06 異世界転移
「うわー。また神様ロボット壊れちゃったよ」
「廃棄処分魂、最近質悪いもんね。いやまあ、質が悪いから廃棄処分になるんだけど」
「よし、多分これで大丈夫」
「うーん、一応チェック完了。多分問題なし」
「………………」
「………………」
「多分なのかよ」
「そっちこそ」
「いやだってねえ。もう何年このロボット使ってると思うの。壊れては修理しての騙し騙しなんだよ」
「こっちだって検査装置が古すぎるんだよ。一応問題なしって出ているけど、検査装置自体の検査ができてないんだから」
「ちょっとちょっと。それ大丈夫なの。担当者は何やってるの」
「仕方ないんだよ。最近文明とか文化とかの進み具合が速すぎてさ。もう話が通じればいいや。廃棄処分に同意してくれればいいやって感じなんだよ」
「うわー、やだなそれ。って、次が来たよ」
「わわわ、急いで退場しなきゃ。腐った魂と接触したら、こっちまで堕天しちゃうよ」
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俺は…そうか、トラックに轢かれたんだ。
なんかあの世っぽいな。って、あれ神様じゃん。
やりー、俺勝ち組じゃん。
これこれこれ。これを待ってたんだよ。異世界転移ひゃっほうだぜ。
「あー、お主が間違って死んでしまった伊勢回転域防火?」
「おう、そうだぜ。っていうか、なんか発音おかしいな。ま、ミスって俺を殺しちまうような神様じゃー、仕方ねぇか。
早速俺の希望……」
「おー、いえー。まいっちんぐ。連れてってやんよ」
「は? 何言ってんの。っていうか、近い近い。ぐぇっ、抱きつくなって……
ちょ、マテ、やめ……アーッ!」
俺は異世界の扉をこじ開けられてしまった…。
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「うーわー、気持ち悪ー」
「映像切っておいて正解だったね。いや、声だけでも聞きたくなかったけど」
「どうしよう…。このあと、あれをメンテナンスしたくないよ。泣きたいよ」
「こっちだって同感だよ。というより、あれって耐久限界越えてるよね」
「………………」
「………………」
「越えてるね。仕方ないね」
「越えてるよね。だったら、いいよね。ポチッとな」
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異世界の波に翻弄されていた俺は、突然落下するのを感じた。
どんどんと落ちていく先に光が見える。どうやら今度は本当に、本当の異世界に転移するらしい。
光の中に飛び込み、やがて世界が形作られる。
そして人の気配が。
「おお、勇者さ・・・ま・・・? な、なんなんですかぁ、それーっ!!」
あ、俺の異世界をこじ開けたのも一緒に付いてきたんだ。
ははは、もういや、マジ死にたい。
つーか、早く俺を不敬罪で殺してくれ。
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「まったく、あなたがたはなんてことをしてくれたのです」
「「ごめんなさーい」」
「おかげでまだまだ収容能力のあった処分地が、勇者召喚を取りやめてしまったのですよ。
しかも禁呪指定にして。これではもう、あの地を使うことはできないでしょう」
「「ほんとうに、ごめんなさーい」」
「まったくもう。とはいえ、今回は仕方ないでしょう」
「「えっ?」」
「状況が状況です。あんなものが発生したら、とっさに捨ててしまっても非難はできないということです。
実際もし放置していたら、ここが汚染されていたのかもしれませんしね。
ですので、差し引きで帳消しということにします」
「「ありがとうございます!!」」
「次からはああいうふうにならないよう、案内機器も検査機器も更新を早めるそうです。
では、あなた方もがんばってくださいね」
「「はいっ、ありがとうございます。がんばります!!」」
こうして世界の平和と安全と清潔さは守られたのでした。
他の世界まではシリませんけどね。
(おしまい)