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うしろ

作者: 日常茶番

「1人でいる時うしろに気配を感じて振り向いてみたら結局誰もいなかった時ってあるじゃん。そういう時ってだいたい上にいるんだって… 」


 今話しているのが同じオカルトサークルの新也だ。サークルといってもほとんど幽霊部員だ。オカルトだけに。いつもは心霊動画やホラー映画を観たりする程度なのだが、夏が近づいてきたという事で気合いが入っているみたいだ。


「今年はザ・オカルトサークルって感じな事やってみようぜ。なんか良いアイデアないかな〜」


 わざとらしく腕を組んで首を傾げた。僕はそこまで乗り気じゃなかったので適当に相づちをした。


「あ!そうだ。心霊スポット行ってみようぜ!廃墟とか病院とかさ。」


 急に大声を出したと思ったらパソコンですぐに調べ始めた。相当気合いが入ってるみたいだ。どうやら掲示板や書き込みを読み漁っているみたいだ。僕も一応一緒に調べてみた。


「どうせならガチでヤバそうなところ行ってみようぜ。ついでに動画を撮ってネットにもあげようぜ。」


 「いいんじゃないん。少し面白そうじゃん」


 僕もだんだんと面白くなってきた。


「お!こことかどうよ。絶対呪われる廃病院だって。調べてみた感じマジでヤバそうだぜ。」


 新也が良さそうな場所を見つけたようだ。どうやらその場所は昔、精神異常がある患者が看護師5名、患者13名をナイフで殺害したのち自分の首を切って自殺したという病院だ。しかも、面白半分で訪れた者は必ず何かしらの不幸にあうという事で有名らしい。


「じゃあここで決定な。カメラは俺が持ってくるからお前は懐中電灯持ってきてくれ。あ、悪いんだけど車の運転お願い。俺ペーパードライバーなんだよ」


「わかったよ。しょうがないやつだなぁ。」


「そしたら今週の土曜の夜行こうぜ。お前もバイト空いてるだろ。」


 そして土曜日に行くことになった。

 

 ーー当日。


 深夜12時。僕と新也は車に乗り出発した。ここから車で1時間半といったところか。


「いやぁ〜ドキドキするなぁ。幽霊がいたら動画を撮って晒してやろう。きっと大バズりするぞ。」


 当初の目的とズレている気がするが、新也はとても張り切っている。僕はなんだか嫌な予感がした。


 しばらく車を走らせていると噂の病院に続く一本道まで来た。手入れがされていないためか、辺りは木で生い茂っていてなんだか不気味な感じだ。


「なんだかそれっぽくなってきたな。早く出てこないかな。幽霊ちゃん。」


 相変わらず新也は能天気な奴だ。車を走らせていると奥にそれらしき建物が見えてきた。大きさ自体はそれほどではないが、存在感が凄い。窓はほとんど割れ、植物がまるで建物を飲み込んでいるかのようだ。


「それじゃあ心霊スポット探索行くとしますか。」


 僕たちは車から降り、廃病院に入って行った。


 ギギギ。入り口の扉はかなり腐っている。ライトで照らしてみると中は汚れているが思っていたほどではない。逆に綺麗すぎて気味が悪い。まるで数ヶ月前まで使われていたみたいだ。僕たちは撮影をしながら何部屋か回って行った。


 「うーん。意外となんもねぇな。おーい幽霊。いたらなんか合図してくれー。」


 さすがの僕も少し怖いのに新也は怖くないのか。それともバカなだけなのか。


 それからしばらく歩いていると当然新也が悲鳴をあげた。


「うわぁぁぁッッ!!」


「どうしたんだ!?」


「これ見てみろよ!」


 新也が指刺す方にライトを当てると血が飛び散っていた。いや、問題はそこじゃない。この血、明らかに新しい。なにかまずい予感がする。


 ふたりは辺りを警戒した。すると入り口の方から足音が聞こえた。


 ズチャ…ズチャ…


 あまりの恐怖に後ろを振り向けない。ふたりは過呼吸になっていた。何かが近づいてくる。助けて。僕は必死で心の底からそう願った。すると、足音は聞こえなくなった。


「新也。せーので後ろ向くぞ。いいな。せーーのッ」


 振り向くとうしろには何もいなかった。気のせいだったのか。いや、確実に何かがいた。その後僕たちは車まで戻り、すぐに廃病院を後にした。


 後日カメラを確認しても何も写っていなかった。あれは何だったのだろう。


 あれから数ヶ月が経った日、僕は大学から帰ってきてシャワーを浴びていた。すると。


 ズチャ…ズチャ…


 一瞬で背筋が凍った。あの日の恐怖が体の芯から込み上げてくる。


(なんで…!?なんでここに。)


 気のせいではない。確実に何かが近づいてきている。足が震えて動けない。もう逃げ場はない。絶望的だ。


 シャワー室のドア越しに何か黒い影らしき者が来ているのが分かる。


 ギィー。ドアを開けられた。恐怖で全く動かない体。何とか横目で正体を確認しようとする。よく見えないが、明らかに人間ではない影がそこに立っている。


 ああ、まずい。背後まで来た。生命の危機を感じた僕は全身の力を使って振り向いた。


 するとそこには誰もいなかった。


「なんだ。やっぱり気のせいだったのか。」


 

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― 新着の感想 ―
[良い点] 霊圧の消えた新也、ドアまで開けられた上での最後の言葉 はっきりとしない違和感の残る良い感じの物語で御座いました
[一言] たまたま見つけて読みました。 僕がそれからどうなったのか、色々と想像が膨らみます。 (個人的な想像ですが、僕の頭に血が落ちてきて……みたいな)
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