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09 聖女の祈り
聖女は祈る、心正しき勇者を思い。
「神様、どうぞ世界をお救いください。異世界より勇者を召喚してください。
ものすごく強くなくても構いません。心清らかで正しきものをお願いします。
浮気性はおやめください。魔王にまで手を出すような輩を救世の勇者と紹介できません。
知性は高くお願いします。俺様最強なんて素で言ってのけるような恥知らずはいりません。
それから…」
召喚陣の光は消える。
「それ、無理」
こうして人族最後の希望は潰えた。
しかし誰も、文句は言わなかった。
魔王も聖女の真摯な祈りに心打たれ、和平協定に調印したからであった。
そんな勇者の相手をするのは、とっても嫌だからである。
そう、別に異世界から勇者がやってこなくても、いやむしろやってこなければこそ世界は平和になるのであった。
(おしまい)