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チャットルーム  作者: 橋之下野良
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ある妻が観たもの

 その日も、恵理子は、仕事を終えて自宅のマンションに帰宅すると、急いで着替えをして、夕食の準備に追われた。

夫の帰宅は、いつも午後9時過ぎになる。

しかし、恵理子が仕事を終えて帰宅するのも、午後7時をまわってしまうので、とにかく、帰宅後の恵理子は忙しい。


夕食の準備と衣類の洗濯...とにかく帰宅後の夫の帰るまでのこの時間は、慌しい時間でもあるのだ。


 ときには、商店街の惣菜店で買ってきたもので、夕飯を済ませてしまうこともあるのだが、それでも、主婦業と仕事を両立させるのは、恵理子にとっても大変な労力でもあったのだ。


 夕飯の支度を取り敢えず終えると、恵理子はソファーに腰を下ろし、夫の帰宅までの時間に一息入れることにした。


(ふー...もう少し、うちの旦那さんも、協力してくれれば良いのだけど...あの人は何もできないから、言っても無駄なのよね...)


そう...恵理子の夫の博之は、家事はする気もないが、全くできない男でもあった。

結婚してみて、それがわかった恵理子は、納得できない部分も有り不満もあったが、半ばそのことに対しては諦めてもいた。


言うだけ無駄だと...


そんな事を考えながら、くつろいでいた恵理子は、リビングテーブルの上に夫と共有で使っているノートPCが置きっ放しになっていることに気が付いた。


(パソコンが出しっぱなしじゃない...しようがないわね...)


 恵理子はノートPCを棚に片そうとしたが、よく見ると電源が完全には落ちておらず、待機状態になっていることに気が付いた。

しかたがないので、電源を落としシャットダウンさせるために、ノートPCを開けてみる事にした。

ノートPCを開けてみると、インターネット接続されたままの状態でノートPCが閉じられているようであった。


(昨夜、旦那が遅くまで何かしていたみたいだけど、ネットを観ていたのね...何を観ていたのかしら?...)


 恵理子は、そう思うと、夫が晩くまで何を観ていたのかが気になり、ネット接続の履歴を観てみることにした。

夫が、自分の寝た後で隠れてどんなサイトを観ていたのかが気になったのだ。


 閲覧履歴を開いて、深夜の時間のものを開いてみる2ショットチャットルームと云うインターネットサイトが表示された。


(2ショットチャットルーム?...私の寝た後で、晩くまで、そんなものを旦那はしていたのかしら?...)


恵理子は、興味深くそのチャットルームを、しばらくの時間観ていた。


 恵理子が食い入るようにそのサイトをしばらく観ていると、夫からの帰宅を知らせるメールが入ってきた。

恵理子はノートPCの電源を落とし棚に片付けると、再び夕飯の準備をする為にキッチンへと行き取り掛かっていった。


 しばらくすると、インターフォーンとともに玄関が開いて、夫が帰宅した事が解ったので、恵理子は玄関先まで行って、夫を迎え入れた。


「あなた、お帰りなさい...」


「恵理子、ただいま...」


「あなた!、パソコンが出しっぱなしだったわよ。」


「ああ、そうか、悪かったね...」


夫の博之は、恵理子にカバンを渡し、部屋着に着替える為に寝室へと向かって行った。

恵理子もまた夫の後について行った。


恵理子は、翌日の事を思い出して確認するように、着替えをする夫に、また、話しかけた。


「それと、明日ですけど、前にも話したように、会社の仲の良い女の子達と女子会が在るから、帰りは少し遅くなります...あなたも、途中で食事を済ませてきてくださいね。」


「そうか、この前、言っていた女子会って、明日だったか?...本当に、女性だけの飲み会なのかい?」


「そうですよ、女性が、私を含めて4・5人だから、心配しないでくださいね。」


「わかったよ、でも、週末だからといって、あまり遅くはなるなよ!」


 そう...恵理子にとっては、この博之という夫は、とにかく嫉妬深い夫であると感じていたのだ。

 結婚して、もう4年になるが、この夫は、恵理子が会社の同僚や友人とのそう云った付き合いでも、いつも心配でしかたがないと感じているようだったのだ。


 それもしかたのない事でもあったのだが...


 恵理子は、派手さはないが、バランスの取れて顔立ちで、周りの誰が見ても美人と云われるくらいの黒髪清楚系な美しい女性なのだ。

結婚しているとはいえ、当の本人に全くその気がなくても、友人と街を歩けば、男性に声を掛けられるのは、必ず恵理子のほうだった。


夫も、それが分かっているだけに、恵理子の外出には気が気ではない思いをしているのである。

恵理子は、そんな夫が少々窮屈にも感じてはいたが、そんな夫のことを理解もしていたのである。


「大丈夫よ、女の子だけだし、二件目に飲みに行くなんて、あり得ないから...」


「そうか?...ちゃんと電話は通じるようにしておけよ。」


「わかりましたよ、そんなに心配しないでも大丈夫ですから。」


恵理子はそう言うと笑顔で、夕食の支度をする為に寝室を後にして行った。


 恵理子は夕飯の料理をテーブルの上に配膳していた。

配膳しながら、恵理子は夫の帰宅する前の先程まで観ていたチャットルームの事を、夫の博之に聞こうと一瞬だけ考えたが、聞くことはしなかった。


どうして、聞かなかったのかは、その時の恵理子自身にも解らなった。


恵理子自身も、その時は無意識の内に、気付かない理由が有ったのだった。

それは、恵理子自身が、後日、ある行動をすることになるのである。


恵理子もこの時は考えてもいないのだろうが...

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