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彼らは優しいから僕より先に死ぬんだ  作者: 瀧野憂
ミーティング
5/15

ミーティング1話


「ぐあああああ」


――人間の中心たる帝国ジュグ。強い魔力、権力を持つ者が住む繁栄の都。


「化け物め!!」


十年前突如姿を表した巨大な黒き怪物。人間同士の戦で名を上げる兵も根をあげた。


「く……援軍はまだなのか!?」

「あんな化け物がいるなんて聞いてねぇよ!!田舎に帰らせてくれぇ!!」


普通の戦すら浅い若い兵士は、惨状に嘆く。


「大丈夫ですか!?」


兵士の安否を確認するのは杖を持った金髪少女。その後ろに紫髪の男がいた。


「馬鹿者……!一般市民は避難しろ!」


新人兵士は二人に注意する。


「シルフェさん!!」

「わかった」


少女が杖をかざすと、男は怪物に向かって行く。


「ちっ……!」


怪物の爪が男の左肩を掠めると、少女の肩口から血が滲む。


「どうなって……」

「……あれは調術師だ」


騎士団長の部隊が駆けつける。


“調術師”は“ドレイヴ”と呼ばれる人間を使役して戦える数少ない者。


「怪物が現れたのは神の気まぐれだ。我等は抗うしかない」


一組の男女のみが契約し、武器の一切通じない怪物を倒す事ができる。


「大人しく消えろ!」


男が怪物の顔を蹴ると、あっさり崩れて灰となった。


「あれが噂の……」



戦いを終えて、俺は契約者リリの元に駆け寄る。

新米調術師の彼女は貴族の娘で、生活に困っている様子はない。

何もせずに楽して暮らせるのに、なぜそこまで化け物と戦いたいのかわからない奴だ。


「アンタ怪我してんだろ。病院行かなくていいのか?」


彼女は俺の受ける筈だった怪我を代わりに受けた。

使役される側が能力発動中に怪物から負った傷は契約者へ肩代わりされる。


「このくらい大丈夫です。もっと頑張らないと」


歩いていると焼きたてピザァの匂いがしてくる。リリが我を忘れて走り出した。


「あるじ~ピザ10枚~」

「いやいや食べ過ぎじゃない?」


二十歳くらいの男と女学生の少女が連れだって歩いている。

怪しい関係を疑いたくなるが、自分も客観的にみれば人の事を言えない。


「なあ」


話しかけると彼女は丸めたピザを器用に口へ入れた。


「なんですか」

「お前の目的はなんだ?」


俺がリリと契約したのは命の恩人だったからだ。両親は戦いから退いていた契約者同士で、一年前久々に戦いへ駆り出され、ジュグへ怪物を倒しに行ったきり還らぬ人となる。

そしてすぐに親の仇をとりにジュグへやってきたはいいが、金もアテもなく行き倒れる。

偶々俺を見つけた彼女は俺に食事を与えてくれた。


彼女は調術師に生まれたが契約者がいない為になれず燻っていたらしい。

そこへ丁度よくドレイヴの素質がある俺がやってきたのだ。

彼女の姉妹や親戚がこぞって契約者の誘いを寄越してきたが貴族様とは御免なので全員断った。


それでもリリは諦めずに俺を追いかけてきた。そこで怪物に襲われ、彼女は瀕死になる。

恩人が死ぬのは嫌だったので彼女と契約することになった。


「貴方に会う5年くらい前です。私の一番上の姉が怪物を倒しに行ったきり帰なかった」

「つまり仇をとりたいのか」

「大した理由じゃなくてすみません」



食指すませて次に向かったのがギルド。

あらゆる職業の人間が狩りなどの依頼を受ける場所。


「ネルヴィアちゃんは俺と契約するんだよ!」

「は?僕とに決まってるだろ!!」


ドレイヴは数が少ない為に競争が激しい。大して力がないなんちゃって調術師は腐るほどいるが。


「キャハハ~わたくしの為に争うのはヤメテ~」


まあどうでもいいし、女は優越感に浸っているし、争いには口だしをしないのが暗黙のルールだ。

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