表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/14

第十話

帰り道――行きにも通ったはずの図書室の廊下が、なぜか異様に長く、冷たく、音を吸い込むように静まり返っていた。


蛍光灯が一つ、カチッと音を立てて瞬いた。


その一瞬、壁に映る自分の影が笑ったように見えた。


背後で、ギシ……と床が軋む。


誰もいないはずの空間に、足音ではない何かの音が確かに混じっていた。


璃愛の喉の奥がひゅうっと細くなり、呼吸が浅くなる。


冷たい空気が肺の中に入り、体の奥で何かが這い回るような嫌な感覚を残していった。


階段を上がるたび、背後に視線を感じる。


振り返っても、誰もいない。


でも、確かに“そこ”に何かがいたような気配が、皮膚の裏に焼き付いて離れなかった。


──扉に手を伸ばした瞬間、ドアノブが指先を刺すように冷たく、まるで“それ”が璃愛を待っていたかのようだった。


自室に逃げ込むようにしてベッドに倒れ込む。


さっき図書室で読んだ本の一節が、脳裏にこびりついて離れない。


“獣とは姿ではなく、理性を失った心の有様である。”


“そこに狼はいなかった。でも、彼らは全員オオカミになった”


ページのインクが脳内でじわじわと染み出すように、璃愛の意識を侵してくる。


まぶたを閉じても、闇の中に浮かぶのはあの一文。



『 あなたもきっと、オオカミになる 』



──それは本の一文ではなかった。


読んだ覚えのない“声”だった。


耳元で、誰かが囁いたのだ。


璃愛は、その夜眠ることができなかった。


布団の下で誰かの指が動いたような、そんな気がしたから────。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ