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不死身の加護 一話
――逃げなくては、捕まれば殺されるのだ。
大帝国ジュグの森の洞窟、皇子は一人でドラゴンを退治にいく。
皇子は皇帝の一人息子で、民敬う優しき心を持ち周囲から慕われていた。
美しい后を迎え、行く行くは皇帝となり民を導く。
そんな未来が待っていたであろう彼へ神は試練を与えたのだった。
洞窟の中にいたのはドラゴンではない。全身が黒い化け物だった。
それは皇子の中へ取り込まれていった。
なにも変化はなく、皇子は国へ帰還する。
『化け物!!』
『皇子を返せ!!』
森から帰還した皇子を迎えたのは民衆。あろうことか皇子を帝国から追い出したのだ。
『大丈夫?』
そういって薄汚れた青年へ駆け寄り、布で顔をぬぐった。
少女はそれが化け物と恐れられる皇子だと知らないのだ。
『私はコクア、貴方はだれ?』
『わ……オレは――』
皇子であった過去もサンデルフィンという名を捨てる。
『イツマ・ツルギだ』
『剣なの?』
『知らん』
たんに頭に浮かんだだけだ。
『じゃあ私の村にくる?』
『……』