15.ケモ耳かわいい……
「それでは皆さん! お待たせいたしました。1週間ぶりのサーシャ嬢のステージだー!」
「うおおお!」と司会の人のMCに合わせて客のテンションが最高潮になっている。
1週間ぶりに私がステージに立つからか、心なしかいつも以上に客も多い気がするんだけど。
あの日、ギフトでアイラの傷を治療した私は、3日間眠り続けた。
目が覚めてから更に3日間は、身体が思うように動かなかった。
リーザさんが言うには、ギフトの使用が身体に負担になったんだろうとのこと。
《ギフト『舞踊家』壱の舞――『力』》
私がステージ上で日舞を披露するのと同時にギフトが発動した。
「お疲れー。やっぱり君のショーがあると売り上げがすごいな」
とリーザさんがねぎらってくれた。
今日もステージは大盛況のうちに終えることができた。
「それで、体調はどうだい?」
「ちょっと疲れたけど。動けなくなるほどではないですね」
ギフトを使用したけど、特に疲労感はあまり感じない。
「なるほど……発動したのはどっち?」
「壱の舞ですね」
「となるとやっぱり技能そのものの問題か……」
リーザさん曰く、弐の舞―『癒』が発動すると魔力を膨大に消費するらしい。
そのせいで1週間近く身体が満足に動かせなかったとのことだ。
「ま、しばらくは使用を控えた方がいいかもね」
「そうですね……」
「お嬢様~」
アイラの仕事も終わったみたいで、こっちに向かってきていた。
「そっちはもう終わった?」
「はい! お待たせしてすみません……」
私たちが帰ろうとしたとき、お店の扉が開いた。
もう営業終わってるのに、お客さん?
ローブを羽織ってるその姿は、みるからに怪しい……
「あの~。本日はもうお店閉まって……」
「アイラっ」
と私が止める間もなく、対応するためにアイラがお客さんのそばまで近づく。
「申し訳ありませんが、後日改めて……」
「動くな!!」
とお客さんはいきなり大声をあげたかと思うと、懐から短刀を取り出した。
「ひっ!」
「アイラ!!」
「動かないで!」
担当がアイラの首元にあてられた私たちは、動くことが出来ないでいた。
「不思議な踊りを踊る女がいるって聞いた……誰……」
「不思議な……」
踊りって言ってたから多分、私のことだよね?
「お前か……なら、私と一緒に……来てもらう」
「分かったから……とりあえず、それ、おろしてもらえる?」
「ダメだ。信用できない……」
アイラを人質にとられてるから私もリーザさんも身動きが出せないでいる。
……あれ?……あの人は……
「早く……私と一緒に……っ!!」
そのお客さんは、突然気を失いその場に倒れた。
「お嬢様~」
とアイラが私に駆け寄ってきた。
「怪我はない?」
「はいっ」
とりあえず一安心ね。
「皆さま。ご無事でしょうか」
「流石だね。リリアちゃん」
現れた女性はリリア・シュバルツ様。
騎士団に所属していて、この前私たちを助けてくれたのも彼女が小隊長を務める部隊だ。
さっき後ろから彼女が忍び寄り、お客さんを気絶させた。
「いえ……それよりも彼女、このまま私の方で連行しましょうか……」
「彼女……?」
よくよく見れば、気を失った拍子にフードがとれ、襲ってきた人の素顔が明らかになった。
その女性の頭から生えてるケモ耳がかわいい……ってそうじゃなくて。