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第15話 王都の危機

王都に突如発生した大規模な瘴気噴出。

浄化士ギルドの真価が問われる時が来た。


新メンバーを含む全員で王都へ急行!

レベル35~40の瘴気獣との死闘が始まる。

朝の訓練を終えた俺たちが、ギルドホールで昼食を取っていた時だった。


「翔太殿! 大変だ!」


ガルドが血相を変えて飛び込んできた。その手には、王都からの緊急伝令書が握られている。封蝋には王家の紋章――事態の深刻さを物語っていた。


「王都で、大規模な瘴気噴出が発生した」


ギルドホール全体が、一瞬にして静まり返った。王都での瘴気噴出――それは前代未聞の事態だ。瘴気は通常、人里離れたダンジョンや森の奥深くでしか発生しない。王都のような大都市で起こるなど、誰も想定していなかった。


ガルドが伝令書を読み上げる。その声は震えていた。


「商業区の地下から、突如として瘴気が噴出。すでに三つの区画が汚染され、避難民は千人を超える。王国騎士団が対処に当たっているが……」


彼は言葉を詰まらせた。


「騎士団だけでは、手に負えないとのことだ」


俺は立ち上がった。瘴気の濃い臭いが、かすかに風に乗って流れてくる気がした。王都はここから馬車で半日の距離だが、それほどまでに大規模な噴出なのか。


「浄化士ギルド、全員で向かいます」


俺の言葉に、新メンバーたちの顔に緊張が走った。ミーナが不安そうに手を組み、カールは古傷の膝を無意識にさする。シンの尻尾が、ぴんと立っている。


「で、でも翔太さん、俺たちはまだ……」


リクが恐る恐る口を開いた。確かに、彼らはまだ訓練を始めて一週間。実戦経験はほとんどない。


「大丈夫だ」


俺は仲間たちを見渡した。


「俺たちは、これまでずっと準備してきた。今こそ、その成果を見せる時だ」


グスタフが深く頷いた。


「翔太殿の言う通りです。人々が苦しんでいる時に、動かずして何が浄化士か」


その言葉に、全員の表情が引き締まった。


「出発は三十分後。装備を整えて、正門前に集合」



王都への道中、馬車の中は重い空気に包まれていた。


窓から見える景色が、次第に変わっていく。のどかな田園風景から、避難してくる人々の列へ。子供を抱えた母親、荷物を背負った老人、怪我をした者を支える若者たち。皆、恐怖と不安に顔を歪めていた。


「ひどい……」


アンナが息を呑んだ。避難民の数は、俺たちが進むにつれて増えていく。


「瘴気獣が……瘴気獣が街に!」


すれ違った避難民の一人が叫んでいた。その声は恐怖で震えている。


「瘴気獣が街に出たのか」


カールが険しい表情で呟いた。瘴気獣――瘴気に汚染された生物が変異したモンスター。通常のモンスターより遥かに凶暴で、倒すのも困難だ。


「王都に着いたら、まず状況を把握する」


俺は作戦を説明し始めた。


「瘴気の発生源を特定し、段階的に浄化していく。シン、君の鼻が頼りだ」


「任せて!」


シンが胸を張った。その瞳には、恐怖よりも使命感が宿っている。


「ミーナは理論的な分析を。カールは騎士団との連携を頼む」


「はい」「了解しました」


二人も力強く頷いた。


馬車が王都の門をくぐった瞬間、全員が息を呑んだ。


かつて壮麗を誇った白亜の街並みが、紫色の瘴気に覆われている。大理石の建物は黒ずみ、美しい噴水は汚泥と化していた。街路樹は枯れ果て、石畳は腐食し始めている。


そして何より――瘴気の濃度が異常だった。


「測定器の数値が……」


アンナが震え声で報告する。


「通常の百倍を超えています」


百倍。それは、古代遺跡の入口よりも濃い。俺でさえ、皮膚がぴりぴりと痛むほどの濃度だ。


「騎士団の本部はあちらです」


カールが指差した方向に、騎士たちが集結していた。だが、その数は予想より少ない。多くが既に負傷しているのか、疲労困憊の様子だった。


「掃除士殿!」


騎士団長のレオンハルトが駆け寄ってきた。かつて俺を見下していた彼も、今は藁にもすがる思いなのだろう。


「状況を教えてください」


「三時間前、商業区の地下倉庫から突然瘴気が噴出した。原因は不明だが……」


レオンハルトは苦渋の表情を浮かべた。


「人為的な破壊の痕跡がある」


「人為的?」


「地下には、古い時代の封印があったらしい。それが、何者かに破壊されたようだ」


封印の破壊。それは、偶然ではない。誰かが意図的に、王都を瘴気で汚染しようとしたのか。


「瘴気獣は?」


「少なくとも十体以上。レベル30から40の個体が確認されている」


騎士団の精鋭でも、レベル40の瘴気獣は手強い相手だ。しかも、複数となれば……。


その時、轟音と共に建物が崩れる音が響いた。


「また瘴気獣が!」


騎士の一人が叫ぶ。俺たちは音のした方向へ走った。



商業区の中心広場は、地獄絵図と化していた。


巨大な瘴気獣が三体、暴れ回っている。全長五メートルはある狼型の瘴気獣、触手を持つ異形の瘴気獣、そして鱗に覆われた竜型の瘴気獣。どれもレベル35以上の強敵だ。


「うわああ!」


逃げ遅れた市民が、瘴気獣に追い詰められていた。このままでは――。


「【浄化】!」


俺は全力で光を放った。浄化の光が瘴気獣を包み込み、その動きを一瞬止める。


「今だ、逃げろ!」


市民たちが必死に逃げていく。だが、瘴気獣はすぐに体勢を立て直した。浄化の光だけでは、レベル35以上の瘴気獣を倒すことはできない。


「全員、陣形を組め!」


俺は指示を飛ばした。


「リク、アンナ、グスタフは左翼! ミーナ、カール、シンは右翼! 挟み撃ちにする!」


「は、はい!」


皆が散開する。新メンバーたちは震えていたが、それでも持ち場についた。


「浄化の連携攻撃だ! 俺の合図で!」


俺は聖剣エクスカリバーを抜いた。刀身が眩い光を放つ。


「行くぞ!」


俺は狼型の瘴気獣に向かって突進した。聖剣が瘴気を切り裂き、獣の注意を引く。その隙に――


「今だ!」


「【浄化】!」


六つの浄化の光が、同時に瘴気獣を包んだ。個々の光は弱くとも、六つ合わされば相当な威力になる。


狼型の瘴気獣が苦悶の声を上げた。その体から瘴気が剥がれ落ちていく。


「もう一度!」


再び光が放たれる。今度は、俺も聖浄化を加えた。


「【聖浄化】!」


金色の光が瘴気獣を貫いた。狼型の瘴気獣は、光の粒子となって消滅した。


「や、やった……」


リクが安堵の息を漏らす。だが、まだ二体残っている。


触手の瘴気獣が、ミーナたちに襲いかかった。


「きゃあ!」


ミーナが転倒する。触手が彼女に迫る――その時。


「させるか!」


カールが身を挺して触手を受け止めた。元騎士の経験が、とっさの判断を可能にしたのだ。


「今のうちに!」


「こっちだよ、バケモノ!」


シンが瘴気獣の注意を引く。その俊敏な動きで、触手をかわしていく。


「シン君、危ない!」


アンナが援護の浄化を放つ。光が触手を焼き、瘴気獣の動きが鈍る。


「全員で囲め!」


俺の指示で、全員が触手の瘴気獣を包囲した。そして――


「一斉浄化!」


七つの光が同時に放たれる。触手の瘴気獣は、断末魔を上げて消滅した。


残るは竜型の瘴気獣。だが、これが最も手強い。レベル40、しかも飛行能力を持っている。


「散開しろ!」


竜型が瘴気のブレスを吐いた。紫色の炎が地面を焼く。


「このままじゃ……」


グスタフが苦渋の表情を浮かべる。飛ばれては、浄化の光が届かない。


その時、俺の中で何かが目覚めた。聖浄化の、更なる力。


「皆、俺に力を貸してくれ」


俺は両手を天に掲げた。


「全員の浄化の力を、俺に集中させる」


「え?」


「信じてくれ」


仲間たちが頷いた。六つの光が、俺に向かって放たれる。その光を、俺は聖浄化と融合させた。


「【聖浄化・極光】!」


巨大な光の柱が、天を貫いた。竜型の瘴気獣が、その光に飲み込まれる。


レベル40の瘴気獣が、跡形もなく消滅した。


広場に、静寂が戻った。



「す、すごい……」


誰かが呟いた声で、俺たちは我に返った。


周りを見ると、いつの間にか多くの市民と騎士団が集まっていた。皆、呆然と俺たちを見つめている。


「瘴気獣を……倒した」


「浄化士ギルドが……」


「本当に、瘴気を浄化できるんだ」


感嘆と驚きの声が上がる。だが、これで終わりではない。


「シン、瘴気の発生源はどこだ?」


「こっち! すごく濃い瘴気の臭いがする!」


シンが地下への階段を指差した。商業区の地下倉庫への入口だ。


「レオンハルト殿、上の瘴気は俺たちが浄化します。騎士団は市民の避難誘導を」


「し、しかし……」


「瘴気の浄化は、俺たちの仕事です」


俺の言葉に、レオンハルトは深く頷いた。


「……分かった。頼む」


俺たちは地下への階段を降りた。一歩進むごとに、瘴気の濃度が増していく。


地下倉庫は、完全に瘴気に侵されていた。そして、その中心に――


「あれは……」


巨大な魔法陣が描かれていた。その中央には、砕かれた石版。恐らく、これが古代の封印だったのだろう。


「意図的に破壊されてる」


ミーナが魔法陣を調べながら言った。


「しかも、かなり高度な術式。これを行えるのは、相当な魔術師だけです」


誰が、何の目的で。疑問は尽きないが、今は瘴気を止めることが先決だ。


「封印は破壊されても、瘴気の噴出は止められる」


俺は魔法陣の中心に立った。


「全員で、最大出力の浄化を」


仲間たちが俺の周りに集まる。皆、限界まで力を振り絞る覚悟を決めた表情だ。


「行くぞ」


「「「【浄化】!」」」


七つの光が、魔法陣を包み込んだ。瘴気が激しく抵抗する。まるで意思を持っているかのように、光を押し返そうとする。


「負けるな!」


俺は更に力を込めた。聖浄化の力を、限界まで解放する。


「【聖浄化・完全解放】!」


金色の光が爆発的に広がった。地下倉庫全体が、光に包まれる。


瘴気が悲鳴を上げるように消えていく。魔法陣が崩壊し、瘴気の噴出が止まった。


「はぁ……はぁ……」


全員が膝をついた。魔力を使い果たし、立っているのもやっとだ。


だが、やり遂げた。王都の瘴気を、浄化したのだ。



地上に戻ると、歓声が俺たちを迎えた。


瘴気が晴れた王都に、太陽の光が戻っていた。汚染された建物も、少しずつ元の色を取り戻し始めている。


「ありがとう!」


「浄化士ギルド万歳!」


市民たちが、口々に感謝の言葉を投げかけてくる。その中に、見覚えのある顔があった。


「翔太殿!」


馬車から降りてきたのは、エリーゼ王女だった。護衛を従えているが、その表情は安堵に満ちている。


「エリーゼ様」


「聞きました。王都を救ってくださったそうですね」


彼女の瞳に、涙が光っていた。


「私も、また呪いに苦しんでいた頃を思い出して……でも、翔太殿がいてくださって、本当に良かった」


「俺一人の力じゃありません」


俺は仲間たちを示した。


「浄化士ギルドの皆がいたからこそ、できたことです」


エリーゼは、一人一人に感謝の言葉をかけた。新メンバーたちは、王女に直接礼を言われて、感激で震えている。


「父王が、皆様にお会いしたいとのことです」


エリーゼが微笑んだ。


「是非、王城へ」



王城の謁見の間は、いつ見ても壮麗だった。


玉座に座る国王アルフレッドは、威厳に満ちた表情で俺たちを見下ろしている。だが、その目には温かい光が宿っていた。


「浄化士ギルド代表、佐藤翔太」


俺は深く頭を下げた。


「この度は、王都を救っていただき、感謝の言葉もない」


国王が立ち上がった。そして――王が臣下に頭を下げるという、前代未聞の行動に出た。


「陛下!」


周囲がざわめく中、国王は深々と頭を下げた。


「民を救ってくれたこと、心より感謝する」


俺は慌てて声を上げた。


「お顔をお上げください、陛下。俺たちは、当然のことをしたまでです」


国王が顔を上げ、微笑んだ。


「謙虚だな。だが、その功績は正当に評価させてもらう」


彼は玉座に戻り、宣言した。


「浄化士ギルドを、王国公認のギルドとして認定する。また、王都にギルドハウスを提供し、年間活動資金として金貨一万枚を支給する」


破格の待遇だった。これで、浄化士ギルドは正式に認められた存在となる。


「ありがとうございます」


俺は改めて礼を述べた。


「しかし、陛下。今回の瘴気噴出は、自然発生ではありません」


国王の表情が険しくなった。


「詳しく聞かせてもらおう」


俺は、地下で見た魔法陣と、破壊された封印について報告した。誰かが意図的に、王都を混乱させようとした可能性が高い。


「調査を進める必要があります」


「承知した。騎士団と協力して、犯人を必ず見つけ出す」


国王は決意を込めて言った。


謁見が終わり、俺たちが退出しようとした時、エリーゼが呼び止めた。


「翔太殿、また会えますか?」


「もちろんです」


俺は微笑んだ。


「王都にギルドハウスができれば、いつでも」


エリーゼの頬が、薄く赤らんだ。


「楽しみにしています」



王城を後にした俺たちは、冒険者ギルドへと向かった。


ガルドが、満面の笑みで迎えてくれた。


「聞きましたぞ! 王都を救った英雄たちよ!」


ギルドホールにいた冒険者たちも、拍手で俺たちを迎えた。もう、浄化士ギルドを馬鹿にする者はいない。


「これが、浄化士ギルドの力か」


声の主を見ると、ケンジが立っていた。ユウキとミカも一緒だ。


「王都にいたのか」


「ああ。瘴気獣と戦ったが……」


ケンジは悔しそうに拳を握りしめた。


「俺たちには、瘴気を浄化することはできなかった」


レベル的には、ケンジたちの方が上だ。だが、瘴気に対しては、浄化の力がなければ対処できない。


「いつか……いつか必ず、お前を超えてやる」


ケンジはそう言い残して立ち去った。相変わらずだが、以前のような見下した態度ではない。ライバルとして、認め始めているのかもしれない。


「さあ、祝杯を上げよう!」


ガルドの音頭で、ささやかな祝賀会が始まった。


新メンバーたちも、すっかり打ち解けている。リクとシンが、瘴気獣との戦いを身振り手振りで再現している。ミーナとアンナが、魔法陣の解析について熱く語り合っている。カールとグスタフは、静かに酒を酌み交わしていた。


「翔太」


グスタフが近づいてきた。


「今日で、浄化士ギルドは本物になった。君のおかげだ」


「皆のおかげです」


俺は仲間たちを見渡した。


「これからも、よろしくお願いします」


「こちらこそ」


グスタフが深く頷いた。


夜が更けても、祝賀会は続いた。王都の危機を乗り越えた達成感と、これからへの期待が、皆の胸に満ちている。


だが、俺の心には小さな不安があった。


誰が、何の目的で封印を破壊したのか。今回の事件は、もっと大きな脅威の前触れかもしれない。


窓の外を見ると、星空が広がっていた。平和に見える夜空の向こうに、どんな危機が潜んでいるのか。


それでも、俺たちは前に進む。


浄化士ギルドの仲間と共に、この世界を瘴気から守るために。


━━━━━━━━━━━━━━━

【翔太】

 職業:掃除士

 レベル:54

 HP:1,140 / 1,140

 MP:1,680 / 1,680

 

 スキル:

 ・浄化 Lv.13

 ・聖浄化 Lv.2(UP!)

 ・浄化領域展開 Lv.3

 ・聖浄化・極光(新スキル)

 ・聖浄化・完全解放(新スキル)

 ・鑑定 Lv.5

 ・収納 Lv.5

 ・剣術 Lv.4

━━━━━━━━━━━━━━━


━━━━━━━━━━━━━━━

【浄化士ギルド・メンバー】

 

 リク(従者)Lv.10(UP!)

 アンナ(家政術師)Lv.11(UP!)

 グスタフ(施設管理士)Lv.15(UP!)

 ミーナ(元素魔術師)Lv.18(UP!)

 カール(元騎士)Lv.23(UP!)

 シン(獣人族)Lv.9(UP!)

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━━━━━━━━━━━━━━━

【獲得称号】

 ・王都の救世主

 ・瘴気獣討伐者

 ・王国公認ギルドマスター

━━━━━━━━━━━━━━━

新スキル「聖浄化・極光」が覚醒しました!

全員の浄化の力を集約する、まさに浄化士ギルドならではの必殺技です。


王国公認ギルドとして認められ、ついにギルドハウスも獲得。

年間活動資金一万枚という破格の待遇も!


しかし、封印を破壊した黒幕の存在が気になります。

誰が、何の目的で……?


次回は新たな拠点での活動が始まります!

お楽しみに!

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