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6.

「えっ……!?」


「…?」


 ティアの言葉にアリスは驚き、ベルタは何の事なのか分からずに困惑した。


「どうして…その事を?」


「…やはりそうなのですね、私も同じなんですよ。」


 ティアはそう言って微笑んだ。アリスは唖然としてティアを見つめた。


「あの…二人は何の会話をしているのですか?」


 話についてくる事ができないベルタに、ティアは笑った。


「ベルタ、貴方にもいつか話したいと思っていた話なの。アリスさんも居るのだから信じてくれるだろうし…。」


 そしてティアは時間が戻る前の…一度目の人生の話から、今現在に至るまでの話をしてくれた――。








     



 物心ついた時には、ティアは貧困層の平民であった。父親は居らず、ティアの母親はティアが8歳の時に亡くなった。毎日飢えを凌ぐのに必死で生活していたが、同じ境遇の仲間と共に何とか生き抜いていたある日、18歳の時に王族の使いの者から迎えが来て城に連れて行かれた。そして、ティアが王の娘であり、母親は前女王であったと聞かされたのだ。

 戸惑いながらも貧困な生活から抜け出せた事に安堵し、そして家族に会えた事で安心していたが、その事を快く思わなかったのが女王とその娘、ベラ王女だった。勉強もろくに学べなかった平民のティアは王女としての教育について行けず、嫌がらせを何度も受けた。女王とベラとは、血の繋がりはなくても義母と義姉妹となる関係であったので、仲良くしようと努力したが断られてしまった。王に相談しようとしても、王には猫かぶりをする女王達の言葉を信じられてしまい、何の解決も出来なかった。


 しかし、一つだけ救いだったのはベルタを含めた味方が存在していた事だった。ベルタはティアの専属の執事として現れて、ティアの力となってくれた。ティアのミスを庇ってくれたり、アドバイスをしてくれる数少ない味方であった。ベルタの他にもティアの侍女や、一部の使用人達はティアの味方をしてくれたのだった。


 だがある日、ベラ王女から二人きりで話をしたいと言われて、ベルタが居ない隙に指定された場所に会いに行くと、今まで嫌がらせしてしまった事への謝罪と、本当はティアと仲良くしたいのだがこのままでは王と血の繋がりがないベラは追い出されてしまうのだと言われたのだった。そして、ベラを追い出そうと計画している者の一人にベルタがいるのだと言われてしまった。

 信じられなかったが、初対面のティアに親切にする理由が他にあるのかと言われてしまい、ベラと仲良くなりたい、ベラが可哀想だと思ったティアは信じてしまった。その後、ベルタを遠ざけてしまい、王にお願いをして専属の執事から外して貰ったのだった。


 その数日後、女王とベラ王女にお茶会に呼び出されたティアは、紅茶に毒を仕込まれて殺されてしまった。すぐに死に至らずに、徐々に苦しむように調整されていたのか意識は長く保っていた。


「邪魔なのよ、貴女は。」


「平民として野垂れ死んでいれば良かったのに。」


 女王とベラからの言葉に傷付くも、毒の苦しさから何も言い返せないティア。


「…冥土の土産に教えてあげるわ、貴女の母親、前女王を追い出したのは私なのよ。邪魔だったから料理に妊娠しにくくなる抑制剤を仕込んでいたの……なのに追い出した時には妊娠していたなんてね。」


 にこやかに嘲笑う女王の言葉に頭が真っ白になる。


「安心してねティア、貴女を殺した犯人はベルタになって貰うから。あの執事ずっーと邪魔だったのよね。でも貴女がお馬鹿で助かったわ!

 これで私とお母様は何不自由なく、不快な思いをせずに今後も生活できるわ!」


 楽しそうに笑うベラの言葉に、怒りが込み上げてきた。王と血の繋がりがなく、怯えた様子で相談してきたベラを可愛そうだと思い、今までの嫌がらせは忘れて仲良くなりたいと思った。けれどもうそんな感情は残っておらず、憎しみだけがあった。

 そして、ベルタに対して罪悪感で一杯になった。自分の味方をしてくれた彼を追い出し、殺人犯にさせられようとしているのだ。


――ごめんない……ごめ、なさい。


 ティアは薄れゆく意識の中で何度も謝罪をした。

 しかし、次に目が覚めると城に連れて来られた時に戻っていた。何が起こったのかは分からないが、2度目のチャンスが与えられた今、ティアは復讐する事を决意した。


 2度目だったので、礼儀作法は大体分かっていたし、嫌がらせの内容も先回りして回避したり、わざとかかって大袈裟に騒いで犯人を問い詰めたり、嫌味や嫌がらせをスルーしたり、言い返したりして立ち振舞った。


 そして、女王とベラがティアの母親を追い出した事、自分の殺害を企てている事の証拠を見せつけて、復讐する事に成功したのだった――。

 

 










 ようやく安心して、自分の人生を歩み始める事が出来たティアは、自分の味方をしてくれた人達に恩返しをしたいと思い、各々の要望をそれとなく叶えたのだった。そして、一番の感謝と罪悪感を持つ存在であるベルタの望みが、想い人と結ばれる事であると悟った。


「彼女は…服屋を経営していて、強くて優しい女性なのです。僕は仕事で辛い事があっても、彼女に負けないように頑張ろうと思うと力が湧いてくるのです。」


 いつも世間話をすると話題に出てくる女性の事が、本当に好きなのだと伝わってきた。応援したいと思うものの、王女専属の執事と平民の服屋では身分の差が激しかった。ベルタも平民であり、結婚できなくはなかったが、執事や侍女は継承権のない当主の子供や、平民であっても貴族に近い良家から求婚される事が多く、ベルタの婚約の話も多かったのだった。


――何とかベルタの恋を成就させられないかしら?


 そんなある日、ティアは仕立て屋専門の学校の存在を知った。その学校を卒業した者は、貴族や王族の専属になる場合が多く、格式高い服屋として大成するのだと聞いた。ベルタの想い人が、貴族の専属の服屋となれば、ベルタとの婚約に誰も文句を言われないかもしれないと思った。

 ティアは早速、ベルタに服屋に案内して欲しいと頼んだ――。














 大きな帽子を被り、王女だとバレないように準備をして服屋に到着したティアは、店にいる女性を見て驚いた。


――あの薄らとした火傷の痕、雰囲気……あの時の!?


 母親を亡くして少し経った頃、服をくれた少女が居たのだった。自分よりも歳上であったがまだ未成年だった少女は、何の見返りもなく服を渡してくれた。もう顔は思い出せなかったが、火傷の痕が印象的に残っていた。

 

 その事を思いだしたティアは、その後売られている服を見つめた。そして目に止まったのは白いワンピースであった。その出来は素晴らしいもので、細かな技術は城にあるドレスと何処か似ていると思った。


――この白いワンピースいいわね…後でベルタに買って貰いましょう。


 今自分が買いに行くと、誰かに王女だとバレてしまうかもしれないので、そのまま店を後にしたのだった。



 そして、ティアは決断した。アリスもまたティアにとっては恩人である為、アリスとベルタの未来の為にも、アリスが入学する為の推薦人になる事を。そして将来的に自分の専属に仕立て人になって貰おうと思ったのだった。


――さっきの2人の様子からして、アリスさんもベルタの事が気になっている筈だもの…何もかも上手くいくわ!!



 しかし、ティアの思い通りにはならず、アリスは入学を断ってしまった為、アリスを説得しようと思い、今現在に至ったという事であった。




 ティアの秘密が明らかとなりました。予想できていた方も多かったかもしれませんね。過去において、細かい描写はありませんでしたがティアは2度目の人生で復讐を成し遂げて、番外編へと移行した物語の主人公のような存在として登場させました。

 あともうすこしで終わります。


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