フリーダム 一話
医療神の加護を受けたチイユ星。そこは宇宙で唯一の病院が立ち並ぶ衛生的な衛星。
数千年の月日で近代化しても尚、王家が残っている。
「く……」
城の庭で強大な力の波動が起き、辺り一面が穴だらけになる。
「お怪我はありませんかフローダム殿下!」
爆発を聞き付けた使用人達がドタバタと駆けつける。
「ああ、大事ない」
生来体の弱い父の具合が芳しくない。そろそろ王位争いが勃発するやもしれん。
しかし私は第一王子に生まれながら魔法がからっきしなのである。
「はあ……次の王はクレスであろうな」
「なにをおっしゃるのございまですか殿下」
「そうです殿下!」
必死に機嫌をとろうとするのはチイユ貴族にあるまじき、腹の肥えた不摂生な者達だ。
「殿下、ぜひとも我がガンデール家を……ああ、我が娘ソクソレッタはいかがでしょう?」
――まず名前が駄目だ。
「王にはフローダム殿下しかありえないだろう」
「あらクレス殿下はチイユ1の魔法技術をお持ちですのよ」
クレスは式典へ遅刻、城を抜け出し徘徊など日々問題ばかり起こしているが、貴婦人や令嬢達からの支持が多い。
「魔法の使えぬ私などみかぎれば良いものを……」
第一王子だから格式を重んじる古株が意地でも即位させたいのだろう。
「それだけ兄上をお慕いなんですよ」
弟にして政敵のクレスは、女をぞろぞろと連れ歩いた。
私とクレスの顔は東の美姫と名高い母似ではある。
しかし、本ばかり読む自分は奴に比べあまり社交的ではない。
幸いクレスはカリスマ性がありながら女ばかり侍らすので、支持者が減ない。
それがあるからこちらには味方はいる。
――しかしここは腐っても医療の星なので武器は禁じられている。
故に力を示す手段は魔法しかないのだ。
「王位を継ぐのはお前だろうな。私は隠居の仕度でもするよ」
皮肉をこめ、笑顔でそう言ってやる。するとクレスは眉を潜める。
女達が見れば震えあがるような深刻な形相になっていた。
「」