表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/7

第二話

誰かが道をひいている――そんな感覚があった。


封筒、手紙、地図。


すべてが“自分のため”に用意されていたように思えてならない。


理屈ではない。


ただ、あそこへ行かなければならないという確信があった。


夜の街を、足音を潜めるように歩く。


スマートフォンは、ポケットの中で沈黙したまま、気づけば電源さえ落ちていた。


外界との繋がりが、少しずつ途切れていく。


璃愛は、気づけば森の入口に立っていた。


木々はまるで、外の世界を拒むかのように枝をからませ、空を遮っていた。


空気はねっとりとしていて、肺に吸い込むたび重く沈む。


落ち葉が厚く積もった地面は、足音を吸い込んで返さなかった。


この森では、足跡を残すことさえ許されない。



「……ここ、だよね。」


ぼそっと呟いた彼女の目線の先には、存在しないはずの館があった。


屋根の端は崩れ、壁は黒ずんだ苔に覆われている。


それはまるで時間に取り残された遺物のように、森の奥でひっそりと佇んでいた。


あたかも、“この世”と“あの世”を繋ぐ門番のよう。


森の中に穿たれた傷口────それがこの館だった。


忘れ去られた記憶が物質化したような、埃と悪意の塊。


璃愛は、おぞましい光景を目撃した。


足がすくむ。


それでも、璃愛は引き返さなかった───


思わず、固唾を呑む。


鉄製の門は開いており、まるで彼女のことを待っていたようであった。


門をくぐり抜け、その先にある館の入口の前までたどり着く。


璃愛は館の扉に手を伸ばした。








8月24日 午後2時30分,第3話投稿予定



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ