プロローグ
ギャグ要素も多いですが、全体的にダークなストーリーになっているので、ぜひ読んで下さいね!
「ああ…… 良い天気だナーー」
ただ空を見上げたまま少年は呟く。不安定な足場の上で大きく手を振り上げ、肺いっぱいに空気を取り込む。
「今日は…… 空気が美味いな……」
平然を装う少年。しかし、視線はいつも虚を向いていた。
『ねぇ、なんで来たの?』……
『うわぁ〜 こっち見てるし』……
『キッモ(笑)』……
『辞めてあげなよ〜(笑)』……
過去の亡霊が鼓膜の奥底で屯っている。少年は自分の身に付けた制服を見て再度、学生である事を自覚する。
『大丈夫よ。今を乗り越えれば必ず良い事が待ってるわ』
『安心しろ。お前には俺達、家族が付いてる』
毎朝、悪魔達がそう囁く。だから、いつも決断が鈍る。だから、いつも足が重たくなる……
少年の前を一羽のカラスが通り過ぎた。見た事の無い真っ白なカラスだった。
「……人の人生は、自由だって言うのに…… 何で誰も、空を飛ばないんだろう……」
風の表情が一変した。大自然が少年の背中を押すように流れる。
『早く死なないと』
『まだ、死なないの?』
『もう、諦めよ?』
いつにも増して幻聴が聴こえる。でも、何故だろう……
少年の足は段々と重みを無くした。
『死んだら…… 楽になれるよ?』
そうだ、こう言う言葉が欲しかったんだ。自分の決断を肯定してくれる言葉。もう、自分のあり方を否定されたく無い。
「本当に良い天気だ……」
空の雫が少年の体温を削る。
『おいで……』
少年は晴れ晴れした表情で、未来へと一歩踏み出した。
……そして、少年は気付いた。自分には、翼が無い事を。