試み-Ⅳ-
ふらつきつつも家に入っていく母を見る。
この年齢でこの魔力の量はおかしいと見た。
試しに「指パッチン」をしてみる。
親指と中指の腹同士を合わせ、勢いよく擦り合わせる。
音は出なかった上火花も出ない。
片方が石、片方が鉄の役割を持たせないと火花は出ないんじゃないかと思う。
このあたりは魔法の力とやらでなんとかなるものじゃないのか……。
まあどうにかなるだろう。
熱は無く燃えないものの火が出せる。なら消火のためにも水を出せるようになっておかないといけない。水はやっぱりコップというか水瓶というかそれなりにイメージがいる。
イメージのままに水を出そうとするもイメージが問題なのか大量に水が出る。
型は球状だったにしてもさっきの火球レベルの大きさの物しか出てこない。
そんなにたくさんいらない、手の平サイズが一つで十分、と思ったらその大きさになった。
出力も意思一つで決まるようだ。
地面を隔てて小さな手の平の上、宙に浮く小さな水球が一つ。
ぼーっと見続けて思う。
凍るのだろうか?
前世ではほぼ科学。分子同士がぶつかり合うことで熱を発していた。逆に止めると冷える。どういう感じに止めるのか全然わからないけど。
そんな感じのことを考えていると水球が白く濁ってきていた。
触ると冷たく、表面だけなのか酷く脆かった。
枯れ葉が踏まれるような軽い音を立てpて、水球の中へ沈んでいった。
水はとても冷たかった。このまま飲めば多分お腹を壊すだろう。
その水球を地面へ近づけると、割れて地面には黒い水玉模様が出来上がった。
水は水。火は光。熱は……振動?
もう一度水球を作り、震わしてみる。
スライムのようにぷるぷる小刻みに震える。
震わせ続けて少しの間待つ。
そういえば前世では勉強ばっかりで楽しかった思い出はあんまりなかったな。僕には家庭教師の先生役の人がいて、その人はとても頭良かったんだ。
その人も勉強する立場だったみたいだったんだけど、その僕の先生役の人のそのまた先生役の人は、なんかよくわからないけど別の世界の人のようだった気がするんだ。
最近、前世の記憶が薄れてきているような気がするんだ……。
大切な記憶が、だんだん消されていくような気がしてならないんだ。
大切なあの人の名前や自分の名前が直ぐに出てこない。
遠くを死んだ目で見つめる少年の背後から、同じくらいの背丈の華奢な紫色が目立つ少年が一人近づいてくる。
その背後から耳元で。
「やあ、元気だったかい?あの頃の僕らを知っている君が死なれると僕らが困るんだ。
だから……」
紫色の少年は眼の前の少年の頭をそっと触り、首飾りを首にかけた。
「絶対失くしちゃいけないからね」
そういうとふわりと幻のように消えていった。
なんか出てきましたね。




