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「さて、みんなが帰ってくるまでもうちょっとありますね。フェリクス様、お部屋の模様替えなんかしちゃいます?」

「模様替え?」


王子様は自分で模様替えなんかした事ないか。


「はい。この邸って、私が住みだしてから少し改装してるんですよ。不動産屋さんには、小さくてもお金をかけたいい物件だと言われたんですけど、時代がかったゴージャス感が私にはちょっと怖くて。フェリクス様、壁を見て何か感じませんか?」

「それだ!昨日からずっと、何か違和感があると考えていたのだ。どうも私が知っている壁とは違うようだ」


フェリクス様はスッキリとした顔になった。


「私の国の壁紙というものです。保護と装飾を兼ねて壁に貼り付ける専用の紙なんです。壁は邸中これに替えてあります。明るくていい感じでしょ?」

「そうだな。明るい白色が清潔感があってよいと思う」

「ありがとうございます♪私も気に入ってます♪それとですね、カーテンも替えたんですよ。この部屋と、私の部屋とラーシュ君の部屋だけなんですけど」


元々ダイニングキッチンにカーテンはなかった。

裏庭に面した北側にしか窓はなくて、人目から目隠しする必要も、強い日差しを遮る必要もなかったからかもしれない。

私は、あったら可愛いだろうな~♪とカフェカーテンをつけてみた。予想通り可愛い小窓に変身して満足している♪


「小窓にカフェカーテン、可愛いでしょ?」

「そうだな。悪くない」

「その言い方!」


笑ってしまったよ。“悪くない”なんて過少評価な言い方をしていても、表情が違うんだもん。


「カーテンってお部屋の表情がガラッと変わっちゃうアイテムですよ。そうだ!見比べてみてください!」


私はフェリクス様と二階に上がった。最初にフェリクス様の部屋を見て(元からついている重厚なカーテン)次に私の部屋を見せる。


「女性の部屋に入る訳には……」とか何とか言っていたけど、入り口から見せるだけよ。そう意識しなさんな。

ドアを開けると、光を通して綺麗な桜吹雪が目に飛び込んできた。どうだ♪


「ほぉ…」

「ね?いけてるでしょ?自分好みのものを揃えると、自分の部屋がもっと好きになりますよ。元からある、あの重厚なカーテンがいいならそのままでもいいですけど」

「いや、少し興味が湧いた。模様替えとは面白そうだな」

「面白いですよ。じゃあカタログをお見せします。ダイニングキッチンに戻りましょう」


階段を下りながらフェリクス様が質問してきた。


「さっきサクラコの部屋とラーシュの部屋のカーテンは替えたと言っていたが、ここにはあと二人いるだろう?その二人は替えぬのか?」

「クラウス君とエネちゃんはポーション代の借金があるんです。私は返してもらわなくてもいいんですけど、そういう訳にもいかないようで……。返済が終わったら提案してみようと思ってます」

「そうか」

「はい」


そんな会話をしつつダイニングキッチンに戻って、スマホのカーテン画面をフェリクス様に見せる。


「なんだこれは!小さい板の中に小さな絵がたくさん並んでいる!」


フェリクス様もラーシュ君たちと同じようにスマホ様を見て驚いたよ。色んなものをたくさん見ていると思われる王子様でも(後でそうでもない事がわかるけど)やっぱりこれは驚くか。


「こうすると次のページにいきますから、フェリクス様、気に入ったカーテンが見つかったら教えてください。ちなみにこれが私の選んだもので、こっちがラーシュ君の選んだものです」


私が指で画面をスライドさせると、フェリクス様はそれにも驚いた。その目は“これは何だ?!”といっている。


「これは私の国の魔法媒体みたいなもんですかね」


と、適当に言っておいた。




その後、スマホになれたフェリクス様は、カーテンと、ついでにカップもサクッと決めた。

それらを代引きでポチる。カーテンはフェリクス様のお支払い。カップは私の支払い(オーナープレゼント)


カーテンは鮮やかな黄色で、白いレースのカーテンには金糸がキラキラと輝いている。カップは白地に金色の光が描かれている。フェリクス様、上手い具合にレースのカーテンとお揃いみたいなものを見つけましたね!


「フェリクス様センスいいですね!どっちも太陽みたいなフェリクス様にピッタリです!」

「……そんな事を言われたのは初めてだ。 ……悪くない」


フェリクス様は驚いたような表情の後、笑顔になった。


ちょっとわかってきたぞ。フェリクス様の“悪くない”は、悪くないどころか“嬉しい”とかって事なんだと思う。この照れ屋さんめ!

いや、王族の言い回しみたいなもんなのか?


それから、二人でフェリクス様の部屋にカーテンを付け替えた。


「わぁ!思っていた以上に綺麗!」

「うむ、部屋の印象がずいぶん変わったな。サクラコのいった事がわかった」


夕方の強い日差しがカーテンを通してフェリクス様の部屋を金色に染め上げた。

神々しい系王子様にピッタリだわ♪




さて、そろそろ夕ご飯の準備をしましょうか♪


「フェリクス様は一人暮らしの練習をしたと言ってましたが、お料理はどんな感じですか?一緒に夕ご飯を作ってみましょう♪」

「あなどるなよ?それなりにできる筈だ」


ニヤリと強気に言ったフェリクス様は、言っただけの事があった。手際はいまいち不慣れな感じだけど、包丁使いはなかなかのものだった。


「フェリクス様、包丁使いが上手ですね!」

「剣の腕には自信がある。サイズが違っても刃物を扱う事は上手くいくようだ」


思わず褒めると、そんな風に返ってきた。

剣とな?剣といえば騎士の姿が頭に浮かぶ。フェリクス様は騎士ではなく王子様だけどね。いや、王子様じゃなくなったんだっけ?


「魔法が使えて(ラーシュ君たちの様な超絶美形はみんな魔法が使える。当然フェリクス様も使えるよね)剣も自信があるなんてすごいですね!」


感心して言うと、フェリクス様は包丁を動かす手を止めずサラリと言った。


「私の魔法は戦闘には使えぬのでな。剣の腕を磨いた」

「え?何の魔法ですか?」

「回復魔法だ。金色の瞳を持つ者は回復魔法の使い手なのだ」

「そうなんですか!」


新しい異世界事情を知ったわ!


「回復魔法って貴重なんじゃないですか?」


よくあるストーリーではそういう設定が多かったような。


「そうだな。だが戦えなければただの足手まといだ。戦力にならなければパーティーに呼ばれぬだろうし、ソロでは稼げぬだろう」

「世知辛い!」


本当ならやんごとなき王子様なのに、行く末の身の振り方を考えて備えているなんて!

私にとっては超絶美形、この世界的には忌避される程の見た目のせいで。


フェリクス様は王族から除籍したと言っていた。

王子様じゃなくなった()()()フェリクスは、これからラーシュ君たちと同じに加虐な人生を歩む事になるのかな……。


「そんな顔をするな。それより何を作っているのだ?」

「……ハンバーグです。ご存じですか?」

「いや、完成された物を見ればわかるかもしれぬが、名前だけ聞いてもよくわからぬ」

「そうですか。今日はフェリクス様がうちの仲間になったし、ちょっと特別感メニューです。目玉焼きのせおろし醤油と、目玉焼きのせチーズハンバーグの二種類作ってみましょう♪選べる楽しいメニューです♪」


ハンバーグはラーシュ君の好物だしね♪


「おぉ、何だかわからぬが美味そうだ」

「美味しいですよ~♪」


なんて話しながら作業を続けていく。

途中でラーシュ君やクラウス君やエネちゃんが帰って来たので、フェリクス様を紹介してみんなで一緒にご飯を作った。


クラウス君とエネちゃんはソワソワ落ち着かなさそうなのがちょっと気の毒だったけど、これから一緒に暮らしていくんだし、慣れてもらおうか!がんばれ♪




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