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彼らは優しいから僕より先に死ぬんだ  作者: 瀧野憂
ジングル!~黒歴史ノートを取り返すまで帰りません!
1/15

ジングル一話

【1章:始まりは神の争い】


―――――退屈で普通であること、それは人生においてもっとも多くを閉める時間。


常に俺を苛む辛さと虚しさは、いつか昇華される日が来るだろうか。

ただ楽しいだけの人生や、充実した日々を送ることはできなくても、普通に暮らせる。

そう思っていたが、俺は普通から一歩外れてしまった。


俺の生まれた家はごく普通の家庭。仲のいい両親、年のはなれた妹がいて、この安定した感覚が続いていくと思っていた。


そんな矢先、俺が六歳になったばかりの頃に父が失踪した。


捜索した結果、遺体も手がかりもなにもなく。事故や遭難でもない未解決事件として片付けられた。


今時父親のいない家庭はめずらしくないが、信じていた普通や安定への信頼は無意識の内になくなった。



学校が終わったのですぐに帰宅することにした。

今日はクリスマス、早く家に帰ろう。


「よう海原、お前いつも1人だな」

「今日はクリスマスだし、一緒にカラオケいかない?」


クラスメイトの男女が何気なく俺を誘う。クリスマスとカラオケになんの因果関係があるんだ?馬鹿なのかこいつら。


「悪い。誘ってくれてありがたいが、俺はいいよ。」

子供の頃の件があってか、周りに壁を作るようになった。


そして今、周りの人間が深く信頼できない。

なんらかの不穏分子が、残った大切な物を崩壊させかねないからだ。



「ただいま」

何事もなくまっすぐ家に着く。


「お帰り空陸<くうり>」

「お兄ちゃん、今日はすごいんだよ!」

母と妹の波奈がにこやかに出迎えてくれた。

今日はなにかあっただろうか、そんなことを考えているいると、波奈が手を引いてリビングに連れていった。


「これは……」

テーブルにはチキンやケーキなど、ごちそうがたくさんある。


「ほら、今日はクリスマス。お兄ちゃん今日誕生日でしょ?」


クリスマスに比べたら自分のバースデーはどうでもよすぎてすっかり忘れていた。


それに父さんがいなくなってからあまり贅沢はしてこなかった。

だがどうして今年はこんなに豪華なんだろう。


「あなた来年から高校生でしょ? そのお祝いもかねて今年は奮発しちゃった」


俺は三人でクリスマスを楽しんだ。



皆が寝静まった夜更け、部屋の窓から、空を見上げた。


人は死んだら星になると、幼い頃父さんが話をしてくれた。


昔は信じていたが、この年になると本当か疑いたくなるが。星は綺麗だからそれでいい。


じっと眺めていると、ただの星にしては大きく輝くものが浮かんだ。


気のせいだろう。明日になったらまたいつも通りの生活に戻るのだ。



翌日、なんだか体がだるい。そしてなんだか重たい。


目をあけると、何者かの頭頂部が視界にうつった。


俺の上に銀髪の、たぶん見知らぬ女の子が寝ている。というかなぜこの部屋に女の子がいるんだ。


「あ、おはようございます」

「おはようございます。じゃないだろ。不法侵入者の痴女が、通報だ!」


「あわわわお願いします待ってください!! わけを聞いてくださあああい!!」


あわてふためく銀髪の少女に弁解の時間を五分だけやった。


「まず。君はどうやってここに入ったんだ?」


そういや昨日は窓を開けっぱなしで寝てしまったような気がする。


「窓があいていたので、お邪魔しました」

「だからって入るな!」


俺に非があったからといって、入ったやつが100倍悪いにきまっている。


可愛いは無罪とか、騙されたやつが悪い。みたいな言い訳は俺には通用しない。

「あの、確認なんですがあなたは海原空陸さんですか?」

「そうだけど、なんでそれを……」


少女はにこりと微笑むと、手を差し出した。


「私はベルルです。貴方をお迎えにきました」

_________




俺を迎えに来た。なにをわけのわからないことをほざいているんだこいつ。



「もしもし…「あちょー」


少女の妨害のせいで子機がぶっ壊れた。


「しかたないな……見逃してやるから帰ってくれ(とっとと消えろ不法侵入、圧迫、密着セクハラ、器物破損、虚言女め)」


うざっ。子機弁償しろ。


「なんか黒いオーラが……いえ、私は帰れません!」

銀髪はくいさがる。


「よろしい。ならば、交番に直接届けるしかないな!」


俺は少女を引きずる。ハッとした。これを母や妹に見られたらまずい。しかたなく断念した。


「これには天の川<ミルキィウェイ>より深い事情が!」

天の川はそんなに深くないだろ。


「私はこの宇宙とは別の宇宙から来ました」


そういうスペースファンタジーチックな妄想、まだ人類には早すぎる。邪眼や腕が疼く程度にして君はさっさとお家に帰るんだ。


「宇宙はこの世に三つあります。一つはこの右宇宙<ライト>、私がいた中宇宙<センター>、左宇宙<レフト>です」


はいはい。そういう設定ごっこは1人でやってくれ。


「各自、異なる三神の造った宇宙、とにかく今大変なことになっています!」

「大変? 宇宙人が侵略でもするとでも?」


まあ少し設定に付き合ったら満足して帰るだろう。


「いえ、ことのほったんは三神のいざこざなのです。初めは宇宙は1つだったのですが、神はプライドが高く、自分が一番でないと気がすまない。ということから遥か昔に分かたれましたのです」



―――分かたれて今日までは平和だったということだよな。


「……なぜ分離することで解決したはずの三神が今になって出てくるんだ?」


「実は争いは今日に限ったことではないんですが、なんやかんや宇宙全体レーサルウェポン的な規模になりまして、詳しくは私を派遣した上司に!」


上司まで来るのか、もうこいつ一人でも手におえないのに、増えたら裁けないぞ……。

よく練られたんだかご都合の設定なんだかわからないが、お引き取り願おう。


「で、結局君はなにしにきた?」

「ですから、中宇宙へ来てください!」


馬鹿馬鹿しい。いい加減にしろ――――――――


「……俺はもうすぐ受験で、遊びに付き合ってる暇はないんだよ」


なにが宇宙だ。なにが神だ。そんなものいるわけが無い。


「……遊びなんかじゃありません」

「なに……?」


「中は左と右のどちらにも繋がっています。右と左に影響する因果はありませんが、たとえば左の宇宙が中の宇宙へ攻撃した場合、右の宇宙も同じく負荷を受けます」


「宇宙が三つあることすらまともにとらえていないんだ。そんな話を唐突にされても信用できないな」


「……貴方には大切な家族がいますよね」

「ああ、それがどうした」


どんな人間にも家族だろうとなんだろうと誰かしら大切な相手がいるだろう。なんでこいつはそんなこと聞くんだ。


「いま中宇宙はわずかながらに攻撃を受けています。貴方がこちらの世界へ来て、攻撃を防がなければ――――――――大事な家族、死にますよ」


ぞくり、背筋が粟立つ。あの女、殺意のこもった眼をしていた。ただの設定にどこまで入り込んでいるんだこいつは。



「連れていけるものなら連れていけよ」

どうせできない。お前が恥をかくだけだ。


「いいんですね!?」


銀髪女が俺の腕を掴む。すると、目を開けられないほどに体全体が輝いた。



「着きましたよ」


「なっ!?」

目をあけると、そこはまるで未来の世界。どうなっているんだ。


「ようこそ、クタル・スターへ」


【2章:不穏な風】



全回のあらすじ。俺はクリスマス=誕生日の日窓をあけっぱにしていたら謎の女が部屋にいて、なんやかんやでわけのわからないところにつれてこられてしまった。


「って……ふざけるな!! いますぐ家に帰せ!」


銀髪女は俺を無視し、なにやらノートを取り出した。


「え~封印の黒書“――――――俺の名は天と地を支配せし者・空陸<クーリク>。前世は全能の神と混沌の大魔王により創られた。相反する悪と善に飲まれる悲しき定めにより、異界へ転生し、力を封じられた。生誕は神の生まれし日の6じ6分6秒”両利き、オッドアイ」


「おいやめろ(ぬわああああああ)」


銀髪女は俺の捨てるに捨てられない1年前のシュヴァルツなる歴史を読みやがった。


「えへへ、返してほしいですか?」


なんたる悪逆、ノートを持って建物に入られた。しかたなく俺も入る。



「――――新入りはまだなの!?」

眉間に皺を寄せ、苛立ちを抑えつつ、金髪の少女は緑髪の少年に問う。


「自分にはわかりません少尉!」


慌ただしい靴音が扉前から両者にきこえる。


「おっ来たみたいだ……」


「遅い!!」

金髪の少女がテーブルを蹴りあげると、壁にぶつかり大破する。


「ベルル二等兵です。失礼致します!」

ヒュン、扉が開く。


男女二名が彼女の連れた少年に注目し、じっくりと観察する。


「……?」

少年はわけがわからない。といった顔で銀髪の女に視線を送った。


「この方々はデリア少尉、スー上等兵ですよ」


「だからここはなんなんだ!?」



銀髪に連れてこられ、やってきたのはこの部屋。

俺の家より広い面積な気がする。

そしてなにやらこのいかにもな部屋には大破したテーブルがある。だが質問したら銃を持った武装兵が出てきて殺される気がする。



金髪を二つに結った同い年くらいの少女と少し上くらいの緑髪の少年は、こちらを品定めするように凝視している。


「ベルル二等兵、説明はしたの?」

「はわっ!していませんでした!」


金髪の少女は鬼のようなオーラで銀髪女を睨む。目をあわせないようにしよう。


「あのここは知らぬものはモグリだけとされるほど有名な、宇宙管理者<プラネター>の拠点なんですよ」


「……プラネター?

(モグリだから知らないな)」


「とりあえず宇宙軍人です!!」

「ああ成る程、機動ロボットに乗って戦うあれか」


「そうで「いやいや違うだろ!」

「なんだ違うんですか?(テンション下がるわ)」

緑髪の男が金髪の顔色をチラチラ伺う。


「なにそのあからさまな落ち込み。おまえそんなにロボット好きなのか」

「そんな話はいいか――――」


“ビー”なにやらアラートが鳴る。


「奴等が来たわ!! 出撃用意!」

「おー」

「なんか戦うみたいだがおまえはいかないのか銀髪」

「私したっぱ広報なので」


だろうな。


「まあいい。とにかくノート返せ家に帰せ」

「いやどす」

「なんで急に舞子さんになるんだ!?」


「クーリクさんお忘れですか!」

「その名で呼ぶな!!」


(ふざけやがってどれだけイラつかせる才能があるんだこいつ。わざとなのか?)


「この世界で起きたことはライトにも反映されるんです」

「―――!」


そうだった。初めはただの設定だと疑っていたが、俺は異界にいる。ということは必然的にあの話も本当になるんだ。


「具体的にはなにがおきる?」

「たとえば、今外で暴れているのはレフトが送り込んだ化物・エルタノルタまたはキュラソー、またはウォルターです私には判別不可能なので種類は他の方に聞いてください。」


そんなに種類がいるのか。


「……化物や敵の類い暴れているというのはだいたい察した。俺が知りたいのはそれがこの世界で暴れてライト、俺がいた世界にどう影響するかだ」

「……新型ウィルスが広まるか、新種の怪物が町を滅ぼすとかですかね~」


ちょっとどころじゃない、大規模すぎるレベルじゃないか。


しかたないな。


「というわけで、貴方にプラネターに入って私たちと一緒に戦っていただきたいんです!」

「……わかった」


「そうですよねだめですよねだからノートの中身を拡散して……え!?」


銀髪女は驚きのあまり迫ってきた。こいつ人の話聞かないタイプだな。


「だから、プラネター(とかいうバカ見てーなだっせーネーミング)の組織に入るって」

「なんでですかああ!?」


はんぱねえオーバーリアクションをされた。

(なんでだよ。入るんだから喜べよ)



「そんなに驚いてどうしたんだ」

「あの、なんか、もっとこう葛藤とか……」


「入らないほうがいいのか?」

「いえ入ってください!!」


銀髪女は満面の笑みを浮かべる。

(どっちだよ)


「なんなんだお前は」

「だってさっきまで冷たかったのに急に優しくなって……」


「は? この世界を守らないと母と妹が危険な目にあうかもしれないんだろ。なら断る理由もないだろ」

「……は、はあ」


俺は着替えボタンワンプッシュでスタイリッシュな衣服になる。


慣れない武器を持ち、銀髪女と外にでた。


「非戦闘要因、なんでお前まできているんだ?」

「えへへ貴方の後ろで雑魚を倒してポイントを貯めたいんです。私お友達いないから誰も協力してくれないし……」


(だろうな)

―――――――



「息を吸うな!!キュラソーだ!!」

怪物キュラソーは触手を風に揺らしながらアルコゥル=フェロモンを散布、兵は酒に酔ったかのようにへろりへろりとなり。触れられもせずあっけなくなぎ倒す。



「まずいわ……一体だけならまだしもフェロモンで仲間を呼ばれたら……」


「ウォルターなら危なかったですけど、こいつなだけまだマシ……ってかんじですかね~?」


「なんかわからないけど援護します」

「……やめとけ、やめとけ。銃の扱い方もわからないガキの出る幕じゃねえよ」


(まあたしかにそうなんだが、このままだとマジでライトに被害を受けそうだ)


銃はともかく、この空気汚染をなんとかできないものか――――――


【3章:過去を振りかえるのは歩みを止めるだけ】



俺は窮地に陥ったプラネターたちの元へ駆けつけた。

敵が送り込んだの化け物・キュラソー。

そいつが撒き散らした空気を吸うと、飲酒したのと同じようになる。


この世界は元が同様の宇宙軸なだけあって言語や固有名詞などには大して差がないようだ。


異界のわりにプラネター達はアルコールで弱るあたり人の皮をかぶったエイリアンではないようだ。




「なあ新入り、お前はキュラソーの影響を受けないようだなあ~」

「……そうですね」

スー上等兵とかいっただろうか。なんかショボいが年上だろうし一応敬語使うか。


――――だがなぜ俺や銀髪、少佐と上等兵はキュラソーの影響を受けないか、そんなことを考えている暇はないか。


ともかくこれを始末してしまえば一先ずライトの平穏は保たれるのだろうか、向こうの様子を探れないため判断が難しい。


「二等兵! そこでなにしてんの邪魔なんだけど!」

「すすすみませ~ん」

少佐が銀髪女にめっちゃキレてる。

大人しくしていると思いきや、あいつなにやってんだ。


銀髪女の近くに、キュラソーとは異なる奇妙な化け物が来た。

透明で見えにくいなにかだ。


「二人とも、見えてる?」

デリア少佐が化け物のほうを銃で差す。


「へーい」

「はい」

上等兵や銀髪女にも見えているようだ。


「あれは?」

「やっぱお前にもヤツが見えるのか。

あれはウォルターだ。西暦2050年にテラネスを襲撃した化け物らしい。ちなみにキュラソーが2200年な」


「そうですか(は?待て……ここ西暦何年だよ)」


「標準をウォルターに変更、雑兵共一斉に放て!」


少佐の合図でわずかに意識を回復した兵達がライフルやレーザー大砲で一斉に撃つ。


だがウォルターの姿は雑兵には見えていないようで、だいたい外れている。


「なんか、ウォルターに攻撃が通じていないように見えるんですが」


ただ当てているだけにも見えるし、球がウォルターに吸収され、消えている。


「ああ、ウォルターは水液体のようなもんだからな。基本はあのサニュ星から受ける日差しでだんだんと自然消滅するのを待つか、無理に大火をおこして蒸発させるんだがな~。

生憎いまは日差しも弱く、大火を起こすのも無理だ。

つーわけでこの攻撃も気休めだ」


清々しい笑顔で言われたが、どうする気なんだ。



「おっウォルターから水分が……」

銃がウォルターの端にあたったとき、水しぶきがあがる。


―――そういえば今いる敵は水とアルコールのような成分で出来ているんだな。これは使える気がする。


シンプルにウォルターの“水”でキュラソーの“アルコール”を中和する。

そうすれば弱くなるんではないだろうか。



あの二人にも協力をしてもらいたいが、どうしたものだろう。

俺は聞かれたら返事をする基本自分から声をかけたくはない。


「おい銀髪女」



こいつには気を使わなくていいな。


「ベルルです!」

「いい作戦があるんだが………を少佐達に伝てくれ」

「え、いいですけど?」


銀髪女は急いで報告に行った。

銀髪はシタッパなのでまず上等兵を通して少佐へ伝達していったようだ。


「少佐が脚下だから上等兵も無理だそうです!」

冷静になってみると、偉い奴が新入りの考えた作戦に乗るわけないよな。



戦いなんてまったくしたことないが、協力して貰えないなら一人でやるしかない。

なによりとっとと敵を片付けてノート取り返してライトへ帰りたいんだ。



まず俺はウォルターをキュラソーのいる場まで誘導。

そこでウォルターになんらかの大ダメージを与え、液状化したそれをキュラソーに浴びさせる。



一石二鳥を狙っただけでキュラソーは水で倒せるだろうしウォルターを倒せる保証もない。

うまくいく根拠はないが、ただの水よりも化け物には化け物で対処したほうが効果がありそうだ。

その結果論から導きだした誰でも考え付くような拙いものだ。


だからといって他に方法もないようだ。ならやるしかない。

―――――――――



空陸はウォルターを背後に引き連れ、キュラソーの浮遊している場所へ向かう。「……あいつまさか一人で?」


三メートルのそれはすぐに空陸をおいつめた。


「クーリクさんあぶない!」


ウォルターが太い腕のような形に変形し、地を叩いた。

空陸は咄嗟にそれを避ける。


「……」


そしてそのまま体勢を立て直し、再度走る。


「よし……後は攻撃を――――」


空陸はハッとした。ウォルターを爆発させるには大砲が必要だった。

それを失念し、誘導を優先したのである。


しかしそれは必然であり不可抗力あった。一人で大砲を運びながら素早く走るウォルターの誘導など不可能だからだ。


空陸はこの場離れ、大砲を取りにいくことを考え走る。


だが背後から右横へ、キュラソーの触手が延びた。


空陸が反射的に体を左側に避けると、槍の形に変化したウォルターが浮き上がり、空陸に落下しようとしている。


「くそ……」

スーは無駄とも知れていたが、撃った。



「さすがにあれはまずいわ!!レーザー波動砲!!」

デリアがランチャーを連写しるも、ウォルターにはあたらず。

キュラソーに妨害された。


(俺はこれで死ぬのか、まだなにもやれていないのに)


後悔した空陸は死を覚悟した。目を閉じ母や妹の姿を浮かべる。



「いやああああああ!」


―――――ベルルの悲鳴があがる。



(なんだ。体が熱い)


すると、空陸の体から光が発せられ、強い爆風が上がる。

その衝撃でウォルターの体は霧状に吹き飛んだ。


ウォルターの水質をあびたキュラソーは浮遊の力をなくし、地に落下した。


「……いったい何がおきたの?」

「さあ……?」

信じられない光景を目の当たりにした兵達はざわつく。


======


「ほう……あれが伝説の“救世主〈メサイァ〉”を継ぐ者か―――」

「まだ力を自在には使えぬようですわ」


「くくく……であれば、大した驚異にはならぬ。極限まで奴を目覚めさせろ」

「御意」


――――――――――




「よくやったわおまえたち」

「うわー少佐が笑ってるなんて珍しい」

「あんなのを見せられちゃ、認めざるを得ないでしょ」


「クーリクさんすごいです!」

「いや、なにがなんだか……。というかその呼び方やめろ」


だが敵は倒したんだ、やっと家に帰れる。



「オレの名前はテッソ=スーだ。よろしくな新入り、いや期待のエース」

「私はロンダ=デロッザ・デリアよ」


「よろしくお願いします……いや敵も倒したし俺は帰りますよ」

「いや、敵はまだいるんですよ」


「は?」

「レフトを倒さない限り侵略は終らない。お前をライトには返さないってこった」


「いや俺は帰るし…絶対帰る……」



「端麗なる容姿、明晰なる頭脳、忌まわしきそれでいて愛しき我が力。全てを持ちながらも脆弱な人間の世においては誓約により」


「やめろおおおお!!」


【4章:兄妹の確執・ぱんつくったことある?】



とある屋敷―――――にて。


「リース、リースはいるか!?」

「はい、ロイド様」

「ついに彼が現れたようだが、どうだ。奴は使えそうか?」

「ええ、不思議な力が目覚め、敵を一瞬にして消し飛ばしておりました」

「ふむ……ならば期待通りか。暫く様子をみよう」

「引き続き偵察に行って参ります」

-------


俺は昨日初陣を終えて、爽快感と同時に帰宅できないことの寂しさを覚えた。


今ごろ母と妹は行方不明の俺を探したり捜索願いを―――――――


「なあ、俺が留守の間やばいことになってるんじゃないか?」

「はははっ大丈夫だ。この世界の流れはライトやレフトとは別軸になってて、一ヶ月から1年程度ならまあ問題ない」


テッソが説明してくれた。

ふと気になったが、この世界の奴等は地球人<ライト>とは違い。

別の宇宙があることを受け入れているのだろうか。


「な……じゃなかったあの上等へ」

「クーリクさん」「その呼び方やめろ。」

たずねようとしていたら、ベルルがニマニマとこちらを見ていた。


「キビキビ働いてクーリク」

「まあ頑張れクーリク」

ロンダとテッソにまでひやかされた。


「で、どうしたんだよ」

どうせつまらない話だろう。軽く聞き流すことにしよう。


「やっぱりご迷惑でしたか?」

ベルルはうつむいている。


「とつぜんなんだ……?」

「私が連れてきてしまったから貴方は戦うことに……ごめんなさい」

申し訳なさそうに言う。


「……今更謝られても、どの道お前じゃない誰かが連れてきてそうだがな」

「あ……」


「なんで俺が選ばれたかはしらないが、上の命令にしたがっただけで、別にお前が悪いわけじゃないだろ」

「……ソラリクさん!」


その呼び方、雰囲気台無しじゃねえか。


カツり”靴音が耳についた。気配なくその場に一人の女性が現れた。


紫の長い髪、頭にカチューシャ。衣服は黒のロングスカートにエプロン。つーかメイドだ。


「アンタは……リース=エッグか」

「あら久しぶりね。こんなとこでなにしてるのよ」

どこぞのメイドはロンダやテッソと知り合いのようだ。


「彼を偵察せよと、坊っちゃまより仰せつかって参りました」

「……あの馬鹿」


ロンダが何か呟いた気がしたが、聞き取れなかった。この三人は一体どういう関係なんだ。


「馬鹿とは失礼だなロンダ」

ドアが開く。金髪の男が爽やかに現れた。


「なんのご用ですデリア大佐」

あの男ロンダと同じデリアという名字か、髪だけでなく雰囲気もよく似た兄妹だ―――。


ベルルやテッソがため息をついてあきれている。

テッソはともかくベルルがこんなに落ち着いているのは珍しい。



「兄にたいして他人行儀な態度はやめないか、傷つくだろう?」

妹がいるのでそれはなんとなくわかる。


「ヒソ……デリア少尉と大佐は昔からああなんです」



なるほど、昔からこうならベルルが冷静なのも合点がいく。


「やあ、私はロイド=デロッザデリア、聞いた通りプラネター軍の大佐だ」

「はい……お、僕は」

いかにも人気者といった雰囲気で苦手なタイプだ。こういう誰にでも優しそうやつに限って裏じゃ気弱デブとか眼鏡君カツアゲしてんだよ。


「そんなにかしこまらなくてもいいよ。

君のことは彼女、リースから聞いた」

彼女はこいつのメイドか。さすがリア充オーラを持った奴は違うな。


「は、はあ……」


「君は僕の部隊入ってはどうだろうと思ってね」

「……!?」


俺は別にどこにいても目的は変わらない。ただ少尉より大佐のほうが偉いなら、ロンダのことを考えると逆らわないほうがいいよな。正直こいつ、あまり得意じゃないが。


「じゃ……」

「待ってください!」

「……?」


「彼はいくら初戦で力を見せたといってもまだまだ未熟な新人です。兄上のエリート部隊にはふさわしくありません!」

ロンダの言葉にベルルとテッソは口をつぐみながらもうなずいた。


「ならこうしよう。私と手合わせをして、一撃を入れられたら君は第一部隊に入る。どうだい?」


どうでもいいのにわざわざ戦わないといけないのかよ。めんどくさ、一瞬で負けよう。


“ビー”“ビー”急に緊急アラートが鳴る。


「敵か……今日はエルタノルタか、それとも―――――」


ロイドは嬉々として部屋を出た。リースもそれを追う。


「あいつなんかに獲物を渡すもんですか……私たちもいくわよ!」

「了解!」


駆けつけた先にいたのは、藍髪の女と黒髪の青年だった。


「シンシア=キルドゴッドよ」

「弟のラクトで~す」


――――殺気を感じる。


こいつらはおそらく、敵方の人間だろう。


テッソは真っ先にフード男に殴りかかるが、軽々と避けられる。


続いてロンダがフード男に飛蹴る。やつはそれを右腕で受け止めた。


やつが攻撃を回避するのは容易いはず。なぜ受けたんだろうか?


「ふう……白か……」

「黒よ!」


なんの話をしているんだこいつらは。


【幕間:便利なハイテクに宇宙を創り変えた】


「この宇宙にある星は中世ヨーロッパのような町並みに近未来のアイテムにハイテクで超クールなんです!」

「ふーん。どのへんがハイテクなんだよ?」


「まず着替えはボタンを押すだけで一瞬でできます。食事も好きなときにボタンを押すだけで好きなものが一瞬で出てきます」


「うえーいドリアだああああ!すげええぇー!

……いや、そんなのたいしたことないな」

「後は全エリアが気温が一定に保たれていて、寒暖差アレルギーがおきません」

「……そういえば寒くないし暑くない」


「後は人類~植物の培養方を変えたので花粉も虫もいません

これは偉大なる全属性魔法使いラウル=クラールなんとかさんが命じたという伝説が……」

「カに刺されなくてすむ。鼻をかまなくてすむ……なんて便利なんだ」

「どうですか~この星に永住したくなりませんか~?」

――


「この世界ってなんなんだ、あとはなんで争いがおきたんだ?」

「ええと、まず西暦1000万光年の地球から、46億年前の宇宙にタイムスリップした方が世界を根本から作り変えて、いまになっています。争いが起きた理由はまだわかっています」


「なるほど、だからファンタジー世界にハイテク要素が入ってるんだな」


「実は宇宙は見えない糸結ばれていて、他の宇宙でなにかあるとここに影響され、ここで起きたことが他の宇宙に影響を与えます」



【5章:レフトの赤はラボ】


「遊びは終わりよ」


ロンダとテッソはシンシアの起こした強風になすすべなく飛ばされた。


「少尉!」


ベルルが二人を呼ぶが、危ないので後ろに下がらせた。


「貴方がライトの……」


シンシアはオレを見て、一瞬目を大きく開く。


「センターの奴等、案外大したことないんだね」


ラクトがやれやれ、両手を上げ飄々とした笑みを見せた。


二人はつまらないと言わんばかりの雰囲気だ。


「偵察も済んだわ」

「雑魚にはこいつで十分だよね~」


奴等はこの場にエイリアンの種を残して去る。


「くっ……」


ロンダ、テッソはいまいましげに起き上がる。

俺は二人が弱いのではなく、あの風を起こしたやつの力が強かっただけだと察した。


「まずはこのエイリアンをなんとかしなくては」

「少尉、このエイリアンの名は―――?」


「解らないわ、新種かしら」

「まずは分析が必要ってことか……」


「ドクターB<バラ>、いる?」


ロンダ達がラボへ入る。


「いることにはいるが、なんの用だい?」


目新しいピンク髪をした白衣の職員がふてぶてしく出迎えていた。

この人なんかうちの母の若い時の写真に似てるがまあどうでもいいか。


「新種と思わしき生命体をとらえたわ」


ロンダがガラス瓶を左右にぷらぷら振る。


「なに新種だと……早く寄越すんだ!」


バラとやらの見た目は若く、中性的な顔をしているからどちらかわからなかったが声は男だ。


「さあ出て行くんだ。結果が判り次第、連絡はいれる」


バラの意識は獲物のことでいっぱいらしい。典型的な研究者といったところか。


「はいはい行くわよアンタたち」

「へーい」

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