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渡された鍵に書いてある番号の部屋に落ち着く。

ラーシュ君の部屋と同じ造りだ。ベッドと、机なのか物を置く台なのかってものがあるだけの狭い部屋。

窓があるから、それはよかった。


台の上にリュックを置く。あ~、解放感!


別にすごく重いもんじゃないけど、盗られたら困ると思ってずっと背負っていたんだよね。

ラーシュ君の部屋では下ろしてもよかったんだけど、まぁいっかと、そのままにしていたし。


お腹は空いてないけど、お風呂に入りたい。

やっぱないのかな~。宿のご主人は何も言ってなかったし。

さっきラーシュ君に聞けばよかった。今更聞きに行けないな。


「今何時だろ」


私はリュックからスマホを取り出した。

画面には22:55の表示。


わっ、もうこんな時間?いつもならそろそろ寝る支度を始める頃だ。

しょうがない、お風呂は諦めよう。でも明日はなんとか入りたい。


これ、どうしようかな……。


寝間着用のTシャツ短パンに着替えるか、何かあった時にすぐに逃げられるようにこのままで寝るか。


ちょっと考えて


「このままにしよう。お風呂に入ってないし」


そのままベッドに寝転がった。

リュックはベッドの上に置く。逃げる時にすぐ持てるようにね!

鍵はかけてあるけど、何もわからない異世界だ。

用心するに越したことはない。


寝転がりながらスマホを見る。

時計が動いているなら、通じてるって事だよね?


あ、この表示されている時間って、日本時間なのかな?この国時間なのかな?

わからないけど、とにかく通じてるか通じてないかが問題だ!

おなじみのYマークをタップすると


おおぉぉ!通じてる通じてる!! 

いつもの画面が現れた!


という事は!

私は通話の履歴からお母さんに電話をかけた。

今日行く事になってるのに連絡もなく行けてない。きっと心配しているだろう。


「……やっぱりか~」


スマホからは、電波の届かない場所とか電源が入ってないとかっていう、あのアナウンスが聞こえた。


それじゃあって、ダメ元でメールとかラインとか、その他SNSを色々試してみたけど全滅だった。


ツイッターとかインスタとか、見る事ができても書き込みは出来ない。

ニュースも読めるし検索もできる。ウェブ小説も読めたけど。


う~ん…… これは……


あっちの世界には触れられるけど、私がかかわる事はできないって事かな?

これ、どこまでがどうなんだろう?境界線がわからないよ!


最後にダメもとでオンラインショッピングを試してみる。

とりあえずメイク落としのシートがほしい。お風呂と歯磨きはガマンするけどメイクは落としたい。

それから水がほしい。喉が渇いた。


いつも使っているサイトで、メイク落としのシートとペットボトルの水をカートに……、入れられた! ポチれ……、た!


「おぉ!」


支払いの欄には、見慣れたクレジット払いやコンビニ払いや代金引換なんかの一番下に“ギルド口座引き落とし”という項目があった!


何これ!すごーい!スマホが異世界仕様になっちゃってるの?!


口座引き落としはすぐには確認できないな。

ここは……、代引きで!

代引きを選択して手続き完了。すると


「おおぉぉ!!」


目の前にメイク落としのシートと水が現れた。

それとカルトン。(お金のやり取りをする、あのプラスチック製のトレーね)


請求額をカルトンにのせると、現れた時と同じくスッと消える。


「これ、いったいどうなってるんだろう……?」


今は日本円で払ったけど、ギルド口座なんて文字が記されているんだ、こっちの世界のお金でも支払いできるのだろう。


それにしても色々あったなぁ。まったく現実感がないけど。めちゃくちゃ疲れた。


「とりあえず、寝るか……」


メイクを落として、水を飲んで、寝た。




翌朝。スマホの時間を見ると7:20。


周りを見る……


「夢じゃないのかな~。これほんとに異世界転移なんてしちゃったのかなぁ……」


眠る前にいた、ベッドと机だけの察風景な狭い部屋だ。

窓からは朝の光が差し込んでいる。


うん、日の光はなんだか元気になるね!

こんな状態なのにぐっすり眠れてしまった自分の図太さに笑っちゃうけど、朝食は8時までと聞いていたから食堂に行こうか。


その前に、洗面所ってないのかな……。

しょうがない、メイク落としのシートで顔をふいて洗顔の代わりにする。

歯も磨きたいけど、水はあっても吐き出すところがない。ガマンかぁ。

これ毎日これじゃイヤだな。違う宿ならもっと快適に過ごせるのかな……。


でもまぁ、とりあえずご飯だ。

私はパーカーを着ると、しっかりフードをかぶってドアを開けた。


「あれ?ラーシュ君。おはよう」

「お、おはよう、ございます……」


ドアの前にはラーシュ君がいた。


「なに?私に用?」

「え…、あの……。 あの……」

「ごめんラーシュ君、朝ご飯は食べた? まだなら一緒にどう?話は食べながらでいいかな。朝食は8時まででしょ?」

「はい!」


一緒に階段を下りると、食堂に人はいなかった。

すでに皆さん出勤されたのか、泊まり客は私たちだけなのか。


忘れてたけど、人目のある所では話しかけない方がいいって言われてたから、ちょうどよかったよ。


席に着くと、ご主人がお皿ののったトレーをふたつ持って来てくれた。


あ、ご主人がいたか。 ……ノーカンにしよう。


「おはようございます。いただきます」


ご主人はわずかに頷くと、トレーを置いて戻って行った。無口か!


「さあ食べよう!いただきます! で?ラーシュ君の用ってなに?」


ラーシュ君は相変わらず口ごもっている。

待つけど、私は食べるよ!


朝ご飯はパンとスープだけのあっさりしたものだ。

味は悪くない。だけどコクというか塩味が足りない。


ご飯は美味しいものが食べたい。

日本のホテルみたく、部屋にお風呂とトイレと洗面所が欲しい。

というかこの手の物語的に、すぐには元の世界には戻れないかもしれない。

ホテル暮らしじゃなくて部屋を借りた方がいいかもしれない。


できるなら快適に暮らしたい。色々買い揃えなくちゃだな。あぁ、着る物も一着しか持ってないし。

長期戦になるなら、日本に帰る方法を探しながら仕事もしなくちゃだし……。


手と口を動かしながら脳内で計画を立てていると


「何か、手伝える事があればと思いまして。 サ、クラコさんは、この国に慣れていないと聞いたので」


え? 視線を上げる。


食べながら考え事をしてたよ。

そういえばラーシュ君は何か言いかけてたんだっけ。


見るとラーシュ君、ご飯には手を付けていない。


「ありがたいけど、ラーシュ君仕事は?」

「いいんです。ギルドの仕事は決まっている訳ではないので」

「そうはいっても、今日の収入がなくなっちゃうんじゃない?」

「…………」


いや、そんな哀しそうな雰囲気を出されても。

しょうがないなぁ。確かに私は助けが必要だし。


「それじゃあラーシュ君の一日を買わせてよ。私はこの国の全部が不慣れだと思うから、色々教えてもらえたら助かる。だけどラーシュ君の時間を使ってもらうんだから、そこはちゃんと日当を払わせてよ。それでよかったらお願いします」

「……はい。こちらこそお願いします」


幸いお金ならもってるしね♪




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