第五話
「こちらになります。」
案内された部屋の扉をくぐりく抜けた先には、見知らぬ数名の男女がすでに集まっていた。
ソファに座った男は、タバコの煙で輪を作りながら、じっと璃愛を観察している。
壁に背中を預けて立つ女性は、スマホの画面を乱暴にスワイプしては、張り詰めた苛立ちが滲んでいた。
中央辺りに置かれたサイドテーブルのそばでは、また別の男が用意されていた洋菓子を嗜んでいる。
その隣で書を読む者もいた。
璃愛の視界に映ったのは計四人の人物。
それを脳が理解すると同時に、頭の奥に氷のように冷たく、言い知れない恐怖を纏った声が響いた。
『全員お集まりのようだな』
誰も口を開いていないのに、声が聞こえた。
いや、聞こえたのではない。
脳に直接、流し込まれた感覚だった。
『私はこのゲームの主催者だ。まあ、ゲームマスターとでも呼びたまえ』
ゲームマスターと名乗るこの声は、璃愛たちが戸惑うのも気にせず話を続けた。
『察している者もいるだろう。そう、これは“人狼ゲーム”。お前たちの中に紛れた“獣”を見つけ出すのだ。獣を見つけ出すのが先か、見つけ損なって喰われるのか……それはお前たち次第だ。ルールは簡単――信じるか、疑うか。ただ、それだけだ。それでは、始めよう。』
声が消えると、部屋は重たい沈黙に包まれた。
誰もが言葉を失い、互いの顔を探るように視線を交わす。
やがて、煙草の男が、ハッと笑った。
「……そういう方向性か。」
─────緊張は、まだほどけない。
璃愛は自身の手を、ギュッと力強く握りしめた。




