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32.5




◇◆ユリウス◇◆




「ユリウス、出かけるぞ。その少女を見てみたい」

「はい」


ここのところ、報告に上がってくる少女に興味を持っていたからな。殿下がこういい出すのは時間の問題だと思っていた。

少女の様子を見に行ってくださったお爺様の時間稼ぎも数日だったな。


殿下の供をして街に出かける。

今日は図書館ではなく商業者ギルドに行っていると報告があった。朝からずいぶん長い間留まっていると。

何故なのか?そういうところも殿下の興味を引いたのだろう。


商業者ギルドまで来ると、馬車を止めて少女が出てくるのを待つ。


「殿下、」

「わかっている。今日のところは見るだけだ」


それならよろしいのですが。

ローブ姿の殿下は馬車の外に出られない。王族に“ローブ者”が誕生したと知られてはならないのだ。除籍されたといっても、殿下はまだ離宮にお住まいだ。外を自由に出歩けるようになるのは、王宮から出られて一庶民となってからになる。


しかし、せっかく殿下が大人しくしてくれる筈だったのに、見るだけとはいかない状況になってしまった。

運命とは、動く時は突然で一気にいくものなのだと知る。


「ユリウス」

「はい」


建物から目当ての少女が出てきたと思ったら、その後をつける男たちがいる。見るからにあやしい男たちだ。

私は殿下に命じられ、少女の元に向かった。




「何の騒ぎだ?」


すでに事が起こったようで、少女と男たちは一触即発の状態だった。


ほぉ…。ローブ者が少女を庇うように男たちとの間に立っている。

ローブ者がこんな風に主張するなんて珍しい事があるものだ。


この少女のせいか?

その少女もローブ者の後ろでこぶしを握っている。少女の強い目の光に頼もしさは感じるが、男二人には無謀だろう。


小物臭漂う男たちを追いやって、さて……。

これからどうしたものだろう。


報告では読んでいたが、本当にローブ者と親しくしている少女に驚く。

まあそうはいっても、私も殿下にお仕えしているが。


もう少し様子を見てみたい。きっと殿下も見てみたいだろう。

私は二人を馬車に誘った。







◇◆フェリクス◇◆




少女の元にユリウスを向かわせてからしばし、二人の男が転がるように路地から出てきた。そのまま逃げ去っていく。そちらはどうでもよい。ユリウスと少女達はどうなっているのか。


馬車の窓、薄いカーテンごしに路地の方を見ていると、ユリウスがあの少女とローブ者を連れてこちらに歩いてくる。見るだけと思っていたのに対面できるとは。

私は楽しくなってきた。


ユリウスと少しのやり取りの後、サクラコは馬車に乗ろうとして、すでに乗っているローブ者()に気づいて一瞬動きを止めた。 


どうする? 


サクラコはすべてのローブ者に対応できるのか?何かしらの基準があって選んでいるのか?それから一番大きな謎、何故ローブ者を集っているのか?


そんな私の考えは、何事もなかったかのように馬車に乗り込んできたサクラコによって中断された。

「おじゃまします」と拍子抜けするような声音には、確かに邪気は感じられない。


その後のユリウスとのやり取りを聞いていて思う。

サクラコは本当にローブ者を厭っていない。純粋に、馬車に乗る“我ら”の心配をしているようだ。


サクラコがローブ者を集う目的はわからぬ。

しかし、そう悪いものではないように思うのは…… 

私の希望的観測だろうか?


世の理として、脈々と続いてきたローブ者への忌避。

望んでこう生まれた訳ではないのに、この姿に生まれてしまったがために、ただ生きて死ぬだけ。

そんな無意味な人生に、もしかしたらとサクラコは希望を灯した。


除籍した私には、王族としての権限はない。この先はただのローブ者だ。

サクラコは、私の希望になるか?いや、私たちのような者の希望になるのか。

他人任せは本意ではないが、私はサクラコに期待しているようだ。




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