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冒険者ギルドは商業者ギルドと同じ通りに建っていた。

あの時はあまり周りを気にしてなかったけど、というか、いきなり異世界転移なんてしちゃって、しかも美醜逆転世界とかね!いっぱいいっぱいで何かを気にする余裕なんてなかったよ!


通りの両サイドは同じような建物が並んでいるから、同じような業種の地区なのかもしれない。

同じような建物といっても、しっかり看板がかかっているから何屋さんかわかるけどね。


ラーシュ君に続いて、さっそく冒険者ギルドの建物に入ってみる。


「おぉ…」


中に入ると、多くの物語で描写されている通り、正面にはカウンター。

左に続くカウンターの奥には受付嬢さんたちが何人かいる。


右を見ると広い食堂のようになっている。

これまたよく描写されている、仕事終わりに一杯!の酒場だな。

朝だからかお客さんはいない。


冒険者のみなさんはもう仕事に向かったようで、カウンターがある辺りは思っていた程混んでいなかった。

……冒険者ね。


建物内や雰囲気なんかは、多くの物語で読んでいたイメージ通りだったんだけど、それと大きく違うのは、冒険者がお太りのブサメンさんばかりという事だ。

受付嬢さんたちもお太りの方が多い。やや普通さんからブサイクさん(失礼!)まで忙しそうに働いている。


私にはそう見えるこの人たちが、みんなイケメンや美人さんなのが納得できない。

脳内変換はきっと死ぬまでできないだろう。


当り前だけど、ブサイクさんだからといってどうという事もないよ。

そりゃびっくりするくらいなら普通に驚くし(態度には出さないようにするよ!)生理的にムリ!って人には近づかないようにするけどさ。


ブサイクよりムリなのは不潔な人だ。

あと、性格の悪い人ともお近づきになりたくない。


では冒険者登録をしようか! 

わ~い!やっぱワクワクするね!(単純)

だって冒険者だよ?そりゃテンション上がるでしょー!


いや、私は日本に帰る事を望んでいるけどね!

だけど気分を変えに来たんだし、せっかくだから満喫しようと思う!


「おはようございます。冒険者登録をお願いします」

「おはようございます。承ります。ではいくつかの質問にお答えください。文字は書けますか?書けないようでしたらこちらで代筆します」

「あ、書けます書けます」


私はやや普通さんに声をかけて、冒険者登録をした。

チュートリアル的な簡単な説明も聞いて、さっそく依頼を受けようとラーシュ君を探す。

アドバイスをもらうか、できたら初仕事は一緒に行って教えてもらえたら助かるんだけどな……。

あら、やっぱ頼っているなぁ、なんて思っていたら、


「ラーシュ君!」


ラーシュ君が床に倒れている!

側にはブサデブが…… まさか!


ラーシュ君は私の方を向いて、かすかに首を振った。

いやいやいや!!知らんぷりはできないでしょ!


「やめなさい!」


ブサデブがラーシュ君を足蹴にしようとしたので、大声で静止しながら走る。

あの重量じゃ、私がタックルしたってびくともしないでしょうけど、何もしないよりマシだ。


思った通り跳ね返ってこっちの方がよろけたけど、ラーシュ君を蹴ろうとしていた足は空を切った。


「……何だおまえ? 何すんだ」

「おまえに名のる名前はない!それよりおまえこそ何をする!」


私はラーシュ君を庇うように立つと、自分の三倍はあろうかというブサデブに言い放った。

ここに来るまでに一歩ずつ怒りが沸き上がっていた私はすでに臨戦態勢だ。


「見ない顔だな。わからないなら教えといてやる。こいつらは世の中の隅で這いつくばっているのがお似合いなんだ。こんな風に堂々と他人様の目に触れるところにいていい奴らじゃねーんだよ」


何言ってんだこいつ。


「じゃあ、彼らの魔法は当てにしないって事?調子いいんじゃない?存在は否定するのに、その力には頼っているなんてさ!」


ブサデブはグッと言い淀んで、負け惜しみのように吠えた。


「使ってやってるんだよ!そのくらいしか使い道がねーんだからな!」

「あやかってるの間違いじゃないの?だってラーシュ君たちの魔法がなかったら依頼を達成できないんでしょ!」

「このっ!」


怒りで赤くなったブサデブが手を振り上げた。

私は歯を食いしばる。この距離じゃ避けられない。


「そこまでだ。いい大人が子供相手に手を上げるんじゃねぇよ」


突然、ジブ〇映画の紅の〇さんのような渋い声が聞こえた。


声の方を見ると――― リアル〇の豚さんだった!


「ギルマス!だけどよ」

「俺が言った事が聞こえなかったのか?耳掃除してから出直しな」


ヒーローのように現れた、いかついブサメンさんはギルマスらしい。


「それからおまえ、建物内は魔法禁止だ」


ギルマスさんの視線の先を見ると、いつの間にかラーシュ君が立っていた。


「ラーシュ君!大丈夫?どこかケガしてない?痛いところは?」


ラーシュ君は見てわかる程震えていた。

あんな重量級に蹴られたんだから骨が折れてるのかもしれない!私だったら折れてるよ!


「すみません。サクラコさんは怪我をしてませんか?」


心配して聞いた私に、ラーシュ君も私の無事を尋ねてくる。

なに謝ってんの!自分の方が痛い思いをしてるのに私の心配なんてしなくていいよ!


「私は大丈夫だよ。殴られる前にギルマスさんが止めてくれたから!」


安心させようと、私は笑顔で言った。

それから、あっ!とギルマスさんに向き直る。


「ありがとうございました!おかげで助かりました!」


大きな声でお礼を言って頭を下げた。


「お嬢ちゃん、無謀な事はしないこった。下手したら死んでたぜ。あぁでもその前にここが崩れたか」


え?何でここが崩れるの?

疑問に思ったけど、尋ねる前にギルマスさんは建物内にいる人たちを見回して、よく通る渋いお声で()()()()をした。


「おまえらギルド内で騒ぎを起こすな。力が有り余ってるなら全員東の砂丘の魔獣狩りに行かせてもいいんだぜ?それとも北の湖の魔獣にするか?選ばせてやるが?」

「そんなのAランクの魔獣だろ!死ねってか!」

「俺らなんもしてねぇよ!おいガスト、どうしてくれんだよ!」

「とばっちりだ!ガストのせいで俺らまでひでぇ目にあわされるじゃねーか!」

「何いってんだよ!おまえらだっていつもは同じようなもんだろ!」


辺りはギャンギャンと騒ぎ立てる。


「うるせぇ」


それを一声で黙らせるドスの利いた低いお声。

ギルマスこっわ!


「魔獣狩りが嫌なら、さっさと受けた依頼を片付けてこい」

「「うっす!!」」


みなさんクモの子を散らすように建物から出て行った。

ラーシュ君を蹴ったあいつも出て行こうとして


「おい、ガスト」

「うっす!」

「子供に手を上げるな。次見たら、おまえらパーティー全員東の砂丘な」

「上げません!」

「「上げさせません!!」」


ラーシュ君を蹴ったブサデブ(とそのメンバー)は、這う這うの体で出て行った。


「こう見えて、俺は子供好きなんだ」


ギルマスさんは私に笑いかけた。


えっと……。

さっきから聞こえている“子供”って、もしかしなくても私の事ですよね?

いったい私はいくつに見えているんでしょうか?




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