鬼
「おい、行くぞ」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
犬は下を向いている
猿は横を向いている
キジは上を向いている
「・・・おい、行こうよ」
「あの・・・、本当に行くんですか?」
犬が言う。
「・・・だっておじいさんとおばあさんに行くって言っちまったしさあ、みんな困ってんだってよ。」
「でも相手は鬼ですよ」
犬がまた言う。
「でも、きびだんごあげたら付いてくるってお前ら言っただろ」
「あれは・・・なぁ」
「ちょっとノリで言っちゃっただけだし・・」
キジが付け足す。
「・・えっ、来ないの?」
「いや、行くとか行かないとかじゃなくて・・なぁ」
「もう忘れましょう!
こんないい天気なんです、鬼なんていなかったんですよ。」
キジは空を見ている
「・・・」
桃太郎は一人歩いて行ってしまった。
「おい、行っちゃったよ」
「うん」
「お前らこれでいいのか?」
猿が初めて口を開いた。
「猿・・・」
「きびだんごのこと忘れた訳じゃねーだろ?」
「・・・」
「俺が謝ってくる」
そう言うと猿は走って行き桃太郎を呼び止めた。
「桃太郎さん」
「なんだよ猿」
「俺達どうかしてました、またお供させてください」
「猿・・・」
「だめですか?
「断る理由はないよ」
こうして一人と三匹は再び鬼ヶ島に向かうことになった。
そしてあと少しで鬼ヶ島という所までたどり着いたのである。
「今日はこの辺で休もう。俺、木を拾ってくるから」
「俺達も手伝います。」
拾った木を燃やし皆で火にあたっていると桃太郎が語り始めた。
「実はな俺も本当はびびってんだ」
「そうだったんですか」
犬が驚く。
「ああ、本当は俺だって行きたくないけどよ・・・
鬼、倒せるかな?」
「大丈夫ですよ、桃太郎さんがいますから」
「そうかな?」
「いざとなれば俺が見事に犬死にしてみせますよ」
犬が言う。
一同
「はっはっはっ」
「そろそろ寝るか?」
「いえ・・・」
「まだ起きてるのか?」
「俺達で明日の作戦を考えようと思って」
(ぐすっ、こいつら、泣かせるじゃねーか)
「そうか、なるべく早く寝ろよ」
「はい」
―――そして次の日の朝
蝉の鳴き声で目が覚めた桃太郎がふと辺りを見ると、もう三匹とも起きているのが分かった。
「早いな」
「いよいよですからね」
猿が覚悟を決めた顔で言う。
桃太郎はなんだか嬉しそうである。
それから小便を済まし身仕度を終え、大きな声で三匹に言った。
「よし準備はいいか?」
三匹
「おう」
「出発だ!」
三匹
「おう」
士気が俄然上がったところで一同は出発した。
緊張感のせいか心なしか歩くのも早くなる。
なので予定より早くに鬼ヶ島に着いた。
「恐ろしい所だな」
「そうですね」
一同がキョロキョロして島を見渡していると待っていたかのように鬼が現れた。
「死にに来たか」
「おい、用意はいいか?」
三匹
「はい」
桃太郎は隙をみている
「今だ!」
突然、猿が桃太郎めがけて飛び掛かった。
いや、桃太郎にというより桃太郎の腰につけた
きびだんごに。
「ウキャキャキキー、
散れ!!!」
三匹は風の様に去っていった。
おわり
誰かお便りください