ツィスカはツィスカ
タイトルが思い付かない
そして相変わらず短いです
記憶を失っているのであれば言葉も解らない筈って確かハンナさんもそんな事を言っていたよね。
此の世界の人たちって『転生者』の事をよく解っているみたいだけど何故だろう?
「転生者であるソフィー様や王妃様だけでなく、ハンナさんたちも転生者の存在に馴れているみたいですが、何故そんなに皆さんお詳しいのでしょうか」
ぽてぽて。
只今ぽてぽてと三人仲良く並んで街歩きをしながらの会話中です。
「あぁそうね、ツィスカちゃんは覚えていないのよね。 この国では転生者が現れたら前世の記憶の聞き取り調査をするのよ。 それを記録した物が王立の図書館に保存されているのよ。 それと転生者は基本的に王宮で保護するから対応マニュアルもあるの」
ぽてぽてぽて。
ほほぅ過去の転生者の記録かぁ、気になりますね。 読んでみたいなぁ。
「ツィスカの記憶が完全に戻ったらきっとフランツさんが話を聴きに来られるだろうな」
ぽてぽてぽてぽて。
うん? フランツさんって誰だろう? 私の知り合いかなぁ、覚えてないけど。 ぽてぽて。
「フランツさんって何方です? あ、フランツィスカと名前が似ているから親戚の方ですよね、きっと」
ぽてぽてっ、と、ソフィー様の足が一軒のお店の前で止まりました。
何のお店だろう、喫茶店みたいだけど此の世界にも喫茶店ってあるの?
ソフィー様はお店の扉に手をかけてから私の方を振り向きました。
「ふふ、此処がそのフランツさんのお店よ。 いろんなお茶を販売しているんだけど試飲も出来るのよ」
へぇー試飲も出来るのかぁ…って、だからフランツさんって誰なのさ。
カラン♪カラン♬と音を立てて扉を開けると奥のカウンターの中の気の良さそうな初老の美形男性が顔を上げました。
「いらっしゃいま―…あぁ、ソフィー様。 それにウィルフリード殿下フランツィスカ殿下ご機嫌よう」
「お久し振りね、お変わりない様で何よりね」
「フランツさんお久し振りです、お元気でしたか」
ソフィー様とウィル兄様は砕けたカンジで挨拶をして店内に入ると迷わずカウンター前に進みます。
うーん、やはりとても親しそうな様子ですねぇ、私は何と挨拶すれば良いのやら。
「あ、フランツさんツィスカちゃんは転生者だったみたいなの。 だからこの子は『初めまして』なのよ?」
ソフィー様、ご紹介いただけるのはありがたいですけど、説明が雑だなぁ。
「は、初めまして? 記憶が曖昧なツィスカ擬きです。 よろしくお願いいたします」
慌てて頭を下げてご挨拶すると、フランツさんとソフィー様は破顔して、ウィル兄様は何だコイツみたいな顔をされました。
「ツィスカ擬きって……」
ありゃ、やっぱり擬きって変でしたかね、でも今の中身はフランツィスカじゃないしね。
何故笑われたのだろう、とキョトンとしているとソフィー様が破顔の理由を教えてくれました。
「記憶がなくてもやっぱり親子よね、リロちゃんも『記憶がないから区別してロッテと呼んでください』って言ったのよ」
そうか~、やっぱりそうだよね。中身は違うからフランツィスカって名乗るのはちょっと悩むのよね。
前世の名前も思い出せないし、何て呼んで貰うのが正解なんだろう。
考え込んでいるとウィル兄様が私の頭をポンっと叩いて顔を覗き込んできました。
「記憶が無くてもツィスカはツィスカだろう? 私の可愛い妹だよ」
美形に頭ポンされて、甘い声で『可愛い』って言われて腰が抜けそうです。
「ツィスカちゃん、ソレ、実の兄だからね」
ニマニマ顔のソフィー様。 そうでした、ウィル兄様はお兄様でした。
――禁断の扉を開ける所でした、危なかった!
読む、感想を書く、誤字脱字報告
繰り返していると時間が過ぎていました
(´д`)