1-ホ型
聞こえた独り言から察するに、1.地球にいた人類はここからどこかに行ったということ、2.それをこのアンドロイドは聞いたことがあるが実際に人類を見たことがないこと、この二つは確かなようだ。滅亡の可能性は残っているが…。彼女たちが同期しているということは、データのやり取りがアンドロイドの間で行われていたという可能性があるし、それならば…ともう少し踏み込んで聞いてみる。
「荒れ放題だけれども、ここではいったい何があったんだい?」
「君についている被弾の跡も気になる。それはいったい…」
少し逡巡して、彼女は口を開く。
「地球での出来事を私から語るより、こちらを見ていただいたほうが早いでしょう」
彼女の視覚センサと思しき部分から光が出る。ホログラムだ。
映し出される映像。
「1000年前、自らを異星人と名乗る集団がこの国を襲撃しました。彼らはロボット兵器を用い、日本へ侵攻してきたのです。それに対抗するために作られたのが私たち、戦闘用アンドロイド1型です」
アンドロイドの姿が映し出される。
「私たちの主な武装は日本刀と銃、レーザー銃です」
アンドロイドの振るう剣、銃。そして肉弾戦を主軸とした、鉄製の体を持つロボットたち。
「次々に投入される兵力に、戦況は膠着し、それを打破することはできなかったのですが」
広がっていく戦線、それは空も、海をも侵し、休まる場所はないように見える。
「ロボット兵器によって、私たちアンドロイドにコンピュータウイルスが蔓延することになったのです」
苦しむアンドロイド兵たち。
「そうして、私たちは敗北したのです」
いや、おかしい。ウイルスはもともとプログラムの中に組み込まれていた。彼女の話によると、製造元はほかのアンドロイドも同様・・・いや、擬態か?その可能性も否定できない。
慎重に質問を選ぶ。
「では、そのロボットたちは…?周辺には動作している兵器が見当たらないのだが」
彼女は黙り込む。どうやら彼女も状況を飲み込めていないらしい。
「わかりません。起きたらこのありさまで。確かにサーチ範囲に敵反応はありません」
むう、こうなると他に修復が可能なアンドロイドを起動させるしか方法はないのかもしれない。ロボットでもいいが、敵対勢力を動かすとややこしいことになるかもしれないからな。
「わかった、君にもわからない部分があるということか。俄然この状況に興味がわいた。もうしばらく調査をしたい。君もついてきてくれるか?」
「でも・・・」
「戦争が終わっているのか、いないのか。ウイルス平気で全滅したのか、まだ生き残りのアンドロイドがいるのか。確かめておくべきだ。勝利宣言を聞かずして、戦闘の終了を断定するのは尚早」
納得したのか、彼女は私に同行するようになった。戦闘能力の高さは先ほど身をもって確認済みだ。人間には不可能な動作が可能だということも。しばらく彼女にはボディーガード兼ナビゲーターになってもらうとしよう。
次回は6/21更新です