ソノヒトアリ 一話
俺は現世でまったく売れる気しなかったし、迎えが来たのはラッキーだった。
『君がアリヒトくんね』
『え、美人が窓から入ってきた。なにこれ夢?』
『ねえ、君テラネスなんか狭いでしょ。もっとでかい星きちゃいなよ~』
ジャポナス人しかいない模造の地球から、宇宙船で一時間ほどで天界と呼ばれる神に近い星ウィラネスへと着いた。
この星でオレは―――
「アーリヒト神星官長!」
――なぜか偉い役職になってしまった。
「なにか?」
周りは金髪や銀髪の美男美女ばかりである。
「アテラス界へ新しく生まれる予定のNo.89の主人公についてなのですが」
「ああ、一番新しいのがそれか?」
待機ジドウは87まで減っていたはずなのに、なんか増えている。
「実は本日No.56から2つ分散したせいで増えたのです」
「サクーシャ神にも困ったものだな……なんとか合成して減らしてくれ」
「いや、実は以前、それをしたせいで今回の分裂が発生しまして」
「なるほど、後で目を通すよ。次」
創造神はほぼ毎日、人間の人生を漠然と定めてそれを細かくするのが俺達の役目。
「はい、私からもお話が」
「君は退院科だな」
神がグチャグチャ書かれた資料から人間を放出し、新しい紙へ書き直す作業をする通称が退院科。
「退院させたいのですが、原本紙回ってきません」
「ああ、こちらから指示を出す」
――ああ、紙と神と髪がぐちゃるな。