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彼らは優しいから僕より先に死ぬんだ  作者: 瀧野憂
ソノヒトアリ
10/15

魔界貴族の次男 1話

「兄貴は0魔力で跡継ぎにはなれず破門、跡継ぎの妹は馬鹿、シュタンツェ家もおしまいだな」

「ようヴァオじゃねえか! あの噂知ってるか?」


不幸な噂が好きなんて。性格悪い連中しかいない。


「あー新入生がクラール大魔道一族の分家シュタンツェのお嬢様で魔力は少なくて勉強もダメダメって話なら」

「いってらっしゃいませ」


水色の髪を縦に巻いたザ・お嬢様が車から降りてきた。


「噂をすれば……」

「……結構かわいいじゃん」

「おれタイプだ」

「もー! さっきまで馬鹿にしてたくせに男子ってば!」


俺達の横を堂々と通り過ぎていく。自身に満ち溢れていて、とても落ちこぼれには見えない。



「ロレイノ様、おはようございます」

「ふあーあ。マルグ……ツェツィーネはもう?」

「はい、向こうの時間からして既に到着している頃合いかと」

「いじめられないといいんだが」



「あらあら、ツェツィーネさんも同じクラスでしたの」

「ああ、ラレザニアさんもこの学校だったのね」


廊下でビリビリしている女子は今朝のと、ボルディオン分家のコルビパンの嫡女。同じ跡取り娘というポジションで同い年のあの子をライバル視しているとみた。

俺には関係ないか、巻き込まれる前にさっさと通り過ぎよう。その瞬間ピシっと何かがひび割れる音がする。


「きゃあああああああ!」


窓ガラスが割れてラザニアじゃねえや、ラレザニアが悲鳴をあげながら逃げる。俺は咄嗟にツェツィーネをかばった。


「ケガしてないか?」


俺はシールドを張っただけだが、向こうも張っていたのであまり意味はない。


「私は魔法で……だけど、ありがとう。そろそろ離してもらえないかしら?」

「え? ああ……悪い」


無意識に抱きついていたことに今気がついた。人にあんなに近づいたことがなく、変な感じがした。



「ただいま」

「ああ」


父違いの兄フェルマーダは魔界で将来を期待される跡継ぎだ。俺も向こうも互いにほとんど興味をもたない。


「ヴァオディス……昨日母さんから聞かれたんだが、お前は将来どうするんだ?」

「え、ああ。兄さんが結婚するまでには家を出るよ」


どうせ家柄だけの高飛車なお嬢様と政略結婚でもするだろうし、新婚の邪魔になるだろうからな。

いろいろ考えてみて、一番の理由は面倒な義姉にかかわりたくないからだったりする。


「……私はお前の子を継ぎに添えようと思う」

「は? なに冗談いってるんだ。らしくもない」


まともに取りあってられるか。俺は部屋に戻らせてもらう。



「2年のヴァオディスさんかっけなー」

「ドール、それ誰?」

「おおっアレク~知らんのか、ほれお兄さんと友達との写真」

「いや、どれだし」

「これがヴァオディスさんで、右からお兄さん他」

「たしかに顔はかっこいいな。でも貴族なんて……」



「フェルマーダ様はいつみても麗しいですわ~」

「でも結婚相手ならヴァオディス様ね」

「長男の嫁なら将来安泰じゃない。魔界貴族の奥方になれるのよ」

「あの方、男色らしいのよ」


まっさか。


「まっさか~」

「この前なんてピンク髪でかわいらしい少年といるのをうちのメイドと見たんだから」


初耳なんだけど?


「もしかして昨日のはそういう意味で……」


ないない! あの兄にかぎってねえよ。


「いくら妹が心配だからって……」

「ちょっとだけ! 遠くから見るだけだから! 彼氏連れてたら悪いし!」


ピンク頭の少年とロン毛のチャラ男が学校の前でモメている。


「あの……」

「わああああああああああ!」


男は俺に驚いて門に頭をぶつけて気絶したので、起きるまで待つ。


「あーシュタンツェ家のお兄さんですか-」

「いやー彼氏君に恥ずかしいとこを見られちゃったね」

「そういう冗談やめてください今デリケートなんで」


「え……どうしようマルク、この人彼氏じゃなかったのかな?」

「さあ?」

「そっちじゃないですけど彼氏でもないです。ていうか貴方!」

「私でしょうか?」


ピンク頭の人に事情を説明すると、昨日はたしかにフェルマーダの近くにいたが、初対面で俺の兄とは知らなかったという。


「なんだ……」


普段なら噂なんて真に受けないのに、身内だとどうも気にかけちまう。


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