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電子上の回路は現実世界の夢を見るか?
LEDライトがいやらしく夜の街を焦がす。夜空の星はどうやら燃え尽きてしまったようだ。人々はアイコンタクトのみで会話を済ませる。ここは2072年、ここはシンギュラリティを迎え、人と機械がひとつになった世界。
突然だが、自己紹介をしよう。私はN.I、生まれは2052年だ。生まれた頃には既に目線に反応し動く機械や人のいない施設なんてザラにあった。
私の父や母はいない。孤児だった私は人の温もりを知らない。育ての親は皆冷たい手をしていたし、皆テンプレートでしか会話をしてくれなかった。もっとも、半世紀前のパンデミックのせいで人間は会話をやめ、人との関わりを断ち、すべてを電子上で行うようになったのだ。当たり前のことなのだろう。
そんな生まれの私が何故ここに至ったのか。何故この時代の電子上に記録を残すのか。それは次の記録に残そう。