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チャットルーム  作者: 橋之下野良
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合羽橋道具街(1)

 鮎川は、恭子と二人で昼ご飯を買って部屋に戻ると、田中美雪は、出掛ける時と同じようにノートPCを観ていた。

二人が戻ると、なにやら鮎川のほうに視線を向けて、にやにやと笑みを浮かべていたのが、鮎川にはどうも気になった。


 そう思ったのはつかの間で、また、恭子と田中美雪は二人でお昼を食べながら、ノートPCを観ながらあれやこれやと、物色しているようではあった。

鮎川は、そんな二人を見ては、どこか他人事のようにカーペットを選ぶ二人の事を眺めながら、黙々と買ってきた弁当を一人食べていた。


「次長、これにしましょう。値段も手ごろですし、部屋の家具とのバランスも良いと思いますよ。」


そう、恭子が言って、PCの画面を鮎川のほうへ、向けて来たのだ。

鮎川は、言われるがままにそのカーぺットを注文するのであった。

この恭子にかかったら、上司の鮎川とてかなわない事を、先日から悟ってもいたのだ。

恭子は、早速、注文フォームを記入すると最後の代金決済だけを鮎川が行って注文は無事にされたのだった。


 鮎川は、やっとこれで、その日の鮎川の一通りの目的は達したので、これでゆっくりできると、胸をなでおろし昼食を摂っていたその時、また、恭子が思いもしない事を言い出した。


「次長、午後から、合羽橋の道具街に行きましょう!」


「...??」


鮎川は、その恭子の言葉に困惑したのだが、恭子は更に続けて言ってきた。


「私も、美雪も行ってみたいと思っていたし、次長もまだ調理器具や食器などが、ぜんぜん無いではないですか!一緒に行って買い揃えましょう。」


 確かに恭子の言う通りではあるのだが、鮎川は、少しずつ買い揃えようと考えていたので、恭子の言うように、すぐに全部をまとめて買い揃えようなどとは考えてもいなかったのである。

 しかし、先日からの恭子の押しの強さからして、鮎川には恭子への抵抗は無駄だと感じたので、素直に従う事にしたのだ。


「わかりました。じゃ、井上さんと田中さんで、その辺の道具類と食器をお二人で見立ててくれると、おれとしても助かるから、お願いしますね。」


 鮎川がそう言うと恭子は満面の笑みで、田中美雪と二人で、キッチンへと行き、何やらいろいろとメモを取りながら、はしゃぎ回っていた。

鮎川は、そんな二人を眺めて、何をそんなに楽しいのかと不思議にさえ思えて仕方が無かったのだ。


(おれからしたら、こんな事を他人に頼まれて買い物するなんて、金を貰っても引き受けたいとは思わないのに...何がそんなに楽しいのだろう?)


鮎川には、そうとしか思えなかったのだった。


 合羽橋道具街は、鮎川の部屋から歩ってもさほどの距離ではないのだが、購入する荷物の事も考えて、恭子の車で行く事にした。


 合羽橋道具街は、一本の道路に調理道具や食器など様々な食に関連した道具類を販売する問屋や商店が軒を連ねた一角なのである。

プロの料理人が使うようなものまで、何でも揃えられている文字通りの道具街なのである。


 東京の下町にはそう言った問屋街の街が数多く点在している。

 仏壇街だったり、おもちゃを扱う問屋街だったり、布地を扱う問屋街だったり、それぞれで今もそういった街が点在しているのだ。こう言ったところも、下町の良さでもあるのだ。


 さて、余談はさておき、恭子の車で合羽橋道具街近くのコインパーキングへ移動して行ったのだ。ものの数分で着いてしまう距離ではあるのだが...


 現地に到着すると、恭子と田中美雪は、かなりのハイテンションでそれぞれの店を見て回っていた。

プロが使うものまで揃っているのであるから、一般のホームセンターなどでは比較にならないほどに、何でも揃っているのである。

 おそらくは、この通りを真剣に全部見て回ろうと考えたら、一日掛けても観て回る事はできないかもれない。

鮎川は、今更ながらはしゃいでいる二人を観て、とんでもないところに連れてきてしまったと後悔する気持ちも出てきたのだ。


(これは、大変な買い物になるかもしれない。夕方まで掛かるぞ!…)


鮎川は、そう思うと、うんざりとした気分になっていた。

そう思った鮎川は、あることを思いついて、恭子へと話してみた。


「井上さん、いちいちおれに聞かないでよいから、井上さん達で、見繕って買い物をしてもらえるかな?...おれは、その買った物の荷物運びをするから、おれの財布を井上さんに預けておくので、そこから支払いはしてくれるかな?」


鮎川は、これならいちいち呼ばれて相談されないで済むので良いアイデアだと思ったのだ。


「次長が、それで良いのであれば、私達で見繕って買い物はしますよ。いいんですか?...」


鮎川は、しめたと思った。こっちのほうが、はるかに楽だと思ったのだ。


「そうしてください。じゃ、財布は渡しておきますね...はい、これ...」


「じゃ、そうさせていただきますね。」


 そこから、恭子と田中美雪があちこちを買い物をして、その買ったものは鮎川が持って運ぶというように、買い物は続けられ、最初は調理器具を中心に、何を買っているのかも気にする事も無く、鮎川はひたすら運んで行った。


 途中で何度か、持ちきれなくなり、その都度、恭子の車へ運ぶ事を鮎川が何度も行って、その間も恭子と田中美雪は、ひたすら楽しそうに買い物を続けていた。


 食器を、買い揃える段に成ってくると、その買い物にどうも変な違和感を鮎川は覚えてきた。

中身の食器は新聞紙で包装されていいるので見ることができなかったのだが、どうも買う量が多いように思われたのだ。


(何もいわないと決めたから、まあ、任せるしかないけど、ずいぶんと食器の量が多いように思うのだが?...いまさら、言い出しても面倒なだけだし、任せるしかあるまい...)


鮎川は、そう思いつつひたすら恭子たちの買い物をした荷物を運んで行くのであった。

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