ここから
私は23歳。名前は名乗れない。名乗りたくないわけではないが、なんとなく嫌なのだ。
私はかろうじて高校こそ卒業はできたが、推薦入試で入った大学はわずか数か月で辞めてしまった。
なぜ辞めたのかというと、お金がなかったからだ。貧乏一家から大学に行くなど不可能だったのだ。それでもどうしても進みたいというと、卒業したら普通の会社にちゃんと就職するという条件付きながらも、両親からの許可が出た。
しかし今考えればその条件などどう考えてもクリアできる内容ではなかった。
私の進んだ大学はいわゆる底辺大学である。名前を書けばだれでも入れるような大学に進んで、そこからまともな就職にありつけるなんて到底ありえないのだ。
そのことも知らず意気揚々と通学に励むが、学内で見かける大学院生を見ると、私の心はだんだんと暗くなっていく。
暗い気持ちで受ける講義は全く頭に入ってこないのだ。それでは何のために大学に通っているのかと問われてしまうが、既に心がつらくなってきた証拠でもあったのだ。
そして私は大学1年の冬に中退することを決意した。
学務課に行き辞めたいということを言うと、貧乏人に用はないといった表情で書類を渡される。私はその書類の説明もろくに聞かず、早々にそこを出て行った。
翌日にはすべてを記入し提出したのだ。今思えば私は少し急ぎすぎていたのかもしれない。就職、生き方、交友関係や対人関係などすべての分野で限界が来ていたようだ。
そして私はそのまま定職に就くこともできず、フリーターと派遣の日々を送ることになった。