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5.

 時間が戻る前、一度目の人生で学校に入学した頃の私は、やる気と活気に満ち溢れていた。けれど…


「アリスさん大変よ〜、貴女の作ったドレスが滅茶苦茶になっているわ!」 

 

 クラスメイトの一人に言われて、急いで見に行くと、創作期限が今日までのドレスが引き裂かれて、布切れ状態になっていた。


「…誰がこんなことを!?」


「え〜、私のせいじゃないわよ。もしかして貴方?」


「俺じゃないですよ、そんな事するわけないじゃないですか!」


 クスクスと笑いながら、話をするクラスメイト達。入学してからすぐに、アリスが王女の推薦で入学したと知られると、嫌がらせが始まったのだ。


「でも~、問題ないですよね? 王女様から推薦されたアリスさんならば、こんなドレス、すぐに完成できますよね?」


「…そんなの、出来るわけが!」


「おい、口よりも手を動かしたほうが良いと思うぜアリスさん。ほら、早く!!」


 アリスが反論しようとしても、周りの言葉に黙らされてしまう――。







「また、提出出来なかったのですかアリスさん。」


 教師には怒られてしまい、事情を説明してもクラスメイト全員が白を切ってしまう為、信じてもらえなかった。


「貴女、王女様が推薦して下さった事をお忘れにならないように、天狗にならずに真面目に取り組んでください。」


「…すみませんでした。」



 



 授業中の作業においては、表立って嫌がらせされる事はなく、唯一自分の実力を高める為の時間であったと言えた。ドレスの生地に触れるのも新鮮で、作業に没頭した時は嫌な事を忘れられた。


「アリスさん、ここの縫い方はもっと細かくするように、それとこの生地の色ではなく、此方を薦めますよ。」


「はい、有難うございます。」


 教師の言葉通りに作業を進めて、コツを掴んでくるとドレス作りも手慣れたものとなってきた。しかし、何処かで自分が今までに作った平民の服を恋しく思った。

 平民の服は見た目もだが、見た目よりも着やすさを重視して考えていた。一方でドレスは如何に綺羅びやかに、美しくするかが重要で、楽しいとは思えても思い切りのめり込む事が出来なかった。


「…アリスさん流石ね、推薦されただけあって一度も着た事がないドレスを作れちゃうなんて……でもなんか地味よね〜。」


 クラスメイトからの嫌味に、傷付きながらも納得してしまう自分が居た。確かに、一番初めはドレスの事が分からずに酷い出来栄えだった。そして作れるようになっても、いまいち華やかさが欠けてしまっていた。どうしてもこれでは着にくいだろう、これ以上装飾を付ければ値段が高くなってしまうと、相手が貴族達である前提を忘れてしまうのであった。


「それに、なによりその顔だと折角のドレスが台無しになってしまうから、お試しで自分に試着しても無駄になってしまうわよね。」


 そして、コンプレックスに思っていても、他人から一度も口に出されなかった火傷の事を指摘されてしまったのだった。


「でもほら、それは仮面を着けて仮面舞踏会に出れば問題ないじゃない?」


「名案ね! でもそもそもアリスさんにそんな機会があるのかしら?」


「おい、流石に酷いぞw」


あははっ、と周りは楽しそうに笑う中、アリスはただ立ち竦んだ。


――そもそも、私達の仕事は誰かの為に服を作るのであって、自分の為ではないわ。私は別にドレスが着たいだなんて思ってないのに!!


 心の中で言い返すが、1つだけ…ベルタと釣り合えるようになるかもしれない、そう思っている自分が居た為情けない気持ちになってしまった。

 ベルタが外見だけで人を判断するような人だとは思っていない、けれど外見が良い事に越したことはないのだ。それに、アリスの性格は外見なんて関係ないと言える程素晴らしいと言えるのか、もし釣り合う身分を手に入れても彼と両思いになれるのか、そもそも、彼と結ばれたいだけで今後の人生をドレス作りに捧げられるのか…。


 そんな事を考える自分が嫌になった。アリスはその場に居る事が耐えられなくなり、クラスメイトの声を無視して去っていった。


「ぅう……もう、限界だわ…退学しよう、元の店に戻りたい。」


 泣きながら、教師のいる部屋を目指して歩き続けるアリス。教師の部屋に入り、退学したいと話をするが


「何を言っているのです! そんな事は認められません。」


「えっ…?」


 退学は本人の意志で決める事ができた。それはどんな学校でも、貴族でも平民であっても平等の権利であった。勿論お金を出す両親や知人の同意が必要ではあったが、アリスの場合はティアであり、入学の書類には退学したい場合はアリスの意志に委ねる、と記載があった。


「で、でも書類には…。」


「書類が何だと言うのですか!? 貴女は自分の立場が分かっていないようですね?

 貴女は王女様の推薦で入学されたのですよ、なのにたかが1ヶ月程度で退学だなんて…王女様の顔に泥を塗るおつもりですか!!」


 凄い剣幕で怒られて、退学を認めて貰えなかったアリスは途方に暮れるしかなかった―――。









 



 鏡に映る自分の顔を見ながら地獄のような日々を思い出すアリス。


「あれは全部……ティア王女様が仕組んだ事だったのね。」


 自嘲気味に笑いを溢したアリスはそのまま項垂れた。そして、先程の失態を思い出す。


「どうしましょう、あんな大声で、お金も払わないで……最悪だわ。」


 学校に入学せずには済むだろうが、何かしらの罰を受けるかもしれない…青褪めながらどうしようと考え込んでいると、扉をノックする音が聞こえてきた。恐る恐る扉を開けると、そこにはベルタが立っていた。


「アリス!!…心配したよ、一体どうしたんだ?」


「…ごめんなさい、本当にごめんなさい!!」


 心配そうにアリスを見るベルタに、ただ謝る事しかできなかった。


「……アリスさん。」


 ベルタの後方から聞こえてきた声に、視線を向けると何とも言えない表情をしたティアが立っていた。ティアの姿を見た途端、アリスはその場で土下座をした。


「お、おいアリス!?」


「本当に申し訳御座いませんでした。度重なるご無礼をお許し下さい!! 紅茶の代金はすぐにお支払い致します!!!」


 アリスはひたすら額を床に突けて謝った、ただ必死だった。


「アリスさん!!!」


 ティアから大声が聞こえてきて、アリスは顔を上げた。


「お願いです…謝らないでください、それから、もう一度お話しましょう? 今度は、ベルタも一緒に――」


 











 店の中で話をする事になった。立ったままで良いとティアが言うので、3人は立ったまま向かい合った。


「……アリスさん、今から私の言う事に身に覚えがなければ、すぐに忘れると約束して頂きたいのですが宜しいですか?」


「は、はい…?」


 ティアの言葉に疑問を持ちながらも頷くと、ティアは一度ベルタを見た後に、アリスと視線を合わせた。














「アリスさん、貴女は時間が巻き戻って、2度目の人生を歩んでおりませんか?」


 今回はアリスが、過去に学校であった経験の話でした。短くてざっくりとしていたかもしれませんが、あまり長いのも良くないと思い省略しました。


 最後のティアの言葉…何故逆行した事を言葉にしたのか、予想できている方も多いと思いますが、次回明らかとなります。


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