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連続投稿になってしまい申し訳ない作品群

月に一度のホットケーキ

掲載日:2025/12/01


 私は料理が得意ではない

 亡き夫の資産が底をつくまで

 食事は専属のシェフに任せるつもりだ


 とはいえ月に一度は

 自ら台所に立ちホットケーキを作る


 とはいえ特別なものではなく

 市販のプレミックスを

 箱に記載されたレシピ通りの材料で丁重に作るだけ

 夫の母がそうしたように


 私は甘いものが苦手なので

 最後のひと手間、ラム酒を加え

 夫の遺影を前にホットケーキを食べるのだ


◇


 夫は資産家の息子だった

 彼の父は会社の創業者だったが

 彼の母が二代目を継いだ


 父親は厳格な人だったと聞くが

 母親は庶民的で息子に優しく

 ときおり家族にホットケーキを作って振舞った


 とはいえ特別なものではなく

 市販のプレミックスを

 箱に記載されたレシピ通りの材料で丁重に作るだけ

 今の私がそうするように


◇


 夫の会社は二度、経営危機に陥っている


 一度目は取引先の倒産による

 債権の焦げ付きで資金繰りが悪化

 心労に倒れた創業者の膨大な保険金が

 命と引き換えに会社を救ったのだ


 二度目は家族経営による杜撰な経理

 順調な時は表面化しなかったが

 景気が悪くなると資金繰りが悪化した


◇


 ある時私は用事があり自宅を離れたが

 忘れ物があり家に戻った

 そこには私をのぞく親族が集められ

 義母がホットケーキを振舞っている


 私は自分の身辺を調査した


 そうか

 そういうことか

 そういうことならば


 二度目の経営危機を救ったのは

 私が名義変更した

 多額の保険金だった

 私のいない親族の集まりで

 ひと手間かけた料理が振舞われてしまったらしい


◇


 私は会社を継がなかった

 元より経営というものに興味がない


 ただ、家族と見なされなくなったことが

 許せなかっただけなのだ


 だから私は月に一度

 好きでもないホットケーキを

 二度と味わえぬ夫を前にして堪能するのだ



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― 新着の感想 ―
私のいない親族の集まりで振舞われた「ひと手間かけた料理」が何とも剣呑ですね。 果たしてどのような「ひと手間」だったのか… こうなると創業者である夫の父の死因も、果たして単なる「心労」だったのだろうかと…
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