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1話

「アスパラ食べる?」

「・・・はい?」

高校の入学式も終わり、妙に温かい春の日差しに少し汗ばみながら、帰路につく大海桐香(おおみきりか)に声をかけたのは、桐香の通う高校の教頭である、寺井昭久(てらいあきひさ)であった。

「・・・えーっと」

「そこのビニールハウスで採れたんだ。」

小さな農業用ハウスを指さしながら寺井教頭は言った。

そもそもここは学校の敷地内ではなく、敷地内を取り囲むフェンスの外側。

その外側には小道を挟んで小さな畑がいくつも広がっている。どうやらその中の一つが学校所有のものらしい。

ワイシャツの袖をまくり、麦わら帽子に軍手、首には手ぬぐいといういでたちで現れた彼は、教頭というより、趣味の家庭菜園を満喫している「休日のおじさん」にしか見えない。最も今日は休日でもなければ祝日でもないのだが・・・。

「君、新入生だよね?」

「はい、そうですけど・・・?」

寺井教頭は野菜の入った籠を小脇に抱えなおし、続ける。

「よかったら、部活見学していかない?去年、最後の部員が卒業しちゃってさ。今部員が誰もいないんだよ。」

「部活?えーと・・・」

桐香は考える。はたしてこの学校に家庭菜園の部活なんてあっただろうか・・・。

「何部ですか?」

「・・・」

「・・・先生?」

「・・・農業部、だったかな?」

「そんなのありましたっけ?」

桐香も実はあまりよく覚えていない。入学式の後のホームルームで配られた部活動紹介の冊子なんて軽くパラパラとめくっただけだったし、そもそもどこの部活にも入るつもりはなかった。

「・・・菜園部、だったかな?」

「・・・あの、私そろそろ・・・」

要領を得ない教頭の話に桐香が見切りをつけ、帰ろうとしたその時だった。

「すみません!自然科学部の畑ってここですかっ!?」

現れたのは栗毛の女子生徒。どうやら桐香と同じ新入生のようだ。

「あのっ、私、自然科学部に興味があって・・・部活見学を・・・」

女子生徒は教頭と桐香の顔を交互に見ながら問う。

「ここ、自然科学部ですよね?」

「自然科学部なんですか?」

「自然科学部だね。」

どうやら、寺井教頭の担当の部活は、自然科学部のようだ。


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