でも――」
突如「何処へ行く」と低い第三者の声。
声の方へ向けば逆光で黒い影。
瞬きをすれば影は直ぐ側まで来ていた。
こんなところにいたのかと言って、影はリズさんの髪を乱暴に掴み引き摺っていく。
引き摺られていくリズさんの顔は激痛で歪んでいる。
酷く歪んでいて今にも泣き出しそうなまでにある。
まるでこちらが見えていないかのように一瞥もくれない。
その光景を前に腕は独りでに前へ伸ばしていた。
そして脳裏に響く声がひとつ。
『助けたいのなら戦え。今のお前にはその力があるはずだ』
声が聞こえた。そして気づけば自分の体や周囲は水浸しで横穴の天井は抜け、細長い岩が二つ並ぶ形になっていた。
後ろも筒抜けで風が通り抜けていく。
あの影は太陽の光で顕わになっている。
黒の短髪で長身の男のようだ。顔はうつ伏せになっていて分からない。
前を向けばリズさんが岩の影からこちらを覗き込んでいる。
距離があって表情が掴めない。
言えるのはこれだけのことをやったんだ。怖いだとか恐怖を感じるのが普通。
……魔力に飲まれたんだろうか、力の制御を覚えなければ。
そう一人思考を巡らしているとリズさんは喜々とした表情を貼り付けて走ってくる。
すぐ側までかけよって来るとリズさんの両手で僕の両手を掴んでぶんぶんと振る。
「すごいね、何処でそれ覚えたの?」
キラキラと光る目の眩しさに目を背けてしまう僕でした。
まだ執った感覚はない




