1-ハ型
プログラムは一部を除いてC言語で構成されていた。C言語の開発時期、アンドロイドの名称が日本語であることからかんがみて、同じ地球にいるのは間違いないらしい。
「うう・・・・」
再起動が終了したようだ。
「大丈夫かい、動作は良好か?」
そう尋ねると、彼女は大声で驚いた。
「えっ!?」
あまりに近くにいたので、しばらく耳がキーンとする。日本語でのコミュニケーションは可能なようだ。
「少々聞きたいことがあるんだが」
質問に入る前に、彼女はブツブツと独り言のように言う。
「人間はまだ生存していた…?実際にいなかったから疑問視する声もあったのに…」
やはりこの地球と思しき惑星では、人類が滅亡してしまったようである。
「考え事の最中悪いけど」
こちらも調査を終わらせて早々に帰還しなければならない。資源や食料、水なども回収できる場所がわからない以上、長居は危険だ。最低限の装備は持ってきているが、あまり長期間かかるようならば仕切りなおす必要がある。
「ここは太陽系の第3惑星、地球?」
「はい、その通りです」
「ここは東京?」
「ええ、そのように呼ばれていた場所です」
ここが地球であることははっきりした。そしてここは東京らしい。しかし、過去の東京都はあまりにかけ離れたその景色は、当時の面影すら残していない。私が一度来た時は、東京は人でにぎわっていた。あれは我々の時代での戦争が始まる前だった。高層ビルが立ち並び、地下の開発も進んでいた。世界一の人口密度を誇る都市は、ますますその人口を増やし、世界有数の超大型都市となっていた。面積は変わらぬまま、高くて深いビルが大量に作られた。新たな建築技法の発見は都市開発を加速させ、災害大国であるはずの同国は災害時もお構いなく生活が可能になっていた。兵器によって破壊されるまでは、世界一騒がしく、世界一平和な町だった。しかし。
「今は西暦何年?」
「5405年です」
やはり私が過去にタイムスリップしたというのは間違っていないらしい。だが、1000年前だって!?設定した年代の違いも気になる。それよりも重要だと思われるのは、やはりなにか、我々の世界線とは違った、大きな出来事が起こっていたらしい。
次回は6/7日更新です。




