第59話 双子の誕生
いつもお読みいただき、ありがとうございます。
最弱職【掃除士】、実は世界最強でした 第59話をお届けします。
ついに待望の瞬間が!
翔太とエリーゼに、新しい命が誕生します。
お楽しみください!
次元浄化会議から三日後の夜明け前。
王都はまだ静かな眠りの中にあった。二つの月が西の空に傾き、もうすぐ朝日が昇ろうとしている時刻。
「んっ...」
エリーゼが小さく呻いた。
お腹の奥から、これまでとは違う強い痛みが波のように押し寄せてくる。前駆陣痛とは明らかに違う、本格的な痛み。
「翔太くん...」
隣で眠る夫の肩を、震える手で揺すった。
「翔太くん、始まったみたい」
その言葉に、翔太が飛び起きた。
「え?本当に?今?」
普段は冷静な彼も、この瞬間ばかりは慌てていた。
「大丈夫、落ち着いて」
痛みに耐えながらも、エリーゼは微笑もうとした。
「あなたが慌ててどうするの」
「そ、そうだね。すぐにグレイスを呼ぶ」
翔太は素早く着替えながら、使用人を呼んだ。
いよいよ、新しい命が生まれようとしていた。
◆
王宮医療棟への道のりは、いつもより長く感じられた。
夜明け前の静かな廊下を、翔太がエリーゼを支えながら歩く。時折、陣痛の波が訪れると、エリーゼは立ち止まって深呼吸を繰り返した。
「大丈夫?休む?」
「平気よ。でも...急ぎましょう」
医療棟では、既にグレイスと助産師たちが待機していた。前駆陣痛が始まってから、いつでも対応できるよう準備していたのだ。
「エリーゼ様、こちらへ」
グレイスが優しく導く。新婚のヴァルガスも心配そうに見守っていた。
「すぐに国王陛下たちにも連絡を」
「もう向かってますよ」
使用人の言葉通り、間もなく国王と王妃が駆けつけてきた。
「エリーゼ!」
王妃が娘の手を取る。
「母上...」
「大丈夫よ。私もあなたを産むときは大変だったけど、きっと大丈夫」
国王は落ち着かない様子で歩き回っている。
「じいじになる日が来た!ついに、ついにじいじに!」
興奮を隠せない国王に、王妃が苦笑した。
「あなた、落ち着いて。エリーゼの前では」
「そ、そうだな」
国王は深呼吸をして、エリーゼの頬に優しく手を当てた。
「頑張るんだぞ、エリーゼ。わしたちがついている」
「はい、父上」
◆
朝日が昇り始めた頃、本格的な陣痛が始まった。
分娩室の中で、エリーゼが必死に呼吸を整えている。翔太は彼女の手を握り締め、ずっと側にいた。
「一緒にいるから」
「うん...」
痛みの波が押し寄せる度に、エリーゼは翔太の手を強く握った。
その時、突然システムが勝手に反応し始めた。
《頑張れ!新しい命!》
《母は強し!》
空中に応援メッセージが浮かび上がる。
「こんな時まで...」
グレイスが苦笑するが、その表情は温かい。
「でも、システムも祝福してるのね」
エリーゼが痛みの合間に微笑んだ。
時間が経つにつれ、陣痛の間隔が短くなっていく。
「もうすぐですよ」
助産師が励ます。
「あと少し頑張って」
廊下では、仲間たちが心配そうに待っていた。
リクとミーナ、カールとレオ、ケンとアルテミス。皆がエリーゼを応援している。
「大丈夫かな...」
ミーナが不安そうに呟く。
「エリーゼは強い。きっと大丈夫だ」
リクが力強く言う。
◆
正午頃、ついにその瞬間が訪れた。
「頭が見えてきました!」
助産師の声に、室内の緊張が最高潮に達する。
「もう一息です!」
エリーゼが最後の力を振り絞る。
そして——
「おぎゃあああああ!」
元気な産声が響き渡った。
「男の子です!元気な男の子ですよ!」
グレイスが赤ちゃんを取り上げる。
小さな命が、力強く泣いている。その顔は、まるで翔太を小さくしたような顔立ちだった。
「翔太くんにそっくり...」
エリーゼが涙を浮かべながら微笑む。
「名前は?」
「ソウタ」
翔太が即座に答えた。
「創造の創と、太陽の太で、創太」
システムが再び反応する。
《新たな命の誕生を祝福!》
《ソウタ Lv.1【掃除士の子】》
「レベル1から始まるのか」
翔太が微笑む。
「当たり前でしょう」
エリーゼが優しく笑った。
しかし、まだ終わりではなかった。
「エリーゼ様、もう一人来ますよ!」
助産師の声に、皆が息を飲む。
「双子の二人目です!」
◆
ソウタの誕生から30分後。
再び陣痛が始まり、エリーゼが頑張っている。既に一人産んだ疲労があるが、彼女は必死に力を振り絞った。
「もう少しよ、エリーゼ」
王妃が娘を励ます。
「頑張って」
翔太もずっと手を握っている。その手から、温かい励ましが伝わってくる。
そして——
「おぎゃあああ!」
今度は少し高い声の産声が響いた。
「女の子です!可愛い女の子ですよ!」
グレイスが二人目の赤ちゃんを取り上げる。
この子はエリーゼに似た美しい瞳をしていた。まだ生まれたばかりなのに、その目は澄んでいて、まるで世界を見つめているかのよう。
「エリーゼに似てる...」
翔太が感動の涙を浮かべる。
「名前はヒカリ」
エリーゼが優しく言った。
「光...希望の光」
《双子の誕生、奇跡的!》
《ヒカリ Lv.1【聖女の子】》
システムの祝福が続く。
エリーゼは安堵の涙を流した。長い戦いが終わり、二つの新しい命が無事に生まれた。
「よく頑張ったね、エリーゼ」
翔太が妻の額にそっとキスをする。
「うん...私たち、親になったのね」
◆
分娩室の外では、歓声が上がっていた。
「双子だって!」
「男の子と女の子!」
リクとミーナが駆けつけてきた。
「おめでとう!無事でよかった」
「俺たちも頑張らないとな」
リクがミーナの肩を抱く。新婚の二人も、いずれは親になる日が来るだろう。
カールとレオも祝福に訪れた。
「未来の掃除士候補ですね!」
カールが嬉しそうに言う。
「でも、何になってもいいんだよ」
レオが優しく微笑む。
ケンとアルテミスも到着した。
「精霊たちも祝福してます」
アルテミスが手を掲げると、小さな光の精霊たちが舞い始めた。医療棟全体が、温かい光に包まれる。
グレイスとヴァルガスが診察を終えて出てきた。
「母子ともに健康です」
グレイスの言葉に、皆が安堵の息をつく。
「本当によかった」
リン・シャオから祝電も届いた。
『東の大陸からもお祝いを申し上げます。次回お会いする時を楽しみにしています』
守護精霊のルクスも飛んできて、小さな光の花を降らせた。
「新しい命の誕生を、精霊界も祝福しています」
◆
夕方になり、ようやく静けさが戻った病室。
翔太とエリーゼ、そして生まれたばかりの双子だけの時間。
エリーゼはベッドに横になり、両腕に一人ずつ赤ちゃんを抱いている。ソウタは元気に手足を動かし、ヒカリは静かに眠っていた。
「小さいね」
翔太が優しく赤ちゃんたちを見つめる。
「でも、こんなに愛おしいものはない」
「この子たちを守っていこう」
エリーゼが幸せそうに微笑む。
「世界じゃなくて、今度は家族を」
翔太がソウタの小さな手に指を差し出すと、赤ちゃんはぎゅっと握った。その小さな力に、翔太の心が温かくなる。
ヒカリが目を開けた。エリーゼを見つめて、まるで微笑んでいるような表情を見せる。
「笑った?」
「まだ早いでしょう」
でも二人には、確かに赤ちゃんたちが喜んでいるように見えた。
窓の外では、二つの太陽が西の空に沈んでいく。オレンジ色の光が、四人を優しく包み込む。
「新しい時代の始まりだ」
翔太が呟く。
「この子たちが生きる世界を、もっと素晴らしくしよう」
◆
その頃、王宮では祝賀の準備が進んでいた。
「王国に新たな希望が生まれた!」
国王が高らかに宣言する。
「双子の誕生を、国を挙げて祝おう!」
街中がお祝いムードに包まれ始めた。商店は祝賀セールを始め、酒場では乾杯の声が響く。
システムも勝手に花火を打ち上げ始めた。実体のない光の花火が、夜空を彩る。
《祝!双子誕生!》
《新時代の幕開け!》
「またやりすぎてる...」
翔太が苦笑するが、今日ばかりは許そうと思った。
病室に、小さなメッセージカードが届いた。
『おめでとう、もう一人の私』
翔太Bからのメッセージだった。
『次元を超えて、新しい命の誕生を祝福します。きっと素晴らしい子たちになるでしょう』
次元の向こうからも、祝福が届いている。
翔太は窓辺に立ち、夜空を見上げた。
「この子たちが大きくなる頃には、次元を超えた交流も当たり前になるかもしれない」
「掃除士として?」
エリーゼが冗談めかして言う。
「父親として」
翔太が振り返って微笑む。
「そして、一人の人間として」
新しい命の誕生は、新しい希望の始まり。
平和な世界で、家族として生きていく。
それが今の翔太とエリーゼの、一番の幸せだった。
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【ステータス】
翔太 Lv.200【創世の掃除士】
HP: 99999/99999
MP: 50000/50000
新たな命
ソウタ Lv.1【掃除士の子】
ヒカリ Lv.1【聖女の子】
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第59話、いかがでしたでしょうか?
双子のソウタとヒカリが無事誕生しました!
翔太に似た男の子と、エリーゼに似た女の子。
新しい世代の物語が始まりそうです。
次回はいよいよ最終話。
10年後の世界をお届けします。
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次回もお楽しみに!
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