第九話
次に目を惹かれ手に取ったのは、ひとつの童話だった。
なんだか“読んで欲しい”と、本に語りかけられているようで、不思議な感覚だった。
タイトルは「人狼のいない村」。
この本には人狼ゲームの大きなヒントが隠されているような、そんな雰囲気を璃愛は本能で感じ取っていたのかもしれない────。
これは子供向けの絵本であったが、その内容はとても残酷だった。
大まかにまとめると、「人狼を探せ」と言われた村人たちが、正義感と恐怖から次々に“人狼のような者”を殺していき、最終的には誰も残らなかったというもの。
最後のページにはこうある。
“そこに狼はいなかった。でも、彼らは全員、オオカミになった”
と。
その残酷で悲惨な有様に、璃愛は心臓が止まりそうだった。
彼女の体は金縛りにあったとでも言うかのように、しばらくの間言うことを聞かなかった。
パタンっ と本を閉じる。
その動作が、自分の中の何かを強引に蓋で押さえ込んでいるように感じられた。
けれど、蓋はピッタリとは閉まらない。
何か衝撃を与えてしまえば、また直ぐに開いてしまいそうだった。
絵本を本棚へと戻そうとするが、手が止まる。
まるでその本が彼女の手に吸い付いているようで、本に触れていた指先に、チクッと痛みを感じた気がした。
自分でも分からない体の行動に、璃愛は顔をしかめる。
彼女は数秒の間、じっとその絵本の表紙を見つめた。




