見た目は大人中身は子ども
予定していたよりもソフィーが暴れて主役を喰っています
ソフィー様とウィル兄様に連れられて長い廊下を進んだ奥の部屋の中央に、何処かで見た事のある様なピンクの扉がありました。
ソフィー様はテッテレレッテ♪と歌いながらピンクの扉に近付いて扉の手前で立ちまり、此方に向き直ってから右手で扉を指し示しながら高らかに告げられました。
「転移も~ん」
何ですか、その鼻が詰まった様な高いんだか低いんだか判らない声の出し方は。
「その言い方をするのなら、お腹のポケットから取り出してくださいよ」
「えぇ~っ、私はあんなにずんぐりした体型じゃないわよ」
ぷんすか答えるソフィー様、アザと可愛さは地だったのですね。 本気で若さの秘訣を教えて欲しくなってきました。
……って、あれ? 確か此の世界には魔法は無いって仰ってましたよね。
「あの~『テンイモン』って『転移』門ですよね? 魔法有るじゃないですか」
不満顔で訊ねる私にソフィー様は右手の人差し指を顎に充ててコテンと首を傾げて答えられます。
「転移門は魔法じゃないわよ? 私たちの生きていた時代より未来からの転生者の知識で作られた物を私がデザインだけ変えたのよ」
デザイン変えたって、やっぱりパクり!
「ソフィー様、それってパクりですよね?」
「リロちゃんと同じ事を言うのねぇ。 それに気になる所は其所なの?“未来からの転生者”は気にならないのかしら」
――! 確かにそうですね。 違う時代からの転生者ってどういう事なのでしょう?
「確かに気になります! 転生者の前世の国や時代は同じでは無いのですか?」
「そうよぉ、其れを訊いて欲しかったのよ。 此の世界への転生者の前世は日本だけじゃないし、時代もランダムなの。 詳しくは帰ってから纏めて講義するから頭の片隅にメモしておいてね」
頭の中が『?』だらけの私を他所にソフィー様が転移門の起動スイッチをポチっとなされました。
すると其れまで黙って私たちを見ていたウィル兄様が困惑顔でソフィー様に尋ねられました。
「転移先は王都の何処なのですか? 此の服装のままでは目立ちませんか」
確かにドレス姿では目立つのでしょうかね。 庶民的な格好がどういったものなのかは判らないのですが着替えた方が良さそうです。
「だ~い丈夫、転移先は王室専用のお店で其所で着替えが出来るのよ」
ソフィー様ってば私と話しているからって砕けすぎじゃないですかね。
「?、、コス、プレ??」
ほぉらウィル兄様が混乱されていますよ。
「ソフィー様、コスプレって此の世界では通用しないのでは?」
てへぺろしているソフィー様は確かに可愛いですけど、此の世界に転生して50年位は経っている筈ですよね?
「ツィスカちゃん、考えている事が顔に出ているわよ。 そうよ、何処の世界でも私達は貴方たちが考えているほど“大人”じゃないのよ。 人間の中身なんてね、何十年経っても変わらないものなのよ」
――それってアレですか『見た目は大人、中身は子ども』ってヤツですか。
あら? 何か違う様な……?
子どもの頃は大人が物凄く『大人』に見えていました
自分が大人になって中身が変わっていない事が判って驚きです