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チャットルーム  作者: 橋之下野良
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ネットサーフィンと2ショットチャット

 井上恭子と家具センターで偶然会ってしまった日の翌日からは、前の週に購入していたテレビ・洗濯機・冷蔵庫・エアコンそれぞれが、順に届いたり、設置工事に来たりと、鮎川は部屋を空ける事ができなかった。


 計画的に転居した訳ではない鮎川にとっては、転居しての2週間あまりは、非常に不便な生活を強いられていたのだ。


 普通の転居であれば、このような事は無いのだろうが、ダンボールが積まれていただけの倉庫のような部屋も、徐々にではあるが人並みに文化的な生活ができるかのように、ひとつまたひとつと、次々に家電類などが届いていったのである。


 何より、鮎川が一番うれしかったのは、ネット回線の接続工事であろう。

もともと、鮎川は、テレビはほとんど見ない男でも有った。

仕事で、帰りが不規則な事もあったが、あまりドラマやバラエティーなども観たりはしないのだ。

その代わり、自分の好きなときに情報を好きなだけ観る事のできるインターネットは、まめに観てはいたのだ。

 だから、テレビなどよりもネット回線工事は、待ち望んでいたものなのであった。


 幸いにも、連休の2日目の午前中には、回線工事の業者が来たので、他の家電類の配送を待つ間は、ネットサーフィンで暇をつぶす事ができたのだ。


 物が無い、ただ広いリビングで、テーブルも無く、荷解きしていない段ボール箱を机にして、中年の大男がネットサーフィンをしているのである...


 なんとも、滑稽な姿であるのだが...


 しかし、さすがに、1日・2日と昼間から夜まで、いろいろ閲覧していくと、次第に普通のサイトだけでは、だんだん飽きても来てしまってた。

鮎川は、多少いかがわしいサイトも、観たりしてしまったりもしていた。


 そんな鮎川の目に、あるサイトのバナーが目に入ってきたのだ。


(ツーショットチャットルーム?!...)


鮎川は、何の気なしに、そのチャットルームサイトを開いてみた。

チャットルームサイトを開いてみると、そこは成人向けのチャットルームで18歳以下がが制限されているものであった。

地域・ジャンルと多岐に渡って、種別されていてルーム待機者がかなりの人たちで溢れていた。

そのひとつひとつのメッセージを読んでみると、赤裸々にきわどい内容のメッセージが殆んどで、読み進めて行く鮎川も、驚きながら、観ていってしまったのだ。


(ここは、アダルトチャットサイトではないのか?)


少しいろいろと、観ていたのだが、鮎川には理解ができなかった。


(バーチャルの世界で、誰かもわからない女性と話したりして面白いのだろうか?...なんとも、生産性のない会話なのだろう!...)


鮎川には、そう思えてしまったのだ。


 そんな事を、考えながら観たいたそのとき、インターフォンが鳴りエアコン取り付け業者が来たので、ノートPCをシャットダウンして、工事の対応に追われた。

そうこうしている内に、チャットルームサイトのこともいつの間にか忘れて行こうとしていた。


 工事が終わり業者も帰ると、もう既に夕方になっていた。

今日の訪問者の予定は、もう無いので少し早いが、鮎川は散歩がてら夕飯を食べに行く事にした。

 隅田川沿いをぶらぶらと歩き、足を少し伸ばして浅草方面に行こうと駒形橋を渡っていると、ちょうど橋の下を水上バスが東京湾方面に過ぎ去って行こうとしていた。


(あれって、竹芝桟橋とか、お台場とかに行くのだったかな?...使いようによっては便利かもしれないし、船なんてそうそう乗らないから、今度暇な時にでも乗ってみようかな?...)


鮎川は、そんな事を考えながら立ち止まって、川を行く水上バスを眺めていた。


 橋を渡って、しばらくぶらぶら歩いたのだが、匂いに釣られたのか天丼が食べたいと思ったので一軒の蕎麦屋に入った。

江戸前なだけに穴子のてんぷらが丼からはみ出んばかりに乗っていて、ボリュームも有りなかなか美味しい天丼であった。


 帰りは、コンビニで、朝食など買いあさり、自分の部屋へと帰って行った。

部屋に帰ると、相変わらず暇を持て余してしまう。

寝るには、少々どころか、早すぎるのである。


(思っていた以上に、独りの生活は持て余してしまうのだな...)


鮎川は、そう考えると、ため息を吐くように、またノートPCを立ち上げてしまうのだった。

ふと鮎川は、昼間に少しだけ観た2ショットチャットルームを思い出し、また、覗いてみる事にしてみた。

いろいろ、観て行くと、このチャットルームは、チャットの会話を覗く事ができる事が解り、鮎川は会話の内容も覗いて行った。


 会話の内容は、予想していた通りに男女の赤裸々な内容のものが殆んどのようであった。


(まあ、こんなものだろう!...しょせんは、匿名でのバーチャルな世界なのだから...)


そう考えながら、いろいろあちこちと会話を覗いていったのだが、鮎川は、ある事にも気か付いたのだ。


(これって、考えようによっては、匿名で本人が特定されない訳だから、現実の生活では人には話せない話もできるし、逆に相手の本音の話も聞く事ができるのではないだろうか?...)


 そう考えた鮎川は、妙にこのチャットルームに興味を持ってしまい、自分ではやらないものの、深夜の寝る時間まで、他人の話を覗いていたのである。


 この日を境に、徐々に鮎川はチャットルームの住人となって行き、そして、その住人に翻弄されて行く日々の始まりとなるのであった...

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