Who Am I
成龍はコメディの方が好きです
――返事がない、只の屍なのかしらね。
等とくだらない事を考えていると、痺れを伐らしたお兄様(暫定)が再度陛下に訊れられました。
「陛下、説明の続きをお願いいたします」
国王陛下は王妃様の方を見て助けを求められている様子です。 王妃様は陛下の視線に頷いて徐に話し始められました。
「それだけです。 ツィスカは転生者だった、だから記憶が混濁している。 只それだけです」
王妃様は『それだけです』を2回も仰いました。
大事な話なので2回言いました、って事なのでしょうか。
「私の理解力が足りないのでしょうか、何の説明にもなっていないと思われるのですが」
お兄様は些か呆れ顔でなおも食い下がります。
仰る通りですお兄様、うんうんと頷いていると王妃様が私の方を見て困った様な顔で仰いました。
「だってね、私たちもツィスカちゃんから詳しい話を聞いていないんですもの」
王妃様の一言でお互いの顔を見合わせて沈黙……
漫画やアニメ等でよく見る、カラス擬きが『アホ~♪』とか鳴きながら飛んでいく場面みたいな雰囲気です。
そうでした!でも詳しい話をと訊ねられても、私は何も解りませんよ?
「えっと、転生者かどうか解らないのですが、此の世界とは違う記憶はあります。 と言うか記憶は前世しかありません」
王妃様は心做しか嬉しそうに話の先を促します。
「違う世界の記憶は何れくらいあるのかしら?辛くない範囲で良いから話してちょうだい」
辛くない範囲って何だろう、取り敢えず自己紹介からしましょうか。
「私の生活していた場所は『地球』と名の惑星の『日本』と呼ばれる国です。 年齢は18歳で高校三年生でした」
高校三年って理解して貰えるかなぁ?
国王陛下は興味津々のお顔で、王妃様はニコニコと聞いていらっしゃいます。 お兄様は憮然としていらっしゃいますねぇ、驚かせて申し訳ない。
そうだ、名前を名乗っていませんでした!
「私の名前は、……名前は、、??」
ええっ!?名前、思い出せません!思い出そうとすると、頭に孫悟空の輪っかが嵌まっていて締め付けてくる様に痛いです。
私の様子が可怪しい事に気付いた王妃様が慌てて立ち上がられました。
「ツィスカ、それ以上無理に思い出そうとしなくても良いのよ」
深呼吸して落ち着いた私を心配そうにしながらも王妃様は椅子に腰掛け直されて話を続けられました。
「先に此の世界の説明をした方が良かったかしらね? 此処は貴女の生きていた世界からしたら異世界にあたります。 此の世界には2~30年に一度転生者が産まれます。 尤も前世の記憶を取り戻さなかったり、転生者である事を隠している人たちもいるかもしれないので正確には判りません」
一呼吸置いて続けられた王妃様のお話に、私は吃驚して椅子から立ち上がってしまいました。
「此の国の貴女の前の転生者は私なのよ?前世での名前は黒崎讃良、もちろん日本人でした」
*♪*♪讃良の間違え易い日本語講座♪*♪*
憮然:意外な出来事に驚き呆れる様。または失望したり落胆して呆然とする様子
黒崎讃良は一番お気に入りのキャラなのです