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第八話
図書室の扉は、まるで彼女のことを待っていたとでも言うかのように、音もなく璃愛を迎え入れた。
そこはただの図書室とは違う、“記憶の保管庫”という肩書きを抱えたような空間であった。
目の前に広がるのは埃を被り、もう存在も忘れ去られてしまったような本たちが溢れかえった本棚の山。
特に理由もなく目を惹かれた図書室の最奥に、璃愛は黙りと足を運んだ。
不意に視界に抑えた本棚の隅に、異常に使用感のある書籍を見つける。
そこには「文明と獣性」「人間の内に潜む獣」「群衆心理と殺意」などのタイトルが並んでいた。
自然と璃愛の手はそれらに向かって伸びていき、彼女の手が触れる。
埃のざらついた質感を肌で感じた。
パラパラとページをめくり、本文に軽く目を通す。
不思議と印象に残ったのは、これらの三冊の本全てに書き記されていた一文
「獣とは姿ではなく、理性を失った心の有り様である」
というものだった。
それらは偶然のように思えたが、この図書室に置かれた本はジャンル次第では全ての本が、この一文で終止符を打たれていた。
それに加えその文章にのみ線が引かれ、自然と記憶に残るよう強調されている。
これほどの偶然が重なるはずがないと、璃愛は胸の内で確かな違和感を覚えた。




